50代からの女性のための人生相談・195
人生相談:がん宣告を受けた夫…私はこのままでいい?
人生相談:がん宣告を受けた夫…私はこのままでいい?
更新日:2024年08月30日
公開日:2024年08月28日
64歳女性「夫が胃がん宣告…私はこのままでいい?」という相談
44年勤めた会社を昨年3月末で退社して、7月から派遣社員の添乗員として働き始め1年になりました。
今年1月に、夫が胃がんを宣告され転移がみられるため化学療法を受けています。半年で30kgほど体重が落ちて別人のようになった夫ですが、自営の仕事は続けています。
私は家を留守にしがちな添乗業務を続けていますが、このままでいいのかな?とも思ったりします。
不安な言葉は一切言わない夫ですが、強がりでないのか……猫との留守番は心細くないのか……。したいことをしている私はわがままなのかと思ってみたりもします。
(64歳女性・belleさん)
名取さんの回答:相手を思った上での自分優先はわがままではない

「私はがんの宣告を受け、転移もあって、半年で30kgも体重が落ちている中で仕事をしているのに、したいことをしている妻はわがままだ」……belleさんの夫は、そのように考える人でしょうか。
あるいは、病気で弱気になればそう考えることもあるかもしれないですが、単に病気がそう思わせているかもしれないと、belleさんは思われていらっしゃるのでしょうか。
どちらの場合でも、belleさんの対応は同じになるでしょうが、belleさんの心の持ち方によって、夫やbelleさんのストレスは大きく異なると思われます。
「病気になんか負けてたまるか」「今まで通り普通に生活するのが一番いい」「やりがいのある添乗員の仕事をしている妻の負担になりたくない」など、夫が何かの理由で働く意欲があり、実際に働けるなら、belleさんは今のまま、派遣の添乗員を続ければいいでしょう。
夫の考えを無下にせず「いつも通り」の生活を

40年ほど前に月に一度、5年間、「がん患者、家族と語り合う集い」(仏教情報センター主催、現在は開催されていません)に参加していました。
がんの告知が一般的でなかった時代です。自分の病気なのに、本人には本当の病名は知らされず、周りは知っていて、もっとも信頼できるはずの家族が本人に嘘をつき通す、そんな時代です。
参加者は患者本人、患者の家族、医師、看護師、僧侶でした。私は母(57歳)をがんで亡くした家族として、そして一人の僧侶として参加していました。
参加していた患者の多くは、自分ががんであること(命が長くないこと)を知っていて、自分の体験を参考意見として語る勇気を持っている人たちでした。告知から治療を経て、その勇気を出すまでには、大変な苦悩と葛藤があったことは想像に難くありません。
多くの患者が言ったのは「自分たちは普通の人間で、がんになったからといって腫れ物に触るような、特別な接し方、扱い方はしないでほしい」ということでした。
がんを受け入れられるようになれば、そのような思いにたどりつくのかもしれません。
belleさんの夫もそのように考えている可能性が大きいと、私は信じたいです。もしそうなら、そのような夫の願いを無下にしないことが、夫のQOL(Quality Of Life)にもつながると思います。
※Quality Of Life:「生活の質」「生命の質」。患者の身体的、精神的な苦痛の軽減、社会的活動を含め活力、生きがい、満足度などの総合的な意味を含む考え方です。
働けるうちは働き、妻には仕事をしてもらうという夫の意向に寄り添うことで、夫婦の関係も深まり、belleさん自身のQOLを高めることにもなるでしょう。
そのような心積もりでbelleさんが添乗の仕事を続けるなら、わがままとは言えないと思います。
「その時」がくるまでは現状のままでも大丈夫

本来なら、夫にどうしたいのかをお聞きになればいいと思うのですが、お二人とも生まれて初めて経験する生活の劇的変化なので、何をどう聞いたらいいか、どう話していいのか、戸惑っていらっしゃるのかもしれません。今は腹を割って、ざっくばらんに話し合えない状況なのでしょう。
繰り返しになりますが、夫を気遣いながら仕事を続けているbelleさんは、現段階では、わがままではないと思います。それを自分のことしか考えない“わがまま”にしないためには、今後の夫の病状にどんな変化の可能性があるかを知っておいた方がいいでしょう。
夫に聞いてもいいですし、ドクターに聞いてもいいのです。そうすれば、展開に合わせてbelleさんの心の準備ができます。
“病状がどこまで進んだら”“夫の気持ちがどうなったら”などを想定して、その時が来たら添乗の仕事は日帰りだけにしてもらうのか、どうなったら派遣の仕事を辞めて夫のそばにいるのかなどを、ある程度決めておかれることをおすすめします。
それらを考えた上で、“その時”がくるまでは、現状のままでいいでしょう。
相手のためを思った上での(派遣の仕事を続けるというbelleさんの)自分優先の考え方は、わがままではありません。
自分が病気になったり、伴侶や家族が病気になったりして初めてわかることがあります。家族の病気がきっかけで全員が自己主張しはじめて修羅場になる家もあれば、絆が強まる家もあるのです。
牛は水を飲んでミルクにし、蛇は水を飲んで毒液にします。
今回のことがミルクになるように、そして、拙い回答が参考になることをお祈りしています。
回答者プロフィール:名取芳彦さん

なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長。豊山流大師講(ご詠歌)詠監。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)『気にしない練習』(三笠書房)、『心がすっきりかるくなる般若心経』(永岡書店)など、著書多数。
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