バーバラ・ブッシュさんから学ぶ「動く」ことの重要性

2024年01月06日

随筆家・山本ふみこの「だから、好きな先輩」46

バーバラ・ブッシュさんから学ぶ「動く」ことの重要性

「ハルメク」でエッセイ講座を担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、元米国大統領夫人のバーバラ・ブッシュさん。セカンドレディ時代から素晴らしい活動をした彼女から感じる、「第一歩の大切さ」についてです。

好きな先輩「バーバラ・ブッシュ」さん

1925-2018年 第41代米国大統領夫人
19歳でジョージ・H・W・ブッシュと結婚。89~93年にファーストレディになった。四男一女に恵まれたが、長女を白血病で亡くしたため、病院でがん患者の看護奉仕に取り組んだ。また識字率向上運動にも力を入れ、財団を設立した。

自らの信念で社会活動へと進む女性としての勇気

自らの信念で社会活動へと進む女性としての勇気

夫とよく喋ります。

先日は政治家のはなしになりました。夫は、思いがけないひとの名前を出したのです。「印象深いのは、ジョージ・ブッシュ大統領の夫人、バーバラ・ブッシュだな」

バーバラ・ブッシュは第41代アメリカ合衆国大統領夫人である。

「ほう。パパブッシュのファーストレディね」

大統領のとなりで静かに微笑む夫人の佇まいと、自らの信念で社会活動へと進む女性としての勇気に、人間として好感を持っていたのだと、夫。

「たしか、セカンドレディ(副大統領夫人)時代に識字率向上のために活動したひとよね」

わたしの知識はここまでです。興味が湧いてきて、本を買ってきて読んでみました。手に入ったのは『ミリー・ブッシュはファースト・ドッグ』(市川和子訳・白泉社刊)、愛犬ミリーの目を通してバーバラ自身が綴ったエッセイです。

写真もたくさん収録されたこの本(原題はMILLIE'S BOOK)からは、ジョージとバーバラ、ミリーという2人と1匹の日々が描かれています。セカンドレディからファーストレディとなる時代です。バーバラの人間味と情愛を感じながら読書しました。

そのほか、インターネットで公式の資料を探しながら調べてゆくなかで、ふたつのことがわたしの心を捉えました。

活動しないひとに名言も失言もない

活動しないひとに名言も失言もない

1つめは夫婦の話。 

ジョージがCIA長官を勤めていたころ、家庭内で仕事のはなしを一切共有できなくなって、おのずと夫婦の会話が減ることになったそうです。この時期、バーバラは軽度のうつ状態に陥っています。

察するに、仲のいいこの夫婦にとってもっとも辛い時期ではなかったでしょうか。これをきっかけに、バーバラはボランティア活動の世界へと足を踏み入れました。

2つめは自身の失言の話。

すばらしい活動と、名言をたくさん残しているバーバラには、問題に対する理解不足から思わぬ失言の記録もあります。当然、主に関係者からは叩かれることになるわけですが、わたしはつくづく思うのです。

ことに関わらないひとにはそもそも理解も理解不足も生まれようがなく、活動しないひとには名言も失言のどちらもないのだと。

バーバラの新たなる理解と、失言の撤回をこの世で聞けないことが残念でなりません。

随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)

随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
撮影=安部まゆみ

1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。

※この記事は雑誌「ハルメク」2020年4月号を再編集し、掲載しています。

山本ふみこ
山本ふみこ

出版社勤務を経て独立。特技は何気ない日々の中に面白みを見つけること。雑誌「ハルメク」の連載やエッセー講座でも活躍。

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