家族が認知症になったら…介護とお金の不安を解消!
2024.08.252023年04月29日
介護施設への入居資金準備についてもFPが解説!
終の住処どうする?自宅介護派・施設派がやるべき備え
人生の最期をどこで迎えるか。終活をする上で大事なポイントです。昔は自宅や医療機関が一般的でしたが、最近はさまざまなシニア向け施設が登場し、選択肢が広がっています。自分にふさわしい「終の住処」選びと、その準備について考えていきましょう。
記事監修:畠中雅子さんのプロフィール
はたなか・まさこ ファイナンシャルプランナー。子育てから老後のお金のことまで生活にかかわるお金の全般をやさしく解説。著者は「ラクに楽しくお金を貯めている私の『貯金簿(R)』」(ぱる出版)ほか、70冊を超える。高齢者施設見学は300回を超え、住み替えのアドバイスもおこなっている。また、趣味では無類のミニチュアワールド好きで、国内外問わず、時間を見つけては旅に出ている。
ハルメク読者は自宅派49%、施設派44%!
終の住処とは、人生のファイナルステージを平穏に過ごすための場所。雑誌「ハルメク」の読者にアンケート調査(※2019年読者はがき調べ 回答数961)を実施し、「どこを終の住処にしたいですか?」と尋ねたところ、49%の人が「自宅」、44%の人が「施設」という結果に。およそ半々といったところです。
「私の経験からすると、この結果だと自宅派の方が実態よりも少ない印象です。多くの人たちは、自分の子どもに迷惑をかけたくないと思いながらも、自宅を離れたがりません。具体的な準備を進めることなく、結局は介護のことで子どもたちを困らせてしまうというケースが少なくないのです」
介護や高齢者向けの施設に詳しいファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは、こう指摘します。
ずっと自宅に住み続けるにしても、要介護状態となった場合のことを今から考えておきましょう。どういったサービスを利用して、どう生活をサポートしてもらうのかなど、具体的に考えておくのが賢明です。
また、施設派の人は、どんな施設なら最期まで自分らしく心地よく過ごせるかを今から考えておく必要があるでしょう。
「先のことは後回しにしがちですし、要介護状態になった自分の将来を想像したくないのが人情かもしれません。しかし、自宅・施設のどちらを終の住処にするにしても、今のうちから自分自身の方針と具体的なプランをしっかりと固めておくことが大切です」(畠中さん)
自宅派の人が今からできる準備や心構えは?
「最期まで自宅で……」と思っている人は、まず身近に自分を介護してくれる人がいるかどうかを考えてみましょう。いわゆるおひとりさまは、身内に頼ることは難しいかもしれません。子どもがいても、絶対に負担をかけたくないと思っているなら同様です。
そういった人たちは、訪問介護・医療・看護サービスをフル活用することが大前提となります。その際は介護保険が頼もしい味方となってきます。
「介護度の中で最も重度な状態である要介護5では、1か月あたり約36万2000円(自己負担はその1割)まで介護保険から支給されるので、かなり広範なサービスを利用できます」
しかし、在宅介護はケアしてもらう時間が限られ、長時間ずっと誰かが付き添ってくれるわけではありません。一般的には20時間以上、自宅でひとりぼっちの時間が続きます。
「これはかなり寂しいし、不安も大きいでしょう。例えば、都市部にお住まいなら、自分の地域で『24時間対応の定期巡回・随時対応サービス』が実施されているかを確認しておくといいと思います」と畠中さんは助言します。
「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス」とは、要介護高齢者の在宅生活を24時間支える仕組みです。日中・夜間を通じて訪問介護と訪問看護の両方を提供、定期巡回と随時の対応が行われます。ただ、エリアが限られているので、自宅派の人は今から調べておきましょう。
施設派の人はどうする?選べる施設の種類を知ろう
シニア向け施設にはさまざまなタイプがあり、住宅型と介護型の2種類に大別できます。前者は元気なうちから入居でき、後者は要介護状態になってから入居するものです。
それぞれの具体例として、前者は住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、ケアハウス、シニアマンションなどがあり、後者は特別養護老人ホーム(特養)、介護付有料老人ホーム、老人保健施設(老健)、介護型ケアハウスなどがあります。
施設への入居を考え始める3つのタイミング
人生の後半には、シニア向け施設への入居を考えるいくつかの節目が訪れます。そして、それぞれの節目によって、住宅型と介護型のどちらを選ぶべきかが違ってくるのです。
節目1:死別、おひとりさまになったタイミング
例えば、パートナーと死別し、おひとりさまとなったタイミングです。自分一人だけのために家事を行うのが億劫になり、何より「ひとり」が寂しく感じられるかもしれません。
「まだ元気なら、サービス付き高齢者向け住宅、もしくはケアハウスなどが選択肢となってくるでしょう。ただし、おひとりさまは認知症になるリスクも考慮しておく必要があります。要介護になっても住み続けられる施設か確認も大事です」(畠中さん)
節目2:70代半ばになったら
次に、70代半ばという年齢が節目になります。個人差はあるものの、一般的にはその頃に差し掛かると身体能力や気力の衰えを顕著に感じるようになります。
特に、転びやすくなったと自覚した場合には、施設への入居を考え始めるタイミングです。加齢とともに骨折しやすくなり、寝たきり生活が長期化しがちに。その結果、筋力も衰え、要介護状態になってしまうケースも珍しくありません。
「身体の衰えを感じるものの、介護認定を受けていなければケアハウスやサービス付き高齢者向け住宅、介護認定を受けている場合は、介護付有料老人ホームや介護型ケアハウス、介護も提供するサービス付き高齢者向け住宅が選択肢になるでしょう」
節目3:要介護認定を受けたら
そして、寝たきりではなくても、体が不自由になって軽度の要介護認定を受けた場合も、入居を意識し始めるタイミングです。
特別養護老人ホーム(特養)や介護付有料老人ホーム、老人保健施設(老健)などが選択肢となってきます。
「ただし、特別養護老人ホームは要介護3以上でないと申し込めません。また、待機者の多い特別養護老人ホームの場合は、要介護3でも、要介護2に回復する可能性などを考慮して、なかなか入居できないこともあります」(畠中さん)
逆に、要介護3に達してから一気に身体機能や判断力が低下する人も少なくありません。要介護2の判定が出た時点で、施設への入居を念頭に置き、施設選びを本格化させたいものです。
費用とサービスの質は比例しない? 施設選びのポイント
施設の見学は個別で申し込むのが大事
このように、シニア向け施設にはさまざまなタイプがあることに加え、同じタイプでも施設やサービスのグレード、費用は異なります。しかも、同じタイプで費用の設定も変わらないのに、運営者によってサービスの質に差が生じることもあります。
「サービスの質は必ずしも価格に比例していません。安くても優良な施設はあります」と畠中さん。施設選びはしっかり調べることが必須となります。事前に見学することも大事です。
「その際は、施設側が実施する見学会へ参加するのではなく、個別で見学を申し込みましょう。送迎付きでは最寄りの駅と距離感もつかみづらいですし、道の勾配もわかりにくいまま、見学を終えてしまいます。また、施設の本来の姿がつかみづらくなることもあります」
スタッフの対応や入居者の暮らしぶり、食事の内容などをチェックし、その中で自分が重視するポイントを元に取捨選択を進めていきます。
エリアにはこだわらず、予算から施設を決める
施設入居に充てられる予算には、当然個人差があります。月々の費用とは別に、一時金と呼ばれるまとまったお金が入居時に必要となる施設もあります。
「70歳以降に積極的な資産運用を行うのは現実的に難しく、認知症になった場合、株や投資信託は一生換金できなくなるリスクを考えても、お薦めできません。それまでに蓄えたお金で入居できる施設を選ぶことになります。施設入居に充てられる予算をきちんと把握するためにも、今のうちから『貯金簿(R)』をつけておきましょう」(畠中さん)
「貯金簿(R)」とは、預貯金や貯蓄性のある保険、株式や投資信託などの運用商品の合計残高(時価評価額)と、住宅ローンなどの負債残高の推移を、半年ごとなど一定のペースで記録していく記録帳です。
「自分が暮らしてきた地域で施設を探したいと考える人が多いのですが、東京都内、特に城南地区などでは相対的に価格が高くなっています。エリアにはこだわらず、自分の予算で入居できる施設を探すのが基本となります」と畠中さん。
入居中にお金を払えなくなって退去を迫られる事態を防ぐためにも、貯金簿(R)で自分の資産を把握し、一時金支払い後の貯蓄と年金で月額費用がまかなえる施設を選ぶようにしましょう。
※「貯金簿(R)」 登録第6467161号
施設見学や準備は元気なうちに行おう
自宅と施設、どちらを選ぶにしても、今のうちからしっかりとプランを練っておくことが大事です。特に施設入居を考えている人は、元気なうちにいろいろと見学しておきましょう。
また、終の住処と一緒に、他界した後のことも考えておきたいものです。誰かに迷惑をかけたくないと思うなら、死後事務手続きについても今のうちに対策を講じておきましょう。
「死後事務手続きを代行する事業者が増えていますが、依頼者から託された資金の分別管理を徹底しているか、不安になることもあるでしょう。信託銀行など、信頼できる機関が提供している商品なら安心して利用できますね」と畠中さんは言います。
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■記事協力=三井住友信託銀行
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