子どもに残すべきはお金?不動産?どちらがお得?
2024.12.122022年02月07日
遺言書の作成、事前の処分をしておかないと迷惑が
死後空き家にしない!生前やるべき準備と家の処分方法
今、全国で空き家が増え、社会問題になっています。相続した家を放置しているケースや、一人暮らしの高齢者が亡くなり、家を継ぐ人がいないというケースも。空き家になるのを防ぐための、生前にできる対策と処分方法をお伝えします。
日本各地で空き家がどんどん増えて社会問題に!
空き家が増えている、というニュースをよく目にします。実際のところ、どのような状況なのでしょうか。
総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、平成30年(2018年)の時点で全国の空き家は846万戸に上り、平成25年(2013年)と比べて26万戸(3.2%)の増加となっています。
しかも、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%で、過去最高の水準に。下図の通り、空き家の数は一貫して右肩上がりで、昭和63年(1988年)から 平成30年までの30年間で452万戸 (114.7%)の増加となっています。
空き家が増えている原因は
空き家が増えている理由として考えられるのが、地方から大都市圏への人口流出と高齢化の進行です。親が他界した後、子どもが実家に戻らずそのまま放置したり、一人暮らしの高齢者が亡くなって、家を継ぐ人がいないまま空き家に、というケースが考えられます。
「実は空き家が増えること自体は悪いことではないんです。新しい借り手が見つかり、再利用して地域の活性化につながればいいわけで。ただ、持ち主が不明で手が付けられず、廃屋になってしまうことが問題なんですね」
こう指摘するのは、一般社団法人 空き家管理士協会の代表理事、山下裕二さん。山下さんは所有者から委託された空き家になっている実家などを定期的に点検・メンテナンスする管理サービスを提供しています。
「空き家はそのまま放置していると傷みが進んで廃屋状態になってしまいます。そうなると近隣の景観にも悪影響を及ぼす上、倒壊などの危険も生じます。さらに、ゴミを次々と投げ込まれたり、不法侵入者が住みついたりする恐れもあります」
法改正により、不動産を相続した際にその名義を相続人に変更する「相続登記」が義務化される(2024年4月1日施行)など、空き家問題を見据えた対策は進んでいます。ただ、現状では、所有者が責任をもって備えておくべきでしょう。
自分の家を空き家にしないために準備しておくことは
おひとりさまの死後、住んでいた家はどうなるの
一人暮らしをしている、いわゆる“おひとりさま”が亡くなると、所有していた家は相続財産として扱われます。遺言書で自分の希望を明示していない場合は、法定相続人に該当する人たちの間で遺産分割協議が行われ、相続人が決まります。
「私たちが管理しているのは、親から実家を相続した人や、介護施設入居や長期入院で自宅を離れる高齢者から依頼を受けた物件が中心です。所有者に依頼されれば、家がなるべく長持ちするように管理を請け負います」
ただし、身寄りのない人が遺言書をのこさずに亡くなった場合など、相続人(所有者)が不明なケースでは、空き家を管理するにしても、取り壊すにしても、なかなか話が進まず大変だとか。申請者がいないので空き家バンクに登録することもできません。
「以前、災害時の避難場所に隣接していた相続人不明の廃屋の処分で、地域住民が困り果てたことがありました。結局、そのケースでは自治体に要請し、『略式代行執行』という手段で公費を用いて解体に踏み切りました」
自分の死後、家をどうしたいか明示しておくことが大事
このように、近所の人たちや自治体などに迷惑をかけないためにも、きちんと遺言書を作成し、家の処分に関する自分の希望を明示しておくことが大切です。
「自分が亡くなった後、家をこんなふうに使ってほしいとか、そのためにここに寄附したいとか、意思表示をしておいていただけると助かりますよね。できればそのための費用も準備してもらえれば、手続きをする側としては大変ありがたいです」と山下さんは言います。
自宅を空き家にしない! 売った後に住み続ける方法も
一方、老後資金の確保を目的として、生前に自宅を売却したり、あるいはその段取りを済ませた上で、そのまま自宅に住み続けられるというサービスもあります。「リースバック」や「リバースモーゲージ」という商品です。
「リースバック」とは、自宅を売却してまとまった現金を確保した上で、賃貸契約を交わし、家賃を払いながらその後も自宅に住み続けられるサービスです。
「リバースモーゲージ」とは、自宅を担保に老後資金の融資を受け、その返済は死後に自宅を売却した際の代金で相殺するというサービスです。
どちらも持ち家を有効活用できる方法として注目されています。自分の死後、空き家になるのを防ぐ選択肢の一つとなるでしょう。
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■記事協力=三井住友信託銀行