【恋愛小説】サレ妻になんてなりたくない!#2

【サレ妻2】夫の「取り消しLINE」は何だったの?誕生日翌日の不穏な違和感

【サレ妻2】夫の「取り消しLINE」は何だったの?誕生日翌日の不穏な違和感

公開日:2026年02月15日

夫の「取り消しLINE」は何だったの?誕生日翌日の不穏な違和感

ルイコ56歳の恋愛ルポ第2話。誕生日翌日の「取り消しLINE」から、夫への信頼にヒビが入る。遅い帰宅、急な出張、新しいネクタイ――“まさか”を打ち消すほど不安は膨らみ、半年後ついに夫のスマホへ。そこに待っていたのは、LINEのロックだった。

前回までのあらすじ

前回の話はコチラ。「この人がいれば行く先を間違えずにすむと思えた」という信頼感のもと、大学時代の同級生リュウジと結婚したルイコ。共働きをしながら産んだ一人娘と、育児に協力的なリュウジ、家族3人の幸せな暮らしを築いていたはずだったが……。

「取り消しLINE」…小さな違和感が増殖するとき

「取り消しLINE」…小さな違和感が増殖するとき

あの日は私の誕生日の翌日だった、とルイコさんは振り返る。

「あの頃、夫は異動になったばかりで忙しかったのに、私の誕生日には、予約したおいしいケーキを取りに行って早く帰ってきてくれた。この日のためにと買ったステーキも夫が焼いてくれて。大学生の娘も一緒にクラッカーなんか鳴らしてくれた。あとで掃除するのが大変じゃないと言いながらも、うれしくて幸せだった。

その翌日、夫からLINEがあったみたいなんですが、取り消しになっていたんですよね。今までそんなことはなかったから、あれ、と一瞬、妙な気持ちになりました」

何かあったの?とLINEを送ると、「ごめん、仕事先の人に送るのを間違えて送っちゃった」と返信があった。

「今思えば、少しずつ、『あれ?』と思うことが増えていったような気がします。連絡がないままに帰宅が遅くなったり、娘の誕生日に突然、『悪い、仕事のトラブルで帰れないかもしれない』とか、クリスマスイブの午後に『これから急な出張が入った』とか。こういうのって浮気の兆候だと雑誌やネットには書いてある。でも私は疑わなかった。夫と私の関係性を考えれば、浮気なんかするはずがないと思っていたんです」

もし他に好きな人ができたらどうする?

もし他に好きな人ができたらどうする?

若い頃に話し合ったことがある。もし他に好きな人ができたら、そしてその人と人生を共にしたいと思うほど好きなら、正直に伝えて離婚しようと。騙し合いはやめようと。自分たちの信頼関係を考えればあり得ない。ルイコさんはその考えにすがりついた。

「でもある日、ふと見たら夫が新しいネクタイをしているんです。うちはお互いのクローゼットなんてほとんど見ないけど、新しいものを身につけていればわかりますよ。あれ、どうしたのそれと言ったら、『あ、ああ、買ったんだ』と言いつつ『派手かな』と私の目を覗き込んだ。『派手ではないけど、今までとは違う趣味だなと思って』と思わず本音を洩らしたら、リュウジがギクッとしたのが伝わってきたんです。言わなければよかったと思ったけど、もう遅かった」

どうしたらいいのだろう。何をしていても頭の隅に「夫の不倫?」という真っ黒な塊がチラチラと見え隠れする。夫に浮気をされた妻なのだという自覚がわいてくる。かわいそうだとは思えなかった。それより、まだ「そんなはずはない」という気持ちが強かった。

「認めたくなかったんですよ、夫が私から他の女性に心を移すことがあるなんて。私は見てわかる通り、女っぽいタイプじゃありません。スカートなんて何十年もはいてないし、ひらひらした服は昔から苦手だった。

でも夫はそんな私を愛してくれたはず。女は見かけじゃない、話していて楽しいと思えるのはルイコだけだと、いつも言ってくれていた。そんな夫が50歳を過ぎていきなり他の女に心奪われるなんてことはあり得ないと思ってました」

忙しくても、どこにいても心が苦しい

忙しくても、どこにいても心が苦しい

真実を知るべきなのか、知らん顔するべきなのか。コロナ禍以降、ルイコさんの出社は週に3回か4回になっていたが、彼女は忙しくしていたほうがいいと感じ、5日間出社をすることもあった。忙しくしていれば思い悩む時間はないと思ったのだが、そうではなかった。どこにいても心が苦しい。

「娘にまで『何かあったの?』と聞かれました。何でもないと言ったけど、お母さん、更年期じゃないの?と言われて。そうかもしれない、そうだ、調子が悪いのは更年期のせいにしようと思いました」

夫は家庭に戻れば、以前と特に変わりはなかった。週末も以前と変わらない頻度で、「映画でも観ようよ」と言い出す。あるときルイコさんは思い切って、「失楽園」を観ようと言った。結婚前に一緒に観た映画だ。既婚者同士の抜き差しならぬ関係の果て、二人は死を選ぶ。あの頃は「こんな関係もあるんだね」「でも死ぬ理由はないよね」と言い合った。若かったのだとルイコさんは思った。

「リュウジは『え、あの映画観るの』と渋っていましたが、私が見始めると一緒にソファに座りました。でもいつの間にか彼はワイングラスを持ったまま寝てましたね。観ていられなくて寝ちゃったのか、あるいは自分の恋と比べているうちに疲れてしまったのか。なんだか私との時間を大事にしてくれなくなっているのかなと、ちょっと寂しかったですね」

絶対的に信じていた分、些細なところで「夫にとって、私と、この家庭は重要なものではなくなっているのだろうか」というネガティブな感情が湧いてくるようになった。なんとかそれに耐えながら、ルイコさんは生活を続けた。

もう耐えられない!スマホの中に真実はあるの?

「ちょうど私も更年期で、ただでさえ体調不良なのに精神的にもあれこれ悩んで……。半年ほどたった頃でしょうか、とにかく真実を知りたい、知る努力をしようと思ったんです。

夜中、夫が寝ているときに夫のスマホを握りしめました。滑って落としそうになるほど手に汗をかきながら、夫の指で指紋認証、ロックを解除しました」

スマホの中にあったものは……。

亀山早苗
亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。