松場登美さん大吉さんご夫婦

公開日:2025年01月09日

別居生活20年以上の「群言堂」松場夫妻が語る

「なかよし別居」を選ぶ夫婦のリアルとは?いい関係を保つために守るべき3か条

「なかよし別居」を選ぶ夫婦のリアルとは?いい関係を保つために守るべき3か条

世界遺産にも登録されている石見銀山に本社と本店を構えるライフスタイルブランド「石見銀山 群言堂」。創業者の松場大吉さん・登美さん夫妻は「なかよし別居」をして20年以上になるといいます。その幸せの秘訣を伺いました。

お話を聞いた人:松場大吉さん、登美さん

まつば・だいきち
1953(昭和28)年、島根県生まれ。79年に名古屋で登美さんとともにパッチワーク商品を扱う「ブラハウス」を立ち上げる。81年に故郷に家族で帰京。94年「群言堂」を立ち上げる。98年株式会社「石見銀山生活文化研究所」を設立。2023年に「石見銀山群言堂グループ」の代表を退任し、現在は地域事業に取り組んでいる。

まつば・とみ
1949(昭和24)年、三重県生まれ。株式会社「石見銀山生活文化研究所」相談役。株式会社「他郷阿部家」竈婆(かまばあ)。74年に大吉さんと結婚後、79年から「ブラハウス」でデザイン、製作を担当、94年から服飾ブランド「群言堂」のデザイナーを務める。2001年には武家屋敷を買い取り、改修して08年宿泊施設「他郷阿部家」を開業。

最良のパートナーであり、最強のライバル

「群言堂」のデザイナーを引退後の現在も、古民家を改修した宿泊施設「他郷(たきょう)阿部家」の竈婆を務める松場登美さん。

そしてアパレル、飲食、観光などの事業を統合する「石見銀山群言堂グループ」の代表を退任後、観光や教育、防災など大森町のための取り組みを行う松場大吉さん。

二人は結婚して50年になります。結婚7年目に名古屋から大吉さんの故郷であり、後に「群言堂」の拠点となる島根県の石見銀山に戻り、今もそこで暮らしているお二人ですが、20年ほど前から別居をしています。

「仲が悪くて別居したわけではないんです。だから“なかよし別居”と呼んでいます」と登美さんは言います。

「大吉さんが新たなスタートの背中を押してくれた」

季節の野花を生けることも、登美さんの大切な時間です

二人が別居生活を始めたきっかけは、一軒の武家屋敷との出合いでした。

「建物の老朽化が激しくて買い取り手がつかず、土地の一部を所有する我々が購入せざるを得なくなりました」(大吉さん)。でもそれが登美さんにとっては大きなチャンスとなりました。

当時「群言堂」のデザイナーとしてアパレルの仕事にやりがいを感じながらも「自分が本当にデザインしたいのは“衣”だけでなく、食・住・美を含めたライフスタイルだったのです」(登美さん)

そこで武家屋敷を改修して、理想とする暮らしを表現してみたいと大吉さんに相談したところ「あなたがここで住む覚悟でやらないと、理想は実現できないのでは」と助言されたのだと言います。すでに子どもたちは3人とも独立し、お互いの親も見送ったタイミング。

「『結婚はこうあるべき』という考えにしばられず、登美さんの夢を応援したかった」と大吉さん。「それまで料理をしたこともなかったけど、自分の好きなものを作るのが楽しいし、実験のようでわくわくしました。今では隣に住む中学生の孫の朝食も一緒に作って食べていますよ」

一方の登美さんも「古民家再生」というライフワークに向き合いつつ、「自由に使える時間が増えて、仕事しながらも学びの時間ができたのがうれしくて。一人で暮らして初めて家事に追われていたことに気付きました」

「どっちかが先に逝っても、落ち込まずにがんばって生きよう」

著書も多数ある登美さん。忙しない日々の中、自分と向き合いながら書く時間も大切にします

二人とも20年を経た今も自由な一人暮らしを満喫しています。

「私は仕事や孫の世話に追われる日々なので、月2回ぐらいは仕事からも家族からも離れて逃避します。大浴場付きの駅前のビジネスホテルに泊まって、1泊で3回ぐらいお風呂に入るのが楽しみなんです」と大吉さん。

「あら、一緒に住んでいた頃はお風呂嫌いだったのに! 私は阿部家での仕事が終わって、夜自宅に戻ってから映画やドラマを見るのが楽しみです」という登美さんは、一人暮らしの家に新たな家族を迎えました。

「ボケ防止になるから、と次女にすすめられて」フレンチブルドッグで保護犬の福ちゃんを飼い始めたそう。「大吉さんよりも手がかかりますけど(笑)、福ちゃんを迎えて以降、まわりからはすごく穏やかになったといわれます」

二人が別居をするときから約束として決めているのが「どちらかが倒れたら一緒に住むこと」。いざそうなってみないとわからないけど、と大吉さん。

「でも最近、夫を亡くしてひどく落ち込んでいる知り合いがいて。その落ち込みようを見たときに、うちの夫婦はそうはならないなと。どちらが先立ったとしても、逆にその分、がんばって生き延びようとやる気が出ると思うんですね。そういう夫婦になれてよかったなと思います」(大吉さん)

「なかよし別居」のための3つのポイント

「仲良し別居」歴20年の松場さんご夫妻。いい関係を続けるための秘訣は……

■相手を信頼して、自立すること

何でも自分でやるという自立心と、「あの人なら心配ない」という信頼が大事。

■お互い干渉しないこと

何かあれば連絡がくるだろうという気持ちで、自分一人の自由時間を満喫するのがポイント。

■町中でばったり会うぐらいの距離に住むこと

仕事に向かう途中にばったり顔を合わせることも。なんとなく存在が感じられる距離感がちょうどいい。


取材・文=三橋桃子(ハルメク編集部) 撮影=回里純子 

※この記事は、雑誌「ハルメク」2024年4月号を再編集しています。

雑誌「ハルメク」
雑誌「ハルメク」

女性誌売り上げNo.1の生活実用情報誌。前向きに明るく生きるために、本当に価値ある情報をお届けします。健康、料理、おしゃれ、お金、著名人のインタビューなど幅広い情報が満載。人気連載の「きくち体操」「きものリフォーム」も。年間定期購読誌で、自宅に直接配送します。雑誌ハルメクサイトはこちら

みんなの コメント
ハルメクが厳選した選りすぐりの商品

驚きの軽さ&使いやすさ!

1本で7つの効果
薬用美肌ヴェール
1本で7つの効果
薬用美肌ヴェール

【PR】自分の尿モレタイプはどれ? 簡易診断でチェック!

自分の尿モレタイプはどれ?

たまに尿モレがあっても、だましだまし過ごされている方も多いのでは? けれど一口に尿モレと言っても症状によってタイプはさまざま。そこで自身の尿モレのタイプがわかる簡易診断チャートをご紹介!

2025.06.10
知らないと損する!?30秒でわかるコンビニおトク術

1個買うと、1個もらえる!

「アレ」を活用するだけで商品がタダでもらえるキャンペーンをご存知ですか?その名も「1個買うと、1個もらえる」キャンペーン。コンビニでおトクに買物する絶好の機会をハルトモさんに体験してもらいました!

2025.06.02
「ほったらかしの投資」~手軽に投資を始める・続ける方法

「投資は難しそう…」と思っている人は必見

興味があるけど自信がない人におすすめな、長期的に資金を積み立てていく「ほったらかしの投資」。家計をラクにする資産運用の方法が知りたい人はぜひチェック!

2025.06.02
夏の眼鏡が暑くて不快…汗ばむ季節にぴったりのフレームで涼しく快適に!

汗ばむ季節にぴったりのフレームとは?

汗ばむ夏の眼鏡…この顔面環境の不快度どうしたらいい?そんな方は夏にぴったりなフレームをチェックしてみて。

2025.06.02
サングラスのレンズカラーの違いって?美肌・おしゃれ見えする色の選び方

サングラスのレンズカラーの違い

色によっては美肌効果も期待できるカラーレンズ。お気に入りを見つけて、夏のお出掛けを楽しみましょう!

2025.06.02
認知症のご本人の財産や権利をどう守るか?

認知症のご本人の財産や権利をどう守る?

認知機能が低下した場合、財産管理はどうするべきか?法律面からの支援をご紹介!

2025.05.13
ご家族の認知症介護の進め方、向き合い方

ご家族が認知症になったら……

ご家族が認知症で介護が必要な状況になったらどうする?進め方・向き合い方を解説していきます

2025.05.13
【PR】飽き症でも、ゼロから英語が話せるようになったワケ

ゼロから英語が話せる!

飽き症さんでもOK!たった60日で英語が苦手な人でも英会話ができるようになると話題の「インド式英会話」をご存知ですか?無料体験セミナー実施中です!

2025.02.05
宅配買取を賢く利用して一気に片付け!

【宅配買取】使わなきゃ損!

家の不用品を宅配買取に出したら、思わぬ高額査定で29万円ももらえた!ハルメク読者限定で送料・査定もすべて0円って本当!?

2025.05.30
おひとりさま女性のソロライフに備えよう!「おひとりさま老後」の資産運用

老後資金、こんなに要るの?

未婚に限らず、離婚・死別などで誰しも「おひとり様」になる可能性が。一人で生きていくための「お金の準備」は出来ていますか?

2025.03.18
【PR】巻き爪や外反母趾などの足悩み解消を目指せる「正しい歩き方」

巻き爪解消を目指せる「正しい歩き方」

間違った歩き方は足トラブルを招き、健康寿命に影響があることを知ってましたか?正しい歩き方と足トラブル対策を専門家が解説!

2025.05.12
物価高の今こそ考えたい!インフレ時代に「資産運用」ってどうして必要なの?

本当に必要な「お金の準備」

物価が急激に上昇している今こそ、将来に向けて「お金の準備」が必要です!年金や退職金に頼らない、資産形成を進めるには?

2025.04.18

ハルメクが厳選した選りすぐりの商品

「奇跡の60代!木村友泉 大人のリンパケアLesson」横隔膜をゆるめる動き