山本ふみこさんのエッセー講座 第9期#1
2024.10.312024年01月25日
エッセーの疑問・お悩みに答えます
山本ふみこさんのエッセー講座 第7期#4
随筆家の山本ふみこさんが講師を務めるハルメクのエッセー通信講座 第7期の第4回。今月のテーマは「辞書を引きましょう!」。参加者の作品から山本さんが選んだ3本のエッセーとともにお楽しみください。
コトコトラジオ 第4回
エッセーの書き方、ちょっとした豆知識やおすすめの本、山本家の最近のできごとなどなど……自由なテーマで話します。
<便利な再生方法>
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今月のテーマ「皆さん、辞書を引きましょう!」
質問 :「匂い立つ」と「香り立つ」、どちらの表現を使うか迷いました。よい表現の探し方はありますか?
山本さん:作中での表現として、「匂い立つ」「香り立つ」どちらの表現を用いるか迷った、ということですね。
まずは「匂う」と「香る」を辞書で引いてみるとよいですよ。それぞれの意味を知ることで、作中でどの表現を選ぶかのヒントが得られるはずです。
一見どちらでも伝わるように思えます。しかし「どちらの表現を使おうかな」と悩む精神は、書き手としてとても大切なことです。
表現に迷うことは、洋服を着て姿見の前に立って、ああでもないこうでもないと、上を取り換えたり下を取り換えたり……なんてことと同じ。文章も洋服と同じように、装うことを考えてみましょう。
素敵な装いをするためには、音読です。声に出して読んでみたら違和感があったり、いやにゴツゴツしているなと思うことがあります。そんなときは、改めて表現を考え直したほうがいいかもしれませんね。
言葉の選び方。これは書き手の好みに尽きることではありますが、やはり一度辞書を引いてみることが大切です。
使おうとしている言葉の意味を誤解していることもありますし、書きたいことと言葉との間にズレが生じていることもありますからね。
私は執筆の際には2冊の辞書を用意して、それぞれ引き分けたり、両方引いたりしています。
そして、調べることの大切さは、「言葉」に限ったことではありません。「作中で取り上げた出来事」も含みます。
昔のラジオ番組について書くときには、「何年から何年まで、どの局で放送された番組なのか」。舞台作品について書くときには「原作者は誰なのか」などを調べて、作品の中に置いておく。これは読者との向き合い方の問題ですね。
また、わからないことは「わからない」と正直に打ち明けることも大切です。
曖昧なまま、わかったようなことを書くのではなく「今、私がわかっていることは、こういうことです」「理解はここまでですが、置いておきますね。どうぞお受け取りください」という感じでしょうか。
「読者のことを考えて書きましょう」というお話は何度かしてきましたが、今までは精神的な内容が多かったと思います。理解していただけるように語り掛ける、とか。読者との間に優しい架け橋を置く、とかね。
だけど今回はもう少し具体的なことをお伝えします。
言葉も出来事も、ちゃんと調べましょう。辞書を引きましょう。
参加者からの質問にお答えしています!
番組では、参加者の皆さまから寄せられた質問やお悩みにお答えしています。
今回は上記の質問に加え「過去の出来事を書く時、語尾は全て過去形(~した)にすべき?」「他の作品から引用を行う時のルールは?」に回答。
山本さん流「エッセーのネタ」の書き留め方も紹介。ぜひ番組本編でお聞きください!
#山本さんおすすめの一冊
「ユキエとくま」作: アリーチェ・ケッレル、絵: はせがわ まき、訳: 関口 英子
(工学図書)
アイヌの物語を初めて文字にした『アイヌ神謡集』を編んだ、知里幸恵という少女がいました。そんな彼女の物語です。2023年、生誕120年を記念して出版されました。
私は北海道に何人か友達がいまして、その一人のエゾモモンガさん(仮名)という友達がプレゼントしてくれた絵本です。
「“銀の滴降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに”というすごくきれいな文章を残した、知里幸恵というアイヌの少女がいました。19歳という短い人生でした。彼女が書いた本は難しくてわかりませんでした。けれど、『ユキエとくま』で、理解できることがありました」というメッセージと一緒に送ってくれました。
アイヌには長く差別を受けてきた歴史があります。
「そんなことがあってはいけない」「可哀そうなことをした」と思うだけではなくて、アイヌの素晴らしい文化を伝えようとした人たちがいた、ということを大事に考えたいですよね。
そして、自然とどう向き合うか、自然のことをどう捉えていくかを求められる今、知恵に溢れた優しい絵本を読むのは良いんじゃないかと思い、お話しました。
山本ふみこさんが選んだ3つのエッセー
クリックすると、作品と山本ふみこさんの講評をお読みいただけます。第7期第4回で取り組んだエッセーのテーマは「ラジオ」です。
「晩秋に香り立つ」説田文子さん
今日はお天気。この頃、朝がたは寒くなってきたけれど……
「大なわとび」玉木裕子さん
スーイ、スーイ、スーイ。空気を切って縄が回る……
「兄ちゃんのお土産」宮本昌子さん
その夜、わたしは大阪府堺市の家にいた。実はわたしは……
お便りお待ちしています!
今月もお聞きいただきありがとうございました。山本さんへのお便りを募集しています。この記事の下にある「コメントを書く」よりお送りください。ラジオネームを併記していただけたら、番組の中でお名前をお呼びします。
随筆家・山本ふみこさんのプロフィール
1958(昭和33)年生まれ。出版社勤務を経て随筆家に。ハルメクでは連載「だから、好きな先輩」やエッセー講座(会場開催と通信制)の講師でおなじみ。著書に『朝ごはんからはじまる』『まないた手帖』(ともに毎日新聞社刊)『おとな時間の、つくりかた』(PHP文庫刊)『暮らしと台所の歳時記 旬の野菜で感じる七十二候』(PHP研究所)『こぎれい、こざっぱり』『台所から子どもたちへ』(ともにオレンジページ刊)『家のしごと』(ミシマ社刊)ほか多数。公式ブログは http://fumimushi.cocolog-nifty.com/
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
募集については、2024年3月頃、雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。