海の幸を贅沢に使った絶品「海ごはん」

ご当地グルメ|千葉・勝浦の郷土料理「なめろう」

公開日:2018.10.04

更新日:2018.10.05

千葉の御宿といえば、「月の砂漠」でおなじみ。関東にお住まいの方なら海水浴などで、1度は訪れたことがあるかもしれません。勝浦はその御宿のお隣で漁港として知られ、カツオをはじめ、太平洋の海の幸が豊富ですが、朝市が開かれることでも有名です。

400年以上続く勝浦の朝市は地元の人々の台所

 

勝浦朝市は地元の方々の台所。畑で採れた野菜から漁師さんが獲ったサザエ、アワビまで並びます

勝浦朝市は地元の方々の台所。畑で採れた野菜から漁師さんが獲ったサザエ、アワビまで並びます知らない土地を旅するときに楽しいのが、市場やマーケットを覗いて歩くこと。都会はスーパーばかりになってしまい、生産者の顔が見えませんが、市は野菜も魚も、お百姓さんや漁師の方々の顔が見えます。

勝浦の朝市は、1591年、天正の時代から400年以上続いています。周辺の農家の方々が自ら育てた野菜を持ち寄り、漁師さんが獲ってきた新鮮な魚介類が並ぶので、観光の目玉にもなりながら、勝浦に住む人々の台所として、日常に溶け込んでいます。なかには農家のおばあちゃんが庭の木からもいできた夏みかんや、今では珍しい、姿は決して良くないものの、薫り高く味の濃い露地栽培の苺など、暖かい外房ならではの素朴な食材に出会うこともできるのです。

勝浦は、農業はもちろんですが、漁業の町としてもよく知られています。勇壮なカジキの突きん棒漁や名産のカツオ、キンメダイ、そしてイセエビやサザエ、アワビなど、豊富な魚介類が付近の漁港に水揚げされます。

そんな町だからこそ、勝浦を訪れるなら、何をおいても魚料理を食べなくては! 漁師町だからこその、勝浦の新鮮で美味しい魚を使った料理を堪能するのにおすすめなのが、昭和50年創業の「天平」です。

 

JR外房線の勝浦駅から歩いて7分の場所にある「天平」。家庭的な雰囲気のお店

港から直送される超新鮮な高級魚が自慢のお店

近くの港から直送。鮮度が命の魚だけに、都会でいただくカツオとは味が違います!

勝浦沖は、黒潮と親潮がぶつかる絶好の漁場。漁は水もの、天候によって左右されますし、どんな魚が獲れるかはその日の運次第、というのも楽しいもの。けれど、「天平」は、飲食店なのに、勝浦付近の七つの漁港の入札権を持っています。

だからこそ、毎日鮮度のいい極上の魚を仕入れることができるのです。それぞれの漁港がお店からさほど遠くはありません。特に鮮度が命のカツオは、港から直送だからこそ、都会では味わえない極上の味わいを楽しめます。また、外房名物のキンメダイも産地ならではの値段とボリュームです。

さらには海蝕性のリアス式海岸という複雑な地形だからこそ、磯の魚も豊富です。アワビ、サザエ、トコブシなどの貝類やヒラメやカサゴ、メバルなども見逃せませんし、イワシ、アジやイサキなど多彩な魚が毎日「天平」の厨房に運ばれてくるのです。
 

イワシやアジ、メバルなど地元の魚も

勝浦沖で揚がる豊富な魚の数々。カツオやキンメダイからイセエビ、アワビまで高級魚が並びます。もちろんイワシやアジ、メバルなどの地魚も見逃せません。

イチオシは漁師町の伝統的な郷土料理「なめろう」

 

お酢をかけていただく「なめろう」。その日港に上がった新鮮な魚だけを使う

「天平」では、新鮮な魚だから何でもお刺身で、という料理の仕方はしません。もちろんすべての魚が鮮度抜群なのですが、それぞれの魚に合わせて美味しく料理してくれるのです。その基本は「郷土料理」。漁師町ならではの伝統的な料理法をベースに、魚のおいしさを最大限に引き出してくれるのです。何を置いても必ず注文したいのが地魚の「なめろう」です。皆さんはイワシやアジなどをショウガやネギ、大葉、味噌などを一緒に包丁でいただくなめろうはご存知かもしれません。

けれど、「天平」では、昔から地元で食べていた流儀にこだわります。新鮮な魚をたたいたなめろうを、なんとお酢をかけていただくのです。使う魚はアジやイワシのときもあれば、ムツやトビウオの時もあります。何が出てくるかはその日の漁次第。なんとも漁師町らしい名物料理です。

 

〆(しめ)はサザエのかき揚げで!

見た目以上に上品な味わいの「さんが焼き」

「なめろう」をアワビなどの貝殻に詰めて焼いた「さんが焼き」も見逃せません。この料理が考案されたのは千葉県寒川(さむがわ)町ともいわれています。さむがわ、が少しずつなまって「さんが」になったという説もあります。生の魚を食べるなめろうとはまた違った、焼いた魚ならではの香ばしさは格別です。白いご飯はもちろんのこと、お酒がちょっぴり欲しくなる味です。

 

これまた絶品、「サザエのかき揚げ」

そしてメインディッシュとして食べたいのが、勝浦沖の地の岩場で採れるサザエ。サザエというとつぼ焼きやお刺身を想像しがちですが、「天平」では創業以来、サザエをかき揚げで、とお勧めしています。たっぷりのサザエを分厚く揚げた熱々のかき揚げはさっくりと揚がっており、一口食べるとあまりの美味しさにびっくり、どんどん食べてしまって口の中のやけどに注意しなければいけません。

単品でも頼めますが、丼つゆをかけたどんぶりにもしてくれます。どちらを選ぶかで悩むところですが、だからこそまた伺いたくなるというもの。旅の途中、通りすがりで美味しい店に出会うのはなんとも楽しいものですが、そんなお店にまた行きたくなる、行きつけにしたくなるというのは、贅沢な悩みかもしれませんね。
 

■天平
住所:千葉県勝浦市墨名784
電話:0470-73-2049
アクセス:JR外房線「勝浦駅」正面出口 徒歩7分 
国道R297号線 勝浦墨名交差点 直進50m 
または国道R128号線 墨名交差点 左折50m
駐車場:あり
定休日  水曜(水曜日が祝日の場合と、7月20日~8月までは営業)、元日
営業時間:11:00~14:30 17:00~22:00
クレジットカード:可

坂井 淳一

「今日なにを呑む?」から始まる食事の新しいスタイルを提案する酒ごはん研究所主任研究員。ワイン、日本酒、本格焼酎やスピリッツ、カクテルとあらゆるお酒を研究している。料理はもちろん、旅行、アウトドアやIT、ガジェットなど幅広くカバーする。

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