日数や手段、予算で賢く選ぶ四国霊場巡り

お遍路の旅〔2〕初めての巡礼はツアーがおすすめ

公開日:2018.08.08

弘法大師(空海)ゆかりの四国八十八カ所を歩き遍路で巡るには50日もの日数を要します。ツアーならバスやタクシーを使って効率よく、グルメや観光も楽しみながら満願できちゃいます。今回は、初めてのお遍路におすすめのツアーや選び方をご紹介します。

ツアーのほとんどは先輩お遍路の先達(せんだつ)同行だから初めてでも安心
ツアーのほとんどは先輩お遍路の先達(せんだつ)同行だから初めてでも安心

お遍路初心者は迷わずツアー!その理由とは?

ツアーなら「菅笠は脱帽せずにお参り可能」といったアドバイスが受けられる
ツアーなら「菅笠は脱帽せずにお参り可能」といったアドバイスが受けられる

かつては命がけの旅とされていたお遍路。食料も乏しく、医療技術も発達していなかった時代に道なき道を果てなく巡るわけですから、途中で命を落とす人も少なくありませんでした。お遍路の象徴・白衣(びゃくえ)は、行き倒れてそのまま葬られてもいいようにという死装束の意味合いもあったようです。

現在のお遍路にそのような過酷さはなくなりましたが、総距離1,400kmという道のりは歩きで40〜50日はかかるとされ、初心者にはハードルが高いもの。費用も1日1〜2万円が相場と言われています。道に迷えばそれだけスケジュールが押し、旅費もかさみます。その分、達成感はひとしおですが、時間や体力に余裕がない方にとっての歩き遍路は、まさに修行の旅と言えそうです。

お遍路は初めてで不安という方は、ツアーに参加してみてはいかがでしょうか?そのメリットや選ぶ際のポイントをまとめてみました。

  • 交通手段の下調べや宿泊施設の手配の手間が省ける
    ツアー代には宿泊代や食事代、交通費が含まれるため予算の目安がつきやすいでしょう。宿にこだわりたい方はホテルや旅館、宿坊など選べるタイプのツアーがおすすめです。

  • 巡礼用品などの持ち物を事前に案内してくれる
    菅笠・白衣・金剛杖といったお決まりの道具など、持ち物として何をどこで揃えたら良いか相談できるのが強み。ツアーの特典として含まれている場合もあります。

  • 先達(お遍路の先輩)やガイドが同行してくれる
    参拝の仕方や納札の書き方などは現地にさえ着けば、そのツアーを案内する先達が懇切丁寧に教えてくれます。お遍路の知識が身について旅の楽しさも倍増。

  • 自分の希望するスタイルに合わせて選べる
    10日間前後で八十八カ所すべてを一度に巡るものから、1回3日間など何回かに分けて巡る、といった期間で選べるコースも充実。1人から参加できるツアーも増えています。

  • グルメや温泉、観光も楽しめる
    徳島・高知・愛媛・香川の見どころを回って、四国の魅力を満喫できるツアーも多数。お遍路のことだけでなく、地域の文化に触れられて一石二鳥です。

  • 御朱印集めも、おまかせできる
    納経帳などへの御朱印はガイドの方が代行してくれることがほとんど。待ち時間を気にせずお参りに専念できます。御朱印がたまれば、達成感も得られますよね。

専用のバスやタクシーを使ったツアーなら荷物を車内に置いて、身軽に行動できるメリットも。費用は日数や回数などによりますが、15〜25万円が目安と言えそう。これに納経料や御朱印代、お賽銭など別途費用がかかります。四国以外からの参加なら、往復の交通費もプラスして全体の予算を計算しましょう。

わかりやすい一国参りで無理なく満願!

札所ごとの景観を楽しめるのもお遍路の醍醐味(第45番札所・岩屋寺)
札所ごとの景観を楽しめるのもお遍路の醍醐味(第45番札所・岩屋寺)

四国八十八霊場は一度にお参りしないとご利益が得られないのでは?そう思う方もいるかもしれません。実は回り方に決まりはなく、一度に巡らなくてもOK。順番通りに回る必要もないので、途中からお参りしても問題ありません。

ちなみに何回かに分けて巡礼することを「区切り打ち」と言います。そのなかでも「一国参り(いっこくまいり)」は、特におすすめの回り方。文字通り1県ずつ巡っていくというもので県単位のためわかりやすく、期間があいても難なく次の一国へ進めるでしょう。また、写真や御朱印などの整理もスムーズです。

1県につき2〜3泊というショートトリップもありますが、歩き遍路や観光も含めて1週間ほどの日数をかけ、ゆったり巡るプランもオーダーできるでしょう。

四国のお遍路地図と各県の特徴を簡単に挙げておきます。参考にしてみてくださいね。

四国八十八ヶ所の霊場地図

  1. 徳島(阿波)発心の道場:(1)霊山寺(りょうぜんじ)〜(23)薬王寺
    「一番さん」と呼ばれる霊山寺からスタート。藤の花で有名な(11)藤井寺から(12)焼山寺まではお遍路泣かせの難所とされています。

  2. 高知(土佐)修行の道場:(24)最御崎寺(ほつみさきじ)〜(39)延光寺
    土佐の最初の札所は、雄大な太平洋を望む室戸岬近く。(37)岩本寺の本堂にある575枚からなる天井絵は必見!マリリン・モンローの絵もあります。

  3. 愛媛(伊予)菩提の道場:(40)観自在寺(かんじざいじ)〜(65)三角寺
    険しい坂道と石段を徒歩で辿る(45)岩屋寺は、国指定の重要文化財となった大師堂や弘法大師が修行したと言われる逼割禅定(せりわりぜんじょう)で有名。

  4. 香川(讃岐)涅槃の道場:(66)雲辺寺〜(88)大窪寺
    四国霊場でも最高所にあり、難所とされた(66)雲辺寺も、今ではロープウェイで便利に。(75)善通寺は弘法大師三大霊跡の一つ。(88)大窪寺で結願(けちがん)したあとの讃岐うどんは格別です。

上記4県にお礼参りをプラスした5回のツアーを主催している旅行会社もあります。日数や宿泊先にもよりますが、羽田空港からの往復の飛行機代込みで1県あたり5〜10万円が目安と言えます。

また、四国のお遍路バスでは、 1回8千円前後の日帰りツアー12回ほどで八十八カ所を巡礼できるプランが用意されています。首都圏など四国以外から出発する場合、目的地の空港までの往復チケットを早割などで手に入れ、日帰りプランを組み合わせて一国参りを繰り返す、なんて技もありますよ。

結願や満願をする期間にもルールはありません。自分のペースで計画を立てて、楽しみながら進めていきましょう♪

夫婦や友達、少人数ならタクシー遍路もおすすめ♪

納経帳への御朱印は運転手さんが代行してくれることも
納経帳への御朱印は運転手さんが代行してくれることも

家族や気の合う仲間と巡るのであれば、お遍路専用のタクシーツアーも人気です。なかには先達の資格を持つドライバーもいて、心強いことこの上なし!地元情報にも詳しいので、移動の合間に観光もできて旅気分を満喫できるでしょう。

また、お遍路ならではの「お接待」という慣習も体験できるかもしれません。これは地元の方々が巡礼者に対して、無料で飲み物や休憩所などを提供する施しのこと。お接待は「私の分までお参り下さい」という代参の意味もあり、これ自体が「行」でもあり「功徳」でもあります。そのため声をかけられたら、ありがたくお受けするのがマナー。スケジュール厳守のバスツアーだと立ち寄る機会も限られますが、時間にゆとりのあるタクシー遍路なら心配ご無用。運転手さんも快諾してくれるでしょう。

プラン自体、日数や回数、回る順番も自由に設定できるので「逆打ち(ぎゃくうち)」という巡り方も希望することが可能です。1番から88番の札所まで番号順に巡拝する「順打ち(じゅんうち)」の逆を巡ります。険しい道のりのため「順打ち」より3倍のご利益が得られるのだとか。うるう年にお参りするケースが多く、その年に当たる2020年に決行を考える方も少なくないでしょう。タクシーならバスよりも小回りが利き、効率的よく回れます。「逆打ち」に興味のある方は、見積もりを取るなどして今から行動してみては?

オーダーメードに近い巡り方ができるタクシー遍路は、参加する人数が少ないと割高に。タクシーは4〜5人乗りが一般的ですが、8〜9人の乗車が可能なジャンボタクシーもあります。気の合う仲間を集めてお得に巡礼しましょう!

まとめ

旅行会社主催の事前説明会に参加するのも手

ツアーのメリットは何より、先達からいろいろアドバイスを受けられ、身も心も安心して巡礼ができる点。ひと通り経験すれば、その後のお参りは自分次第、グッと楽になるでしょう。

お遍路ツアーも多種多様。同じ目的の人が集まるバスツアーでは新たなお遍路仲間ができる楽しみもあり、身近な人たち同士で巡るタクシー遍路では一緒に満願を体験することで絆が深まるかもしれません。

期間や交通手段、参加人数など優先順位を決めて、自分にぴったりの巡礼旅を選択してくださいね。

※記事の内容は2019年5月現在の情報です。

幾野 杏子

いくの・あんずこ  フリーライター 酒と終着駅をこよなく愛する、アラ還ライター。国内海外問わず出掛けた地では、市場と酒場と賭場(馬、自転車、ボート)、そしてその地で一番高い場所に足を伸ばし、地元密着情報を地元民から仕入れるのがモットー。

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