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- 熟年離婚の原因・理由5つとメリット・デメリット
ここ数年、熟年離婚が増加しています。特に今は新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で「コロナ離婚」を考える人も多いようです。この記事では、熟年離婚の原因やきっかけ、メリット・デメリット、離婚前に考えるべき老後資金についてご紹介します。
最近増えている熟年離婚とは?統計結果でも増加傾向
熟年離婚に明確な定義はありませんが、一般的に年齢が50代以上で、20年以上連れ添った夫婦が突然離婚することを指すようです。
熟年離婚という言葉は、2005年に放送されたテレビドラマ「熟年離婚(じゅくねんりこん)」(テレビ朝日系)のタイトルになったことで、多くの人に認知されるようになったといわれています。
厚生労働省「平成30年(2018) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 」によると、全体の離婚件数は2017年度より減っているものの、同居期間が25年以上の熟年世代のカップルは離婚件数が増えているようです。
具体的な数字でいうと、
・同居期間が25~30年未満のカップルの離婚件数は、平成29年に比べて120件増
・同居期間が30~35年未満のカップルの離婚件数は、平成29年に比べて72件増
・同居期間が35年以上のカップルの離婚件数は、平成29年に比べて190件増
となっており、熟年離婚が増えていることがわかります。
出典:厚生労働省「平成30年(2018) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 」
熟年離婚が増えている背景には、女性の社会的地位向上や仕事をする女性が増えたこと、年金分割制度の整備で婚姻期間中に夫がおさめてきた年金の一部を妻がもらえるようになったこと、などがあるようです。
熟年離婚の危機にある夫婦に見られがちな兆候
一般的に、離婚危機にある夫婦は、以下のような兆候が見られることが多いようです。
- 夫婦間での会話があまりない
- 相手に感謝を伝えない
- パートナーに対する悪口や不満が多い
また、通常の離婚同様、妻が仕事をしていて自由に使えるお金がある場合も、経済的に自立していて離婚しやすい環境であるといえます。特に、専業主婦の女性が仕事を始める、1人での外出が増えるなどは、熟年離婚に向けた準備である可能性もあります。
- 妻が仕事を始める、資格を取り始める
- 妻が趣味のサークルなどを始めるなど、1人の時間が増える
熟年離婚のきっかけは、夫の定年退職と子どもの自立
熟年離婚は、妻から切り出すことが多いといわれています。特に、夫の定年退職や子どもの独立など、人生の区切りとなるタイミングが、熟年離婚のきっかけになるようです。
熟年離婚のきっかけ1:夫の定年退職
夫の定年退職後は、夫婦で過ごす時間が増えます。そんなときに夫婦の会話がないと、相手のことがつまらなく思えたり、不満や孤独を感じたりすることがあります。そのことから、熟年離婚を決意する方もいるようです。
熟年離婚のきっかけ2:子どもの自立・独立
熟年離婚のきっかけとして多いのが、子どもの自立です。育児中は子どものために離婚を我慢する方も多く、「子どもが大きくなるまでは耐えよう」「子どもが就職したら離婚しよう」と、ずいぶん前からひそかに考えていたという方もいるでしょう。子どもが自立するほど大きくなっていれば、離婚をしても養育権や育児の心配もあまりないでしょう。
熟年離婚のきっかけ3:老後資金の見通しが立った
老後のお金の見通しが立ったタイミングで熟年離婚をするケースもあります。お金とは、財産分与の対象となりえる「退職金」、夫が積み立てた年金保険料の一部を妻が受け取ることができる「年金分割」、長年こっそりと貯めていた「離婚資金」などです。離婚後の生活資金の不安がなくなるため、お金が入るタイミングで熟年離婚を決意する場合も多いようです。
妻から切り出す熟年離婚の原因とは?
では、熟年離婚の原因は何なのでしょうか。ここでは妻から熟年離婚を切り出す場合に、よくある原因を5つピックアップしてご紹介します。
熟年離婚の原因1:性格の不一致
「性格の不一致」は、熟年離婚だけでなく、通常の離婚でもよく原因として挙げられます。熟年離婚の場合、性格の不一致に結婚当初から気付いていながらも、ずっと我慢していたという場合や、定年後一緒に過ごす時間が長くなってから気付いたというケースもあります。
また、そもそも夫婦の会話がない、一緒にいたくないという理由も、熟年離婚の原因となるようです。
熟年離婚の原因2:価値観の違い
次に熟年離婚の原因で多いとされるのが「価値観の違い」です。価値観の違いには「金銭感覚の違い」「趣味に対する理解」「優先順位や大切に思っているものの違い」などがあります。
夫の定年や子どもの独立で夫婦の時間が増えたタイミングで「相手に合わせることに疲れた……」「老後を夫と過ごしたくない」と感じて、離婚を切り出す女性が多いようです。
熟年離婚の原因3:モラハラ・DVなど
中には、「モラハラ(モラルハラスメント)」や「DV(ドメスティックバイオレンス、家庭内暴力)」が原因で熟年離婚するケースも見られます。モラハラは言葉や態度などで相手に精神的な暴力を加えること、DVは肉体的に暴力を振るうことです。
モラハラやDVをする夫が治療やカウンセリングに協力することは少なく、長年暴力を受けた妻が精神的に衰弱しきってしまうこともあります。また「子どものために離婚できない」と長年耐える女性も多く、子どもの独立をきっかけとして熟年離婚する場合があるようです。
熟年離婚の原因4:異性関係(浮気、不倫)・性的不満
浮気や不倫などの不貞行為(配偶者以外の異性との肉体関係)は、民法の定める離婚事由の一つです。夫の浮気や不倫によって相手への信頼を失ったものの、子どものために離婚をせずにいる女性は多いもの。そうした女性が、子どもの自立をきっかけに熟年離婚を決意することもあります。
また、長年セックスレスが続いている場合も、熟年離婚へつながることもあるようです。セックスレスにより、夫婦のスキンシップが減ることで、お互いの愛情が薄れてしまうのが原因です。
熟年離婚の原因5:夫の親の介護・同居
嫁姑問題など、夫の両親との人間関係が原因で、熟年離婚するケースもあります。義母や義父をはじめ、相手の親族との関係が悪化した場合、溜まりに溜まった不満が熟年離婚という形で爆発してしまうよう。
また、夫婦の年齢が50歳を超えると出てくるのが、親の介護問題です。自分の親を介護するのも大変ですが、相手の親ともなればもっと苦労をする可能性もあります。ましてや「嫌いな姑の介護は絶対イヤ!」という女性も少なくないようです。
熟年離婚のメリット・デメリット
熟年離婚にはメリット、デメリットがあります。それぞれご紹介していきましょう。
熟年離婚のメリット
熟年離婚の最大のメリットは「束縛から解放される」「自由になれる」ことです。夫からの縛りもなく、義母や義父に気を使う必要もなくなるなど、夫婦間、家族内での悩みがすべて解消されるでしょう。
また、自分の好きなことができます。いつ外出してもとがめる人はいませんし、昔からやりたかった習い事や趣味に没頭することもできます。自由を手に入れ、第二の人生を充実させることができるのです。
熟年離婚のデメリット
熟年離婚のデメリットを挙げるとするなら、さびしさや孤独を感じることもあるということでしょうか。特に、病気になったときや助けが必要となったときには、より強く感じるかもしれません。
また、熟年離婚で子どもに影響が出ることもあります。たとえば、孫を連れて里帰り・帰省する場合の行き先や、介護が必要になったとき、お墓や位牌をどこに置くかなどの問題も出てきます。いくら「子どもには苦労をかけたくない」と思っていても、少なからず迷惑はかかってしまうのです。
熟年離婚の決断前に確認!生活・子ども・お金のこと
新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で「コロナ離婚」を考える人も多いようですが、熟年離婚を決断する前に考えてほしいことがあります。
今後の生活設計・子どもへの影響
必ず離婚後の生活設計を考えておきましょう。例えば、住む場所や仕事などです。また、夫が家事ができない場合、どう生活していくのかをしっかりと検討しておくべきでしょう。まだ子どもが自立していない場合は、子どもの生活への影響も考えなくてはいけません。離婚後に必要なものの準備を整え、問題点がクリアできてから離婚に踏み切りましょう。
離婚後の老後資金・お金の不安
女性の場合は特に、離婚後、生活費や老後資金など金銭面に不安が出てくることもあります。お金で困らないために、まずは夫婦の共有財産を確認しておきましょう。この財産を離婚時に分割する制度が「財産分与」で、原則として共有財産は折半できます。双方の合意によって分割の割合の変更も可能ですが、財産分与はトラブルになりやすい傾向にあるので注意してください。
また、年金分割なども含めた財産分与がうまくいったとしても、生活水準が離婚前とまったく変わらないという方は少ないかもしれません。専業主婦の場合は、女性の再就職先が限られる中で熟年離婚をして後悔するケースもあるよう。離婚して貧困に陥る「離婚貧乏」にならないためにも、生活費や老後資金など金銭面の不安は早めに解決しておきましょう。
慰謝料請求をするのかどうか
前述した財産分与とは別に、夫に慰謝料を請求できることもあります。慰謝料が請求できるケースは、
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(民法第709条)
という場合です。具体的には、
・浮気、不倫など、配偶者の不貞行為
・DV、モラハラ
・セックスレス
・正当な理由なしに、同居義務や扶助義務を果たさない
などです。慰謝料を請求する場合は、第三者が納得できる証拠を提示する必要があります。弁護士に相談するといいでしょう。
夫への恋愛感情の有無
相手への愛情が本当に冷めてしまったのかどうか、今一度自分に問いかけてみてください。それは、一時的な怒りや憎しみなどの感情ではありませんか? 自分の都合や理想ばかりを相手に押し付けてはいませんか? 冷静さを欠いている状態で離婚すると、のちに後悔する可能性もあります。離婚前に、自分の言動についても、しっかりと見つめ直しましょう。
熟年離婚を迷っている場合の相談先
熟年離婚は大きな決断となりますから、離婚するかどうか迷うのは当然のことです。そんなときに「誰かに相談できたら……」と思うことがあるかもしれませんね。ここでは、熟年離婚の相談先をご紹介します。
離婚カウンセラー:心理的サポート、気持ちを整理できる
熟年離婚を迷っているのであれば、離婚カウンセラーに相談するのはいかがでしょうか。離婚カウンセラーは中立な立場で夫と妻の話を聞いて、夫婦の問題を一緒に考えてくれます。カウンセリングは夫婦で受けることも可能です。第三者に話すことで自分の気持ちを整理でき、お互いの気持ちを伝え合うことで、離婚を免れた夫婦も意外と多いのだとか。
離婚カウンセリングは心療内科の他、県や市区町村の男女共同参画推進センターや、女性センターなどの公的機関で相談できることもあるので、気になる方は調べてみるのもいいでしょう。
円満調停・弁護士:法的な見解・サポートが得られる
確実に離婚したい、離婚後に親権を獲得したいといった場合は、法律の専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。
また、「夫婦円満調停」という、裁判所の調停手続きを利用する方法もあります。これは、夫婦が円満な関係を築けなくなった場合に利用できます。調停では、調停委員会の助言を受けながら、元の円満な夫婦関係へと修復するための話し合いが行われます。また、この調停手続は離婚するか迷っているときにも利用可能です。この調停で離婚が合意されれば、引き続き離婚の条件を話し合うこともできます。
熟年離婚の進め方は?離婚後に財産分与の請求も可能
通常の離婚と同じように、熟年離婚の場合も、協議離婚・離婚調停・離婚裁判の3つの離婚方法があります。まずは、相手と相談の上、協議離婚という形をとるのが基本です。話し合いがまとまった場合には、離婚協議書を作成します。
子どもが成人していることが多い熟年離婚では、子どもの親権や養育費よりも、夫の退職金や年金など財産分与が問題となることが多いよう。財産分与の合意後に離婚するのが一般的ですが、離婚後2年以内であれば離婚成立後に財産分与の請求をすることも可能です。
もし話し合いでの解決が難しい場合には、調停や裁判をすることになります。なお、裁判の実施には以下のような離婚理由が必要となります。いずれの場合も、非常に複雑かつ難しい手続きであり、弁護士など専門家に相談すべき場合が多い点には注意が必要です。
- 3年以上の生死不明
- 回復見込みのない強度精神病
- 悪意の遺棄(正当な理由なく夫婦の同居・協力義務を履行しないこと)
- 不貞行為
- その他、婚姻を継続しがたい重大な事由(暴行、浪費、犯罪、性格の不一致など)
離婚後に後悔しないためにも、熟年離婚は慎重に!
熟年離婚は、気力・体力を消耗させるといいます。いつまでも円満な結婚生活・夫婦生活を送れるのが一番ですが、どうしても別離が必要な場合は、離婚を切り出す前に十分な気力や体力を蓄えておくこと、そして、離婚後の生活を想定しておくことが重要です。
熟年離婚は、慎重に検討しなければ離婚後に後悔することにもなりかねません。一人の男性・女性としてのそれぞれの今後の生活、子どもへの影響も考えながら、しっかりと考えた上で、後悔のない人生を歩めるような選択をしてください。
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