茶葉のうま味がグンと引き立つ

岡野てるみさん直伝!おいしい紅茶の淹れ方のポイント

公開日:2020.02.05

更新日:2022.11.01

「すてきな紅茶の先生がいるのでご紹介したいです」と、編集部に一通のお手紙が届きました。その先生は、うれしいことに雑誌「ハルメク」の読者でもありました。30年間紅茶の世界で活躍してきた岡野てるみさんに、おいしい紅茶の淹れ方を聞きました。

フランス流やイギリス流ではなく、自分流を楽しむ

岡野てるみさん

私が紅茶と本気で向き合い始めたのは今から30年以上前。フランスの紅茶ブランド「フォション」のパッケージデザインを手がけたのです。

でも販売先に「このパッケージの紅茶はどんな味?」と聞かれて答えられず、顔が真っ赤になりました……。フォション=おいしい紅茶ブランドというイメージだけで、肝心の味を知らずにデザインしていたのです。

それからは紅茶をたくさん飲みました。そして、フランスまで行き、わかったのが水質の違いでした。水が違えば、抽出時間が異なります。それにワインのようにどっしりとした味わいを好むフランス人と日本人では味覚も違います。

フランス流の淹れ方をしても、イギリス流の淹れ方でも、日本ではおいしく飲めません。私たちは日本流の楽しみ方をしないといけないのだと気付き、それを追求しました。

3年前、70歳になりフォションの仕事は辞めました。そして日本流より一歩進んで、“自分流”に淹れて飲む楽しさを伝えることを始めました。自分流とは茶葉の産地や個性を知り、自由に混ぜて飲むことです。

今もブランドで紅茶を選ぶ人は多いですね。でも、そこから自由になれば、紅茶のある生活がもっと豊かになるはず。今回はそのための第一歩として「基本の紅茶の淹れ方」を紹介させてください。

まずは基本の紅茶の淹れ方をマスター!

おいしい紅茶の淹れ方

日本茶の淹れ方なら、祖母に教わったという方は多いでしょうが、おいしい紅茶の淹れ方をきちんと家で教わった方は、あまりいらっしゃらないと思います。

日本茶のおいしさを引き出す淹れ方があるように、紅茶の淹れ方にもポイントがあります。これから紹介する7つのことを実践してみてください。いつもの茶葉が驚くほどおいしく飲めますよ。


1.茶器はよく温める
茶葉の開きをよくするためにはお湯の温度を下げないことが大切です。そのためにも、ティーポットはあらかじめよく温めておきましょう。また、ティーカップも温めておくのが基本。ぬるい紅茶は絶対においしくありません。


2.茶葉はカップ1杯につきティースプーン山盛り1杯
ティーカップ1杯は、およそ150ml。季節にもよりますがティースプーンに山盛り1杯程度の茶葉、3gが目安です。渋味のある味が好きな方も茶葉の量は一緒。抽出時間を長く取って調整します。


3.水は汲みたての水道水が一番
日本の軟水は紅茶を淹れるには最高! また茶葉をしっかり開かせるには、水がたっぷりと酸素を含んでいるのがポイント。つまり汲みたての水道水を使うのがコツ。ペットボトルの水の場合は、よく振って空気を含ませてからお使いください。


4.湯の温度は沸騰するちょっと手前
大きな気泡がぶくぶくとやかんの底から上がってきたら適温。約98度です。温度が高い方が茶葉のおいしさを引き出してくれますが、沸かし過ぎは禁物。水中の酸素が抜けてしまいますから。


5.湯をポットに注ぎ入れるときは勢いよく

勢いよく注ぐ

沸かしたての湯を、茶葉を入れたポットに注ぎます。「茶葉よ、開け!」と思いながら勢いよく注ぐのがポイント。日本茶のように静かに注ぐと、茶葉本来の味を引き出すことができません。
 

6.ポットで、茶葉がジャンピングするのを楽しむ

茶葉がジャンピング

茶葉の種類や大きさで抽出時間は異なるので、「砂時計で3分間」でなく、茶葉の開きは目でご確認ください。ポットでジャンピングしやすいよう、内部の茶こしは使わずに。茶葉が開ききったら、抽出は完了。茶葉は開くとポットの底に沈んでいきます。


7.最後の一滴まで注ぐ
紅茶のうま味は、最後の一滴にまで凝縮されています。いわゆる“ゴールデンドロップ”と呼ばれるものです。ここまで丁寧に淹れてきたのですから、最後までしっかり注ぎ切りましょう。

出がらしの茶葉はザルにあげて干せば、除湿・消臭用に使えて無駄がありません。100円均一の店で売っている不織布のお茶パックに入れて、靴の中にポン。紅茶のカテキン成分は殺菌作用があるので、飲み切れなかった紅茶や2煎目の紅茶はうがいに使ってもいいでしょう。

紅茶の代表的な産地と茶葉の特徴を知ろう

茶葉

茶葉の種類は星の数ほどあります。紅茶は熱帯・亜熱帯地方の高地で主に栽培されています。主な生産国は、インド、スリランカ。その他にも、中国やアフリカのケニアが有名な産地です。

味の特徴は、インドはうま味がありますが個性的で、スリランカはマイルドで万人向けです。紅茶は農産物なので、同じ産地でもその年の気象によって味にばらつきが出ます。近年、私がおすすめしているのはアッサムです。

茶葉ごとに特徴があるので、いろいろ試して好みのものを見つけてみてくださいね。

インド産でおすすめの茶葉

茶葉

  • ダージリン……最もブランド化された紅茶の種類。香りが高く、渋味があります。カフェインは強めです。
  • アッサム……香りが芳醇で味は甘味があり、コクがあります。紅茶の色は鮮やかなオレンジできれいです。
  • ニルギリ……インド産ですが、スリランカ産紅茶のように渋みが少なく柔らかな味。香りは爽やかです。

スリランカ産でおすすめの茶葉

スリランカ産でおすすめの茶葉

  • ウバ……インド産とは違って、爽やかな味です。華やかでフローラルな香りで人気。
  • ディンブラ……タンニンが少なく、紅茶のコクとなる渋味やクセがなく、あっさりと飲みやすいです。
  • キャンディ……キャンディは、スリランカで最初に紅茶が栽培された土地。柔らかな味で飲みやすいです。

基本の紅茶の淹れ方、好みの茶葉がわかったら、いよいよ自分流に楽しんでいきましょう。自分流に紅茶を楽しむ極意は、茶葉をブレンドして好みの味を作ること。

ブレンドの仕方は簡単です。複数の種類の紅茶を飲み比べて、好みのものが見つかったら、それをベースにもう1種の茶葉とボールの中で混ぜます。茶葉の分量はベースになるもの2に対して、後から入れる茶葉は1にします。

ブレンドに正解はありません。試しながら、自分だけの紅茶を作ってみてください。

時間がないときはティーバッグもおすすめ

ティーバッグ

今回は茶葉を使った淹れ方をご紹介しましたが、時間がないときは、ティーバッグを使っても問題ありません。

カップ1杯につきティーバッグ1袋が基本です。ティーバッグは細かい茶葉で味が出やすいので、短い抽出時間でOK。茶器を温め、湯を注いでからティーバッグを入れます。

紅茶本来のうま味が出なくなるので、抽出中にティーバッグを揺らすのは禁物です。ソーサーや小皿でふたをして蒸らして待ちましょう。抽出時間はパックの表記を参考にしてくださいね。
 

教えてくれた人…岡野てるみさん

1945(昭和20)年生まれ。健康管理士一般指導員、健康管理能力検定1級。87年、テルミプランニング株式会社を設立。以来、フランスの紅茶ブランド「フォション」の輸入プロモーションに30年ほど携わる。現在は各地で紅茶教室を開き、紅茶の魅力を伝えている。ちなみに、ハルメク読者歴は14年。


取材・文=井口桂介(ハルメク編集部)、イラスト:服部あさ美

※この記事は2019年3月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
 

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