50~60代の熟年離婚が増加の背景とは?

ビルゲイツの離婚で注目!増加するグレイ離婚って何?

公開日:2021.06.20

マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツ氏が、長年連れ添った50代の妻メリンダさんとの熟年離婚を発表し、大きなニュースとなったのは記憶に新しいところです。二人の離婚とともに話題になった「グレイ離婚」とは一体何なのでしょうか?

ビルゲイツ夫妻の離婚で注目が高まった「グレイ離婚」事情

2021年5月初旬、米マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツ氏が、長年連れ添った50代の妻メリンダさんとの離婚を発表しました。世界有数の大富豪であり、慈善活動にも熱心。夫婦仲も安定しているように「見えた」二人の熟年離婚に対して、インターネット上では驚き、共感、好奇心の入り混じった大きな反響がありました。

離婚発表時の共同声明では、夫婦で次のライフステージを共にすることができなくなったとつづっていますが、社会への大きな影響力を持つ二人の離婚は、思わぬところに波及しました。

英語圏では、50~60代の熟年離婚をグレイの髪色にちなんで「gray divorce(グレイ離婚)」と呼んでいますが、2021年5月には検索エンジンで「グレイ離婚」の検索頻度が急上昇するという現象が起きました。また、ビルゲイツ夫妻の離婚に関連付けて「グレイ離婚」をテーマとしたニュースも数多く配信されました。

今回は日本でも他人事ではない、アメリカの「グレイ離婚」事情に着目していきましょう。

シニア期のスタートが長く続いた夫婦関係の「転機」となる理由

近年、アメリカでは婚姻率・離婚率がともに低下傾向にありますが、50~60代の離婚率は別です。

特に1990年からの約20年間は、50歳以上の離婚率が倍増。この現象について「gray divorce revolution(グレイ離婚革命)」と報じられた時期があり、50~60代が「家族の変化の最前線」にいると言われています。

この世代の離婚率の上昇については、いくつかの要因があるとされています。

一つは、慌ただしい子育て期間がひと段落し、「今後の人生」についてじっくりと考える時間ができること。

夫婦が子育て後の空虚感に襲われる「空の巣症候群」に直面したり、家計の問題を抱え込んだり、パートナーの裏切りに遭ったりして、「自分は本当に今のパートナーと余生を過ごしたいのか?」という葛藤が離婚につながることも……。

二つめは、個人の幸せや喜びを重視する価値観が広がっていること。女性の経済力が上がり、ひと昔前よりも「離婚」という選択をしやすくなっていることも離婚率の増加に影響しているようです。

アメリカは、アジア圏のように「結婚を通じて家と家が結びつく」という意識が希薄で、「愛」による結びつきを重視する国。長い夫婦生活の間にさまざまな不満が蓄積して愛がすり減っている場合、離婚の動機が刺激されやすくなるのかもしれません。

「グレイ離婚」の男女別デメリットとは?

さて、自由、余生、第二の人生、新しいパートナー、私らしい暮らし……など、ポジティブな言葉とともに語られることもある「グレイ離婚」ですが、『The Wall Street Journal』誌は、ネガティブな側面も報じています。

女性の場合は、婚姻期間に子どもや友人と充実した人間関係を築いているので「社会的なつながり」がある程度保たれる反面、経済的なリスクが高まりやすくなるとのことです。男女間、業種間、人種間での賃金格差はいまだに根強く残っており、女性が離婚後の生活を安定させることが難しくなるケースもあるようです。

一方、男性の場合は離婚時の経済的なダメージは女性よりも少ないものの、「孤独」という問題を抱えやすい傾向があるそう。

ビル・ゲイツ元夫妻のように潤沢な老後資金と広い交友関係がある場合を除き、離婚をすることで「自由で豊かな生活」が簡単に実現するわけではなさそうです。

それでは、ビル・ゲイツ夫妻の「グレイ離婚」に対し、英語圏ではどのようなリアクションがあったのでしょうか。離婚発表翌日のニュースには、こんなコメントが書き込まれていました。

<悲しいことね。結婚というものは、自分ばかり優先することではなく、お互いへの献身や経験の共有を積み重ねていくことなのに>

<一般人には全く参考にならない離婚例だ。ビルとメリンダは、別れるだけのお金を持っているんだから。普通の人が50代で離婚することになったら、財産は減るし、結婚してくれる人はいないし、不慣れな場所で人生を始めなければならない残酷な運命が待っているよ>

<年をとった男は、“トロフィーワイフ”が欲しくなるんだろうね>

<年をとってからの離婚理由は、若い頃と全然違うよね>

<50を過ぎるとやっと離婚する余裕が出てくるのかもね。若い頃は子どもを育てるためにものすごくお金がかかるから、夫婦で分割するほどの貯蓄なんてない。下流階級と中流階級は既にボロボロだよ>

2021年6月に入ってからは、ビル・ゲイツ氏のゴシップ記事が多く配信されていることから、最近はメリンダさん寄りのコメントが目立っています。自分の苦しい経済状況を鑑みて、元夫妻の桁外れの財力をうらやむ声も多くありました。

コロナ禍後に「グレイ離婚パンデミック」が起こる可能性も!?

今回は「グレイ離婚」についてお届けしました。

長年にわたる夫婦関係の中で、50~60代は関係が揺らぎやすい時期であるようです。

最近では、コロナ禍の経済不安によって離婚を思いとどまった夫婦が、離婚相談に出向くケースが増えているそう。「グレイ離婚」というキーワードが突如注目されたことを踏まえると、コロナ禍後の離婚率に何らかの変化があるかもしれませんね。

■参考サイト

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北川和子

家族・家に関心を持つライター。会社員時代には海外営業・カタログ翻訳を担当。筋トレ記事や美容記事も多く手掛けおり、様々なフィットネス法を試している。東京外国語大学卒。

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