カラーリング、グレイヘアなど広がる選択肢

白髪はブロンドに染める!アメリカ人の白髪染め事情

公開日:2020.09.18

アメリカ・ニューヨーク州に在住のライター黒田基子さんが、アメリカの暮らしを伝えます。 日本でも定着しつつある「グレイヘア」。実はアメリカのシニア女性は、白髪が増えてきたらブロンドに染めることが多いそう。

白髪をブロンドに染めている人が、実は多い

ブロンドに染めるグレイヘア女性

西洋人といえば金髪というイメージがありますが、碧眼はともかく金髪(ブロンド)の白人というのは世界的にそう多くはありません。ブロンドは北欧の国々には数多くいますが、アメリカでは生まれながらのブロンドは白人の5%に過ぎないといわれています。

しかし、アメリカのテレビを見ていると歌手や女優からニュースキャスターまで、白人女性の半分くらいはブロンドという印象があります。つまりアメリカ人のブロンドはほとんどが染めたブロンドということです。

アジア人と異なり、自然な髪の色のバリエーションが多い白人にとって、髪の色は髪型以上に大きなイメージチェンジの要素です。ですからアメリカの美容院にはヘアスタイリストと並んで専門のカラーリストがいるところが多く、髪染めがヘアカットと同じような位置づけになっています。

はたから見れば自然の色か染めた色かはわからないので、染めることへの抵抗も少なく、若い頃から自分のなりたいイメージや流行に合わせて髪型を変えるように、気軽に髪の色を変えます。

白髪をブロンドに染める理由

その中でなぜ芸能人にブロンドが多くなってしまうかというと、ブロンド女性は魅力的でセクシーというイメージがあるからです。「紳士は金髪がお好き(Gentlemen Prefer Blondes)」のマリリン・モンローの時代の感覚は今もなお健在なのです。ちなみにマリリン・モンローのブロンドも染めたもので、本当は赤毛でした。

さて、ショービジネスと並んでブロンドがやたらと多いのが高齢者層の女性です。ブロンドは白髪染めとして最もポピュラーなのです。これはシニア女性がセクシー路線を目指しているというわけではなく、色素のない白髪はブロンドに染めやすく、伸びてきた白髪も目立たないという現実的な理由と、明るい髪色にした方が若く見えるという一般的な思い込みによるものだと思われます。シニアコミュニティーはブロンドだらけです。

 

「グレイヘア」よりも「シルバーヘア」がかっこいい

白髪染め

が、最近、日本と同様にあえて白髪を染めない自然派のシニアが増えてきています。白髪は英語でグレイヘア(gray hair)と言いますが、グレイと言わずにシルバー(silver)と言い換えられることが多くなりました。日本だと高齢者のイメージのある「シルバー」が、逆にアメリカでは「グレイ」よりおしゃれなのです。

実はこのシルバーヘアは若い人の間でも2018年あたりから、個性的で程よくとんがったファッションとして流行の最先端をいくヘアカラーとなっています。若い人には手間のかかるシルバーヘアも白髪が多い髪なら楽勝です。というわけで部分的な白髪は隠すのではなく逆に全体をシルバーに染めてしまうおしゃれな中高年も増えています。

 

新型コロナをきっかけに「もう染めなくていい」と思う人が急増

自然なシルバーヘアのトレンドに拍車をかけたのが新型コロナウイルスの流行です。3月半ば頃から急速に感染が広がったアメリカでは4月から夏になるまで、全国の美容院がほぼ完全に休業していました。そのため美容院で髪を染めることもできなくなりました。

仕事も在宅になり、出掛けるところもないため、白髪を放置する人が激増。最初は違和感があった自分の白髪まじりの姿も、見慣れてしまえばどうということもありあません。

この時期、在宅を余儀なくされていた芸能人の間で、白髪交じりのヘアを自撮りしたインスタグラムへの投稿が増えたことも話題を集めていました。これまで完璧なヘアカラーを保っていた歌手や女優がゴマ塩だったり、根元だけが白かったりする姿をアップしているのですが、そこは芸能人のこと、それなりにかっこいいのです。当然、一般人の間でも「もう白髪染めしなくていいよね」と思う人が急激に増加しました。

シニアコミュニティーからブロンドが消える日も近いかもしれません。

 

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黒田基子

くろだ・もとこ 1960(昭和35)年、東京生まれ。ライター。88年よりアメリカに留学し、30年近くニューヨーク郊外で暮らす。ブログ「ニューヨークsuburban life」東海岸の暮らし、食べ物、ときどき政治https://nyqp.wordpress.com/

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