グレイヘアで心軽やかに

グレイヘアへの移行期の思い出は、人生を彩る1ページ

公開日:2019.07.18

更新日:2022.02.15

秋田市在住の児童書ノンフィクション作家・池田まき子さんが、グレイヘアをテーマにつづるこの連載。今回は、「グレイヘアになりたい!」と思った人の多くが悩む“移行期”の乗り越え方についてです。

グレイヘア移行期の乗り越え方
グレイヘア完成時の池田さん(2014年夏撮影)

移行期への不安

2018年の「流行語大賞」にノミネートされた「グレイヘア」。いまだに、テレビや新聞などで、頻繁に紹介されています。それに伴って、グレイヘアにしたいという女性が徐々に増えていますが、多くの人が最も知りたいと思っていること、それは、「移行期」についてではないでしょうか。

「グレイヘアにしたいけれど、移行期のことを考えると憂鬱」「どんな工夫をすれば、うまく乗り越えられるのか」……。このような不安を持つ方がたくさんいます。実際、「移行期を我慢できず、挫折した」という人も少なくありません。

そこで、今回は、私がグレイヘアにした5年前(2014年、50代半ば)にさかのぼって、当時のエピソードと合わせてご紹介していきたいと思います。
 

移行期の「三毛猫」って?

黒髪時代の池田さん
黒髪時代の池田さん

白髪を染めて2〜3日も過ぎると、根元から白髪がひょっこり。

「こんにちは〜。また出てきちゃいました。すみませんねえ……」

主の私をバカにしたような、申し訳なさそうな声が聞こえるような気がします。

それからは、毎日毎日、髪の毛をかき分けては生え際をチェック……。2mmが5mmに、5mmが1cmに……白髪がどんどん伸びてきます。鏡をのぞいては、うんざり。ため息をつく回数が、日ごとに増えていくのです。

けれども、グレイヘアにすると決めた途端、髪の毛をチェックする目が変わりました。

「まだ1cm……あ〜あ、もっと早く伸びないかな」

1mmでも2mmでも、とにかく、白髪が早く伸びてほしいと願っているのです。白髪を染めていた時とは全く逆。この変わり様には、自分でも驚くしかありませんでした。

でも、問題は、白髪の長さだけではありません。「三毛猫ちゃん」が待ち構えているのです。この「三毛猫」が何を意味しているのか、わかりますか?

黒髪と白髪、そして、染めた色が抜けて茶色っぽくなった髪……この3色の混じった状態が、「三毛猫」にたとえられているのです。かわいい表現なのですが、実際の頭の色といえば、愛らしさとは少し違います。この時期、グレイヘアにするのを諦めてしまう人が多いことには、うなずくしかありません。

「三毛猫」を早く卒業したい!

茶髪の混じった「三毛猫」状態
茶髪の混じった「三毛猫」状態

私が白髪染めをやめたのは、オーストラリアのキャンベラに在住していた2014年の年末。56歳のとき。家でパソコンを使って執筆するのが仕事なので、「三毛猫」状態を見られる心配はなく、外出先で冷たい視線を感じることもありません。個性が尊重されているオーストラリアで、「染めた方が若く見える」などと言われることはないのですから……。

けれども、できることなら、「三毛猫」から早く脱したい……そこで、美容院で、いつもより短めにカットしてもらうことにしました。

でも、実はこの時、坊主にしようかと考えていたのです。髪の毛を短くすることに全く抵抗がない上、「白黒」をはっきりつけたい性格の私は、「茶」が混じっているのが、どうしても嫌だったんです。ある日、娘と息子に相談してみました。

私「いっそのこと、坊主にしてしまおうかな。どう思う?」

娘 「そんなに焦らなくても、自然にグレーになるのを待てばいいんじゃないの?」

私「でも、この三毛猫ちゃんを、早く卒業したいのよね。一生に一度のチャンス。お母さんの坊主頭、面白いと思わない?」

息子「う〜ん、そこまでしなくてもいいと思うよ。もう少しの辛抱なんだから……」

私「あら〜残念! 二人とも反対するとは思わなかった……」

ベリーショートのグレイヘアは、半年で完成!

茶髪を早くなくしたいと、いつもよりさらに短いベリーショートにした時
茶髪を早くなくしたいと、いつもよりさらに短いベリーショートにした時

20代の娘と息子の意見に、坊主頭を諦めることにした私は、移行期を乗り切るために、帽子をかぶったり、ヘアーバンドで変化をつけたりして楽しむことにしました。

けれども、解決策はたくさんあります。脱色をしたり、洗えば落ちる染料を使ったりする方法。かつらを活用するというのも一案。また、黒髪を白髪に見せる「ヘアワックス」を試すという方法もあるでしょう。

ベリーショートの私は、特に難儀することなく、6〜7か月でグレイヘアが完成しました。もし、中途半端な状態から早く逃れたいという方は、髪を短くして、いつもと違うヘアスタイルに挑戦するのはどうでしょうか。

憂鬱といわれるこの時期。どんなふうに過ごせるのかは、気持ち次第。一生に一度の機会を、ぜひ、大胆な、面白いチャレンジで乗り切ってはいかがでしょうか!
 

“三毛猫”時代の池田さん。飼い猫の三毛猫ちゃんを抱っこして
“三毛猫”時代の池田さん。飼い猫の三毛猫ちゃんを抱っこして

移行期の思い出を大切に

グレイヘアになって5年目ですが、一つだけ心残りがあります。それは、移行期の写真を、もっと撮っておけばよかったということ……。

私がグレイヘアにしようと思い立った50代半ばは、家族で一緒に写真を撮ることもめっきり減り、ましてや、自分だけの写真を撮るなど、ほとんどありませんでした。

けれども、ありのままの自分を受け入れ、年を重ねることを楽しんでいこうと考え始めたこの頃は、自分の人生を見つめ直す、貴重な機会だったと思っています。

そこで、これから、グレイヘアを目指す方々には、新しい自分と出会うための記録としても、ぜひ、移行期の写真をたくさん撮っておくことをおすすめします。

5年後、10年後に、それらの写真は、グレイヘアにすることを決意した時のことを思い出させ、きっと、あなたの気持ちに寄り添ってくれるはず。きっと、あなたの気持ちを豊かにしてくれるはず。移行期の思い出は、かけがえのない人生の1ページとして、ずっとずっと彩りを添えてくれるのではないでしょうか。

次回は、「グレイヘアに合うメイク」がテーマです。


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池田まき子

児童ノンフィクション作家。オーストラリアに30年在住後、2018年春に秋田市に活動拠点を移す。著書に『クニマスは生きていた!』(汐文社刊)、『自由への道―奴隷解放に命をかけた黒人女性 ハリエット・タブマンの物語』(学研刊)など。秋田在住のグレイヘアの女性でつくる「グレイヘア秋田」代表。

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