身近な病気、眼瞼下垂を知ろう(1)

まぶたのたるみが不調の原因に!? 眼瞼下垂とは?

公開日:2020/02/05

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「目と眉毛の間が離れた」「まぶたがたるんできた」。そう思った方は、まぶたの病気「眼瞼下垂(がんけんかすい)」かもしれません。誰もが老化で「眼瞼下垂」になる可能性があります。眼瞼下垂について原因・症状・手術などの対策方法を医師に教わりました。

眼瞼下垂を知ろう

そのまぶたのたるみ、もしかして眼瞼下垂かも?

目元がぼんやり

「何だか目元がぼんやりして、顔の印象が変わった」と感じたことはありませんか? 50歳を過ぎると、うまくまぶたが上がらず目元がたるんだ状態になり、目が小さくなった気がするという人が増えるそうです。このほか、まぶたのくぼみや、しわ、クマ、くすみなど、年齢とともに目元の悩みは次々現れます。

実はこれ、大人なら誰でもなりうる病気の一つ、「眼瞼下垂」が影響しているかもしれません。

芸能人が治療したことでもよく名前を聞くようになった、「眼瞼下垂」。どんな病気?治療法は? 美容に特化した形成外科としてよく知られる、自由が丘クリニックの医師・佐藤英明さんに教えてもらいます。

眼瞼下垂の種類は大きく分けて2つ

まぶたの皮膚がたるむことでも「眼瞼下垂」に
まぶたの皮膚がたるむことでも「眼瞼下垂」に

年を重ねることで誰もがなりやすい「眼瞼下垂」の場合、その原因は大きく二つに分けられると佐藤さんは言います。

「先天性、外相や異物、脳梗塞、神経麻痺や交感神経がうまくはたらかないことが眼瞼下垂の原因になる場合もありますが、50代以上の女性がなりやすい眼瞼下垂は、『皮膚弛緩性』『腱膜性』のものがあります」

まず「軽度の眼瞼下垂かも?」という人に多いのが、加齢によってまぶたの皮膚がたるみ、視野が妨げられる「皮膚弛緩性」の眼瞼下垂。「偽眼瞼下垂」とも呼ばれます。

“偽”とつくから誤解を受けやすいけれど、実はれっきとした病名。加齢によるまぶたのたるみ、眉下の皮膚のたるみ以外にも、顔面神経麻痺が原因でなることもあるそうです。

そしてもう一つが、保険適用の治療が受けられる「腱膜性の眼瞼下垂」です。

腱膜性眼瞼下垂は、保険適用の治療ができる

腱膜性の眼瞼下垂の場合、目の大きさや形が左右非対称になる場合も
腱膜性の眼瞼下垂の場合、目の大きさや形が左右非対称になる場合も

「腱膜性の眼瞼下垂」を正しく理解するために、まずは目がなぜぱっちり開くのか? その仕組みを見ていきましょう。

「人の目は、まぶたを閉じることでほこりや光などの異物や刺激から保護され、また、まばたきをすることで、涙を出して目についた汚れを洗い流したり、目の乾きを防いだりしています。このまばたきをするときに、まぶたを引き上げる筋肉を眼瞼挙筋といいます」(佐藤さん)

眼瞼挙筋

「まぶたの後ろにある眼瞼挙筋(赤)は、まぶたの先端に近付くと眼瞼挙筋腱膜(青)と呼ばれる薄く硬い膜になります。この腱膜は、まぶたのふちの瞼板(けんばん・黄色)という板状の組織に付着していますよね。目は、この瞼板(黄)が、眼瞼挙筋(赤)の縮みによって持ち上げられることで開く仕組みになっています。

そのため、眼瞼挙筋(赤)と瞼板(黄)をつなぐ眼瞼挙筋腱膜(青)が、加齢とともに伸びてしまったり切れたりすると、上まぶたが上がらず、目が開かなくなってくるのです」(佐藤さん)

イラストの青い部分「眼瞼挙筋腱膜」が伸びたり、ゆるんだり、切れたりすることで、上まぶたが垂れる、眼瞼下垂に。
イラストの青い部分「眼瞼挙筋腱膜」が伸びたり、ゆるんだり、切れたりすることで上まぶたが垂れる、眼瞼下垂に。

「眼瞼挙筋(赤)の筋力は加齢によって低下します。そのため、50代を過ぎると眼瞼下垂になりやすくなります。顔の印象も変わりますし、症状が進むと、視界が遮られて日常生活に支障が出ることもあるので、たかがまぶたのたるみ、と侮ってはいけません」(佐藤さん)

たるみ、くぼみ……、眼瞼下垂による見た目の変化

まぶたのたるみだけでなく、眼瞼下垂が進むと、二重の幅や線が乱れ、目元と顔の印象が変わってきます。佐藤さんによると、実際にクリニックを訪れるのは、眼瞼下垂で生活に支障が出たケースよりも、見た目の変化を気にしている人がほとんどだそう。

左が、正常な目の状態。右が、腱膜性の眼瞼下垂になった状態。
左が、正常な目の状態。右が、腱膜性の眼瞼下垂になった状態。

「まぶたの奥、眼瞼挙筋の上に脂肪(イラストの薄ピンク部分)がありますよね。眼瞼挙筋がゆるんで伸びると、この脂肪がどんどんまぶたの奥に引っ込んでいくため、まぶたにくぼみができてしまうんです。

まぶたの脂肪がなくなってくぼんでいくと、まず、二重の幅やラインが変わってきます。そして、まぶたの皮膚の折りたたみが増えて重なっていき、二重が三重、四重になっていきます。結果、目もと全体の印象が大きく変わってしまうのです」(佐藤さん)

また、眼瞼下垂は悩ましい目もとのシワの原因になることも。

目を開くときに顔の筋肉を使っていると、シワができやすくなる
目を開くときに顔の筋肉を使っていると、シワができやすくなる

「通常、まばたきはシャッターのような上下運動で行いますが、眼瞼下垂になると、額や目の周りの筋肉などを使って目を開け閉めしようとします。目を見開いて視野を確保しようとすると、額や眉間に力を入れたり、眉下を持ち上げようとして筋肉を使ったり。その状態を紙に例えると、目を開ける時はクシャクシャに丸め、目を閉じるときにもう一度伸ばしているようなものです。だから目の周りにたるみやシワができてしまうんです」(佐藤さん)

シワに頭痛にうつまで!? 眼瞼下垂が招く不の連鎖

眼瞼下垂が招く不の連鎖

眼瞼下垂で変わるのは、顔の印象だけではありません。健康にもさまざまな影響が出て、ときには深刻な症状を引き起こすこともある、と佐藤さん。

「頭の筋肉とつながっている額の筋肉を使って目を開けようとしたり、視野が狭くなると顎を持ち上げて見ようとすると、首の後ろの筋肉(僧帽筋)が常に緊張した状態になります。緊張すると筋肉に力が入ってしまうため、シワが増え、頭痛や肩こりを招きます。

また、眼瞼挙筋が使えない状態で目を開けようとすると、交感神経が優位になる筋肉である「ミュラー筋」を使い続けることになります。緊張と疲労で不定愁訴が生じやすく、不眠やうつ、自律神経失調症などにつながるなど、不調のスパイラルに陥ってしまいます」

術後改善した症状(一部抜粋)

症状 患者数/200
眼精疲労 179
肩こり 143
緊張型頭痛 139
うなじのコリ 122
前兆のない片頭痛(後頭部)  103
前兆のある片頭痛(目の奥、こめかみ) 60
不眠 59
うつ病 10

連続した手術症例 200例、術後に最も改善した症状3つを聞いたアンケートの結果を示す。信州医誌、52⑵:129~130,2004 久 島 英 雄 (信州大学形成外科)

上のグラフは、眼瞼下垂の手術をした患者200名に、術後アンケートを取った結果です。眼精疲労から、肩こり、頭痛といった体の不調や、不眠、うつ病が改善したと答えた患者がいます。

見た目の変化に気分の落ち込みから体調不良まで、眼瞼下垂が招く負の連鎖。「眼瞼下垂かも?」と思ったら、たかがまぶたのたるみなどと軽視しないで、医師に相談してみて。

次回は、眼瞼下垂のセルフチェックと眼瞼下垂を招く生活習慣についてお伝えします。
 

佐藤英明(さとうひであき)さんのプロフィール

佐藤英明(さとうひであき)さん

美容外科や美容皮膚科、美容内科、教授外来、エステ部門などを完備する「自由が丘クリニック」院長。北里研究所病院の形成・美容外科部長を長年務めてきた。吸引や注入、たるみ治療、目元の手術など、才能豊かで幅広く活躍するオールラウンダー。また、日本で数名しかいないボトックス・ヒアルロン酸の注入指導医。

 

取材・文=田中優子
 

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