がん細胞だけを狙い撃ちする!光免疫療法とは
2024.10.032024年09月26日
名医が教える「命を諦めない」最新治療!#1
効果が高く体にやさしい、新しいがん治療
毎年多くの人の命を奪う、がんと心臓病。治療法によっては体への負担が重く、治療を諦めてしまう人も少なくありません。そこで今注目されている新治療法について、開発した2人の医師に話をお聞きしました。まずはがん治療から紹介します。
教えてくれた人:小林久隆(こばやし・ひさたか)さん
1961(昭和36)年、兵庫県生まれ。京都大学医学部卒業。医学博士。米国国立衛生研究所・国立がん研究所(NIH・NCI)分子イメージングブランチ主任研究員。光免疫療法の研究・開発によりNIH長官賞などを受賞。2022年から関西医科大学附属光免疫医学研究所所長・特別教授も務める。著書に『がんの消滅』(新潮社新書)、『がんを瞬時に破壊する光免疫療法』(光文社新書)など。
誰かの役に立ちたい思いが生んだ新治療法
日本人の2人に1人がかかり、4人に1人が亡くなるという、がん。死因1位のこの難敵に立ち向かう新治療法として今、大いに期待されているのが「光免疫療法」です。
光の力と免疫の仕組みを利用して、がん細胞だけを攻撃し、正常細胞にはダメージを及ぼさない、体にやさしい治療法。米国国立衛生研究所・国立がん研究所(NIH・NCI)主任研究員で医師の小林久隆さんが開発しました。
「安全で効果の高いがんの治療法を創りたいと、日本での研究も含め30年ほど取り組んできました。光免疫療法は2020年9月から世界に先駆けて日本で治療がスタート。現在は再発の頭頸部がんのみが対象ですが、今後はいろいろながんでも受けられるようになるはずです」と語ります。
注目される「5種類目のがん治療法」
光免疫療法は、手術療法、化学療法、放射線療法、免疫療法に続く、がんの第5の標準治療(健康保険適応)と位置付けられています。
手術療法
がんの第1選択となる治療法。がんを完全に切除できれば根治が可能。ただし切除によって臓器の機能が失われたり、後遺症が残ったりすることも。
化学療法
がん細胞を破壊したり増殖を抑えたりする抗がん剤を用いて治療する。正常細胞にも薬が作用するため、嘔吐や脱毛などさまざまな副作用を伴いやすい。
放射線療法
X線などの放射線を照射して、がん細胞の遺伝子に傷をつけ、死滅させる。周囲の正常細胞にもダメージが及ぶため、皮膚の炎症や脱毛などの副作用も。
免疫療法
がん細胞を攻撃する免疫の働きを助ける「免疫チェックポイント阻害薬」がある。ただし効果の出る人が限られる、一部で重い副作用がある、高額などの課題も。
光免疫療法
正式名称は「アルミノックス治療」。光に反応する薬を投与し、近赤外線を照射してがんだけを破壊する。正常細胞には害を与えないので、副作用は比較的軽微。
「光免疫治療法」4つのポイント
メリット
正常細胞にはダメージを与えず、狙ったがん細胞だけを壊すことができる。治療効果と安全性が高い。がんに対する免疫の活性化も。
デメリット
現在は再発頭頸部がん(鼻や口腔、咽頭などのがん)の患者しか受けられない。むくみや痛み、皮膚症状などの副作用が出ることがある。
費用
健康保険が利く。1回の治療にかかる費用は600万円程度。高額療養費制度を使うと、患者負担の目安は10万~20万円程度。
治療を受けるには
治療の適応になるかどうか、まずは主治医に相談を。現在、全国150以上の医療機関で実施。病院はこちらから調べられます。
※この治療は保険診療でのみ受けられます。
次回は最新治療である「光免疫治療法」についてさらに詳しく解説します。
取材・文=佐田節子、撮影=鈴木愛子、中川まり子、イラストレーション=落合恵、構成=大矢詠美(ハルメク編集部)
※この記事は、雑誌「ハルメク」2023年12月号を再編集しています