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- 岩波ホール閉館が悔しい
コロナウイルスが、また一つ大切なものを奪いました。国内外の良質な映画を上映していた岩波ホールもその一つ。経営難のため2022年7月30日に閉館し、とても残念です。感謝の気持ちとともに、若い頃に通った記憶がよみがえってきました。
映画へのあこがれ
コロナ禍でも映画館通いをやめなかったほど映画好きな私ですが、両親が映画好きだったわけではありません。「東映まんがまつり」などの子ども向け興行に、同居していた叔母が時々連れて行ってくれた程度です。
映画へのあこがれがつのったのは、毎月買ってもらっていた「少年少女世界文学全集(小学館)」の収録作品『ベン・ハー』がきっかけです。
ローマ時代を舞台に、奴隷の身に落とされた青年の再起と信仰の物語に心を奪われました。数々の挿絵も魅力的で、これが映画の場面がもとになっていると知ってからは、いつか映画を見たいと思うようになりました。
念願がかなったのは、高校生のときです。友人たちと、今はなくなってしまった渋谷の映画館で見ました。
以来、大きなスクリーンのとりこになって今に至っています。
今までありがとう岩波ホール
大学入学、就職……と行動半径が広がり、収入もあるので、情報誌を片手に映画を見て歩くようになりました。
今のように、配信やレンタルもないので、過去の名作は上映館を探さないと見られません。
めぐりあった作品は、メモを取りながら見たり、パンフレットはもちろん、ちらしや前売り券の半券まで集めました。
岩波ホールにもよく足を運びました。
良い作品でも大手の配給会社が取り扱わないものを、私たちに提供してくれました。原稿を書くためにパンフレットを引っ張り出してみたら、開館第2作目から通っていたんですね。
長い間お世話になりました。映画の視野を広げてくれたすばらしい映画館でした。
それなのに、コロナ禍による経営難で閉館すると聞いて本当に悔しいです。遠方とはいえ、自分もなにか支援できなかったのかと後悔しています。
ミニシアターが消えていく
コロナ禍の前から、ミニシアターは徐々に減っていたようです。大型シネコンの開設や、鑑賞形態の変化など、原因はいろいろとあると思います。
私の住む地方でも、2007年、2009年、2011年とミニシアターが立て続けに閉館しました。
いずれも岩波ホールで上映されるような作品を公開していました。まだ2館がんばっていますが、そのうちの1館が、私が午前中の早い回に見に行くせいかもしれないけれど、いつもガラガラで……。
スマホやテレビで映画が気軽に見られる時代ですが、私は闇の中で大きなスクリーンを見つめているのが好きです。この楽しみが消えてなくならないように、足腰の立つ限り映画館に通うつもりです。
今回の作品
『ベン・ハー』ウイリアム・ワイラー監督 1959年 アメリカ
『大地のうた 三部作』(大地のうた 大河のうた 大樹のうた)サタジット・レイ監督 1955年~1959年 インド
『大いなる幻影』ジャン・ルノワール監督 1937年 フランス(岩波公開は1958年の監督自身による完全復元版)
『トロイアの女』マイケル・カコヤニス監督 1971年 アメリカ
『死者の書』川本喜八郎監督 2005年 日本
『真珠の耳飾りの少女』ピーター・ウェーバー監督 2002年 イギリス
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