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- メイ・サートンの名言「孤独や死も素敵」の意味は
「ハルメク」でエッセイ講座を担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、詩人で小説家の「メイ・サートン」さん。山本ふみこさんが強く共感した、人生における「嫌われ者たち」を素敵と表現する意味とは……。
好きな先輩「メイ・サートン」さん
1912-1995年 詩人・小説家
ベルギー生まれ。4歳のとき両親と米国に亡命。一時劇団を主宰するが、38年に最初の詩集を出版し、著述に専念。詩人・小説家として、83歳で亡くなるまで意欲的に創作を続けた。日記や自伝的エッセイも多い。
孤独を知ってこそ、本当に生きられる
ひとりきりでいることや、さびしいという感覚をわるくない、と考えるような、わたしはそんな子どもでした。
『独り居の日記』(武田尚子〈たけだ・なおこ〉訳/みすず書房)という本と出逢ったのは30歳を過ぎたころのこと。〈孤独〉を悪者扱いしないばかりでなく、「ひとりだけの時間をもたぬかぎり(中略)、ほんとうの生活ではない」という著者メイ・サートンのことばに、驚きました。
さびしいのも素敵!とこっそり胸のなかで叫びつづけてきたわたしの思いが、抱きとめられた瞬間です。
孤独=バツ、死=バツ、貧=バツという思想にうなずけないでいたわたしは、メイ・サートンのおかげで、こうした嫌われものたちに対する見方をどんどん変えてゆきました。
〈孤独〉の値打ちを理解しようとすることは、ひとりでこの世に生まれ、またひとりで死んでゆくヒトの宿命の道を照らす灯ともしび。〈孤独〉を味わうことができて初めて、ヒトは他者を、そして自らを愛しく思えるのだと感じています。
「老い」を素敵!と言えるよう、死ぬまで成長し続ける
アメリカの詩人・作家であるメイ・サートンには、たくさんの作品があります。が、作品もその生き方も、世間に理解を得られない不遇を経験しています。ことに1960年代後半、小説のなかで同性愛を表白したときには、大学の職を追われ、出版さえも中止させられました。
けれど、このときの苦悩と気鬱がメイ・サートンを未知の土地ニューハンプシャーの片田舎ネルソンでの暮らしに導いたことを思うと、それが単なる不遇で終わらなかったことがわかります。
先日わたしは、メイ・サートンの最終章である『82歳の日記』(中村輝子〈なかむら・てるこ〉訳/みすず書房)をともなって、短い旅をしました。ネルソンの村よりもさらに人里はなれた海辺の家で記された(テープにことばを吹きこむかたちで)日記です。
飛行機のなか、いろいろな待ち時間、宿泊先のソファの上でそれを開きながら、自らのなかにあたらしい価値観の芽生えを見届けました。
「いまのわたしのように紛れもなき老齢期に入ると、この暮らしを維持し、生かしていくために、いかに日々の枠組みというものが重要か、ますます気づくようになる」
世間に漂っている「老=バツ」にわたしはまたしても抗いたくなり、死ぬまで成長したいと思うようになりましたとさ。
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2017年3月号を再編集し、掲載しています。
>>「メイ・サートン」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
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※ハルメク365では、雑誌「ハルメク」の電子版アーカイブを12か月分見ることができます。詳しくは電子版ハルメクのサイトをご確認ください。
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