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- 吉沢久子さんから学ぶ「その年になってわかること」
「ハルメク」でエッセイ講座を担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、生活評論家の「吉沢久子」さん。女性の立場や生き方を変え、女性たちの支えになった生き方は、これまでの自分を否定しない生き方でした。
好きな先輩「吉沢久子(よしざわ・ひさこ)」さん
1918-2019年 生活評論家
東京都生まれ。速記者として働きながら東京栄養学院、文化学院で学ぶ。文芸評論家の古谷綱武の秘書となり、51年に結婚。暮らしの知恵や工夫を提案する「家事評論家」の第1号と呼ばれ、新聞、雑誌、テレビで活躍した。
「その年になってわかること」を楽しみながら暮らす
老いたら、わたしは……、と、これまでも考えないことはなかったのです。そうして現実に、「老い」の国に足を踏み入れる年齢になってみて、なかなかおもしろい境地である、と感じています。
これは先輩たちのおかげです。そんな先輩のひとりに、吉沢久子の存在があります。
「自分の『これまで』を否定しない。ないものねだりをしない。『その年になってわかること』を楽しみながら暮らす」という久子さんのことばは、哲学のようでしょう?
そうです、世間で生活評論家と呼ばれる吉沢久子は、哲学者でもあります。
暮らしには哲学たる一面のあることを証明してみせたのも、久子さんでした。
早くから自立を考えていた久子さんは、速記者として働き、文芸評論家・古谷綱武(ふるや・つなたけ)氏の秘書となり、その後結婚。
「人の欠点は見えても見るな。美しいと思ったことは見逃すな」
夫となった古谷綱武氏にくり返し云(い)われたこれは、大きな支えになったとか。
考える家事、考える暮らし方を追求する「生活評論家」の誕生
吉沢久子という生活評論家(はじめは家事評論家と呼ばれていました)の誕生は、時代の必然であったように思えます。考える家事、考える暮らし方を追求する姿勢がその流れをつくったのではなかったでしょうか。
夫を送った66歳からは、そこに、考えるひとり暮らし、考えるシニアライフが加わったのです。
2019年3月、101歳で亡くなる日まで、こころを軽やかに保つ工夫をし、衰えてゆく身体とうまくつきあい、ひとに寄りかからず、の生き方はつづきました。
そうそう、「幾つになっても夢を持つ」ことを忘れなかった、というのも、久子さんの大事な人生のエッセンス。若いころから児童文学の創作の夢を持ちつづけたそうですが、それには、こう申し上げたいです。
久子さんの重ねてきた暮らしはたくさんの物語。読者もいっぱいいます!とね。
物語には生きた知識と、家のしごとのおもしろみが織りこまれており、女のひとの立場を、生き方を、ずいぶん変え、支えました。
これから立春までの時期に、久子さんの真似をして柚餅子ゆべしをつくろうと思います。てるてる坊主みたいにいっぱい吊るしてつくるのです。
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2020年1月号を再編集し、掲載しています。
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