老人ホームの費用はいくら?払えない場合の対処法も

年金で払える老人ホームの選び方 軽減制度/節約法

坂本 愛(ハルメク 介護と住まいの相談室 )
監修者
社会福祉士/ハルメク 介護と住まいの相談室 相談員
坂本 愛

公開日:2023.05.31

年金収入の金額によっては、年金のみでも老人ホームの費用をまかなうことが可能です。負担が大きい場合は軽減制度・減免制度の活用という方法も。公的施設・民間施設など豊富な選択肢や老人ホームの費用を抑えるためのコツをご紹介します。

年金だけで費用が払える老人ホームもある

貯蓄が多くはない場合や不動産などの資産を持たない場合など「年金だけでも費用が払える老人ホームはあるの?」「年金だけで老人ホームの費用を賄えない場合はどうしたらいい?」と不安や悩みを感じている人は少なくないようです。

結論からいうと、年金のみで入れる老人ホームは存在します。国民年金だけでなく、厚生年金や企業年金、年金保険などを合わせれば、住まいの選択肢もより豊富になります。

老人ホームや介護施設にはさまざまな種類があり、施設によっても料金に大きな差があるため、事前に確認しておきましょう。

老人ホーム・介護施設の種類によって費用は大きく異なる

老人ホーム・介護施設の種類によって費用は大きく異なる

老人ホームは大きく分けて「公的施設」と「民間施設」があり、施設によって費用が大きく異なります。年金収入の金額に応じて、適した施設を選びましょう。

受け取れる年金収入の金額をチェック

まずは、受け取れる年金収入の金額をチェックしましょう。

年金には、主に20歳以上〜60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と会社員や公務員の人が加入する「厚生年金」があります。その他、企業年金や年金保険などもあります。

以下は、国民年金・厚生年金の平均受給額の推移です。(「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」厚生労働省)

【国民年金】

  • 2017年度……5万5518円
  • 2018年度……5万5518円
  • 2019年度……5万5946円
  • 2020年度……5万6252円
  • 2021年度……5万6368円

【厚生年金】

  • 2017年度……14万4903円
  • 2018年度……14万3761円
  • 2019年度……14万4268円
  • 2020年度……14万4366円
  • 2021年度……14万3965円

自分の年金の支給額は、「年金振込通知書」や銀行口座の入金履歴を確認することで調べられます。年金は2ヶ月に1回支給されるため、入金額を2分の1にすることで、毎月の年金支給額が算出可能です。

年金収入額を把握して適した施設を選択する

高齢者が安心して暮らすための老人ホーム・介護施設には、さまざまな種類があります。設備やサービスの充実度、建物の立地、居室の広さなどによって料金も大きく変わります。

費用を抑えることを重視するのであれば、民間施設よりも費用が安価で経済的負担を抑えられる「公的施設」が選択肢となるでしょう。

ただし、公的施設は施設によっては要介護3以上の認定を受けた人が入居対象となるなど、入居条件が厳しいこともあります。

年金収入の金額が大きければ、公的施設よりも種類や選択肢が豊富な民間施設を選ぶのがおすすめです。

国民年金のみで老人ホームに入るには

国民年金のみで老人ホームに入ることを検討する場合、軽減制度を活用するといいでしょう。

公的施設であれば、収入に応じて、老人ホームの食費や住居費に軽減制度が適用される場合があります。所得によって軽減の度合いが変わるため、介護についての相談員や役所に相談してみるといいでしょう。

介護保険サービスの減免・助成制度については記事の後半で解説します。

民間施設は豊富な選択肢がある

老人ホームには、公的施設の他にも民間企業が運営する「民間施設」があります。公的施設よりも種類が豊富で、設備やサービス、共有施設、レクリエーションなどが充実しているところが多いことが特徴です。

シニア向け分譲マンションの場合は物件購入がかかりますが、その他の民間施設は、初期費用が不要なところがほとんどです。また、年金だけで支払える、15万円程度で収まる民間施設もあります。

主な老人ホーム・介護施設の種類一覧

主な老人ホーム・介護施設の種類一覧

ここからは、主な老人ホーム・介護施設の種類をご紹介します。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホーム(特養)は要介護3以上で、自宅で一人で生活を送ることが難しい高齢者が入居対象となる施設です。収入や資産に応じた減免があり、どんな収入状況でも入居できるというメリットがあります。

特別養護老人ホームは「居室タイプ(個室や多床室かなど)」「要介護度」などによって費用が変わってきます。原則として要介護3以上の高齢者が対象ですが、場合によっては要介護1〜2で入居できることもあります。

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設(老健)は、退院時などに利用する要介護認定を受けた高齢者向けのリハビリ施設です。自宅生活への復帰を目的としているため、長期の入所はできず、原則として入所期間は3か月となります。

ケアハウス

ケアハウスとは軽費老人ホームのことで、60歳以上で家族からの支援を受けることが難しい低所得者を対象としています。所得に応じて利用料金が変動することが特徴で、施設によっては初期費用が必要ないところもあります。生活保護受給者でも入居できることが多いです。

ケアハウスには、日常生活に支障がない人向けの「一般型」と、65歳以上で要介護1~5の人が対象の「介護型」があります。

介護付有料老人ホーム

介護付有料老人ホームは「特定施設入所者生活介護(特定)」の指定を受けた有料老人ホームのことで、介護サービスが充実しているという特徴があります。

スタッフが24時間配置されており、看取りまでできる施設もあります。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは65歳以上で自立~要介護の人が主な入居対象者となる施設です。介護は必要に応じて訪問介護などの外部サービスを利用します。

必要な介護サービスだけ利用できるため費用を抑えられますが、要介護度が上昇した場合は住み替えが必要になることがあるため、その点も踏まえて選ぶ必要があります。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、バリアフリー構造で高齢者が安心して暮らせる住環境が整った住まいです。安否確認や生活相談などのサービスを提供しており、その他にもさまざまなサービスが提供されています。

シニア向け分譲マンション

シニア向け分譲マンションは、高齢者が安全に、快適に生活できるよう配慮されたバリアフリー設計の分譲マンションです。物件を購入するため所有権を持ち、譲渡や相続が可能です。

食事・洗濯・掃除などのサポートを受けられるため、家事は任せて、趣味や楽しみに時間を使うことができます。

グループホーム

グループホームは、認知症の高齢者に特化した施設です。主に認知症の診断を受けた65歳以上の要支援2~要介護5の人が対象で、入居者で5〜9人ほどのグループを作って、専門知識を持ったスタッフのサポートを受けながら共同生活を行います。

老人ホームの費用を抑えるためのコツ

老人ホームは、施設によって費用に大きな違いがあります。老人ホームの費用を抑えるためのコツを以下でご紹介します。

  • 郊外の施設を選ぶ
  • 築年数が古めで駅から離れた施設を選ぶ
  • 個室ではなく多床室を選ぶ
  • 費用の減免・助成制度を活用する

老人ホームは、建物の立地や築年数、交通アクセスの良さも料金に影響します。利便性の高い首都圏などは費用が高くなるため、郊外の築年数が古めの物件を選ぶなどすると、費用を抑えられるでしょう。

老人ホームの費用を年金だけで支払えない場合の対処法

老人ホームの費用を年金だけで支払えない場合の対処法

ここからは、老人ホームの費用を年金だけで支払えない場合の対処法をご紹介します。なお、制度を利用するためには市区町村への申請が必要なので確認しておきましょう。

特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)

特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)とは、介護保険サービスの食費と住居費を軽減できる制度のことです。

特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院の入居もしくはショートステイの際に利用可能です。低所得者を対象としており、預貯金額によっては適用されません。

高額介護サービス費

高額介護サービス費は、介護サービスの自己負担金額が高額になった際、上限額を超えた額の払い戻しを受けられる制度です。申請期限があるため、忘れないように申請する必要があります。

高額医療・高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度とは、1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日まで)の医療費と介護費の自己負担分の合計額が自己負担限度額を超えた場合、申請することで超過分の払い戻しを受けられる制度です。

限度額は所得や年齢区分によって細かく設定されています。

介護保険料の減免制度

介護保険料の減免制度では、所得の著しい減少や災害、新型コロナウイルス感染症の影響など一定の条件を満たした場合、介護保険料の減免措置を受けられます。各自治体によって制度が異なるため、確認してみましょう。

世帯分離

世帯分離とは、同じ家に暮らしながらも、住民票を分けて別世帯になることです。世帯分離することで低所得者世帯となり、介護費用の自己負担割合や高度介護サービスの自己負担額の上限を低くできることがあります。

ただし、場合によっては国民健康保険の支払額が高くなってしまうこともあるため、世帯分離を行う場合は事前に計算しておくことが大切です。

生活保護

年金だけでの生活が難しい場合は、生活保護の受給も選択肢の一つです。年金を受給していても生活保護の受給は可能ですが、多くの条件を満たす必要があるため市区町村の生活支援担当窓口やケアマネージャーに相談してみるといいでしょう。

老後のための資金計画・貯蓄をしておくと安心

年金収入の金額によっては、年金のみでも老人ホームの費用をまかなうことが可能です。

老人ホームには公的施設だけでなく、より設備・サービスが充実した民間施設もあるため、選択肢を増やすためにも、早いうちから老後のための資金計画・貯蓄をしておくと安心でしょう。


老人ホーム選びについて迷ったら、多くのシニア住宅について知る相談員に無料で相談できる「ハルメク 介護と住まいの相談室」へ相談してみるのがおすすめです。多くの選択肢の中から、自分に合った住まいを見つけましょう。

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