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- 職場復帰を目指す50代女性が考えておくべきこと
「人生100年時代」とも呼ばれる今、男女ともに50代、60代になっても仕事と向き合い続ける時代を迎えています。今回は一度離職していた、50代の女性が新たな仕事を始めるためにどんな準備をしたらいいのか、識者にお話を伺いました。
50代女性の仕事、ブランク後の再就職、どうする?
50代の女性のライフスタイルは実に多様です。結婚歴、子どもの有無、家族の健康状態、就業形態、パートナーの経済力などを掛け合わせると「女性の数だけライフスタイルがある」といえるのではないでしょうか。
読者の皆さんの中には、子育てや家族のサポートのために専業主婦という選択をしてきた人もいらっしゃるでしょう。それでは、50代からの職業人生を再スタートしたいと思ったとき、どのような心構えが必要で、どのような準備をしたらいいのでしょうか。
今回は、『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHPビジネス新書刊)など、多数の著書を持ち、400社以上で人材育成のコンサルティングを行う株式会社FeelWorks代表取締役の前川孝雄さんに、50代の女性が「仕事に復帰したい」「働き始めたい」と考えたときに、まずどんな行動をしたらいいのかについてお話を伺いました。
―まず50代・女性 ・離職期間のあるという条件での雇用状況についてお聞かせください
前川孝雄さん(以下、前川):厳しいことから申し上げますと、「50代の女性で、仕事のブランク期間がある」場合、離職前と同じ待遇の仕事に就くのはとても難しいのが現実です。
例えば、ある女性が20年前にそれなりの規模の企業の社員で働き、結婚や子育てのために一度辞めて50代を迎えたと仮定します。ある程度子育てが落ち着いて、「もう一度同じような職種に再就職をしたい」と願っても、かつてと同じ規模の企業で同じ条件で働けるかといったら、ほぼ不可能に近いでしょう。
仮に同じスキルを持っているのならより年齢が若い人材が選ばれる傾向があります。
豊かな人間関係を持つ「50代の女性の強み」は?
―転職において年齢はかなりネックになるようですが、50代の女性ならではの強みもあるのでしょうか。 何か傾向があれば教えて頂きたいと思います。
前川:たとえ仕事のブランクがあったとしても50代の女性ならではの強みはもちろんあります。それは、「人間関係の構築能力」と「柔軟性」です。
例えば、同年代の男性は、勤めている企業が大手かどうか、上場しているかどうか、役職についているかどうかなど、自分の「ポジション」にこだわる傾向が見られます。
職場以外の趣味や地域などで居場所が乏しく、働くことを生きがいとしている場合、仕事を失うと気力や体力までなくしてしまうことが珍しくありません。
その点、女性は、いったん仕事の世界から離れていたとしても、親戚付き合い、ママ友、地域のコミュニティー、趣味、パート仲間など、いろんな居場所を持っており、仕事以外の世界で高いコミュニケーション能力を発揮し、充実しているケースが多い傾向があります。
また、男性と比べて企業の規模やネームバリューに固執しないので、新しい環境や人間関係にスムーズに入っていける可能性もあります。
仕事以外のさまざまなコミュニティーで培われた人間関係構築能力については、伝え方次第で企業側へのアピールポイントになり得るかもしれません。
どうやって、自分の希望する職種の求人情報を収集する?
―続いて、具体的な求人情報の収集についてうかがいます。どうやって自分の希望する職種の求人情報を収集したらいいのでしょうか。
前川:ここまでマイナス面とプラス面についてお話しましたが、離職期間を経て再就職を望む女性からはよく「やりたい仕事ができない」という悩みが聞かれます。
とはいえ、激変する労働市場においては「自分がやりたいこと」と「人材を必要としているところ」は必ずしもマッチするわけでありません。
本格的に仕事を探そうと思ったら、「求人市場をきちんと理解する」「その上で自分ができることを探す」というステップが必要です。そのために最も手っ取り早いのが「求人情報を収集する」こと。
情報収集のためには、いくつか方法があります。
ブランク期間を経た正社員を目指す転職であれば、以下の2つの方法が最もポピュラーな方法です。
ハローワーク
国によって運営されている公共職業安定所。幅広い層をターゲットとした求人が集まっている。求人を掲載する上で、企業側の負担は基本無料のため、中小・零細企業や個人商店などの求人まで幅広く取り扱っている。
民間企業が運営する求人サイト
インターネット上に掲載されている求人情報。個人情報を登録して、求人情報を検索したり、志望した企業にエントリーすることができる。主婦向けの仕事に特化したサイトもある。
ハローワークと求人サイトは、広く公開されている情報を取り扱っています。誰もがアクセスできるという点で、希望した職種の市場感をチェックするには、適しています。
門戸は狭くなりますが、非公開の求人情報を取り扱っている人材紹介会社を利用したり、企業内のホームページから直接問い合わせてもよいでしょう。
選ばなければ、50代女性も仕事はある
―昨今では人手不足の問題も深刻です。年齢が上がり、離職期間があっても就きやすい仕事はあるのでしょうか?
前川:最初に「50代の女性の仕事事情は厳しい」と申し上げましたが、それでも「仕事は選ばなければある」「まずは、動かないことには見つからない」ということを覚えておきたいものです。
業種別に見てみると、福祉、サービス、医療、飲食などの業種は恒常的な人材不足に悩まされています。
また、企業の規模別に見てみると、中小企業の多くは深刻な人材不足にあえいでいます。
新型コロナウイルスによるネガティブな影響はありますが、つい最近まで、新卒の学生は「売り手市場」といわれ、中小企業に若い人材が集まってこない状況にありました。
そのため、若者の採用はあきらめて、中高年層の採用に力を入れている中小企業は少なくありません。企業のカラーにもよりますが、場合によっては50代以降でも「がんばってもらえるならぜひ来てほしい」ということも十分ありえます。
ただし、中小企業の場合は、経営者によって驚くほど社風が異なります。とても働きやすい会社がある一方で、残念ながら全く逆のケースもあるでしょう。「いろんな経営者がいる」「いろんな会社がある」と踏まえた上で、最初から正社員という形態にこだわらずに、一度働いてみるのも一つの手段ではないでしょうか。
もし、自分のスキルに自信がなかったり、相場感がつかめない場合は、「一度失敗してもいいから試しに働いてみよう」という気持ちで飛び込んでみることも大切です。
ブランク期間が長くて自信がないのなら「まず働いてみる」ことも大切
―最後に、50代からの転職で前川さんが見聞きした印象的なエピソードがあれば教えてください。
前川:以前、私の知人がこんな経験をしたそうです。
結婚後に家庭に入って3人の子どもの育児に専念していた女性が、末子が手を離れたのをきっかけに外資系企業の輸送現場でパート勤務を始めました。
彼女には特別な言語能力もスキルもありませんでしたが、それまでギクシャクしていた輸送現場のスタッフと管理側のスタッフのコミュニケーションを円滑にする力に非常に長けていました。その上で、育児経験で鍛えられた胆力や忍耐力で、人が敬遠する仕事を積極的に担いました。
そのことで上司の評価を集め、正社員に登用され、劇的な昇給を経験していました。
これは1つの例にすぎませんが、その人の強みは資格やキャリア経験のみに表れるものではない、という象徴的な例ではないでしょうか。
女性のキャリアプランは、家族の状況や不測の事態など、不確定要素に影響されやすい側面があります。それでも、柔軟にしなやかに生きる力があります。
求人市場を分析したら、自分の強みと弱みを分析し、「働く目的」「やりたいこと」を掛け合わせて、雇用形態にこだわらずにまずは働いてみることも一つの手段です。
思い切って働いてみたら、それまで仕事外で培った経験が生きてくることもあるのではないでしょうか。
前川孝雄(まえかわたかお)さんのプロフィール
(株)FeelWorks 代表取締役/青山学院大学兼任講師
1966 年、兵庫県明石市生まれ。 (株)リクルートで『リクナビ』『就職ジャーナル』『ケイコとマナブ』などの編集長を務めたのち、2008 年に(株)FeelWorks 設立。「上司力研修」「50 代からの働き方研修」などで 400 社以上を支援。2017 年に(株)働きがい創造研究所設立。一般社団法人企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員なども兼職。著書は『「仕事を続けられる人」と「仕事を失う人」の習慣』(明日香出版社)、『5人のプロに聞いた!一生モノの 学ぶ技術・働く技術』(有斐閣)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)など30冊。
最新刊『50 歳からの逆転キャリア戦略』(PHP 研究所)は、発売2か月で 4 刷のベストセラーに。キャリア・働き方・人材育成のヒントをYouTubeで発信中!「FeelWorks前川孝雄のYouTubeチャンネル」https://www.youtube.com/channel/UCQfltGZFasnuK0BWQA8BSjg
取材・文=北川和子
■もっと知りたい■
■前川孝雄さんの著書はこちら
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