冬の信州を満喫するほっこり温泉旅:長野県
2024.02.232024年03月21日
大人女性におすすめ!温泉めぐりの旅・11
アイヌ文化体験&珍しいモール温泉と美食の旅:北海道
大人女性に人気の温泉を紹介する連載企画。今回は2020年に開館した「ウポポイ(民族共生象徴空間)」がある北海道の白老温泉を訪ねました。アイヌ文化はもちろん、温泉宿「界 ポロト」の珍しいモール温泉や醍醐鍋会席の体験レポートも必見です!
- #1 白老温泉(北海道)の特徴・アクセス方法をチェック
- #2 今回訪れた温泉宿「界 ポロト」と周辺観光スポット
- #3 「ウポポイ」で自然とともにあるアイヌ文化を知る
- #4 地元の土産品や観光情報が揃う「ポロトミンタラ」
- #5 豊かな環境で育つ新鮮たまごの里、「マザーズプラス」
- #6 「天野ファミリーファーム」で白老牛を堪能
- #7 「界 ポロト」を象徴する暖炉のあるロビー
- #8 ポロト湖を望む北欧チックな「□の間」
- #9 世界的にも珍しいモール温泉で美肌に
- #10 毛蟹と帆立貝を豪快に味わう醍醐鍋
- #11 口承文芸・ウポポを体験!土日限定の「手業のひととき」
- #12 朝食は「鮭とじゃがいものすり流し鍋」でほっこり
- #13 2日目は魔除けづくりやウポポイツアーに参加がおすすめ
- #14 今回宿泊した温泉宿はこちら
白老温泉(北海道)の特徴・アクセス方法をチェック
北海道の南西部、太平洋に面する白老町は自然豊かな町で、100を超える泉源があり、温泉通にはよく知られた湯の里です。中でも白老温泉は、珍しい植物起源の有機質を含んだモール温泉で、体にまとわりつくような、しっとりとした深い褐色の湯です。
白老温泉へは空の玄関口である新千歳空港からJRで約40分、最寄りの白老駅に到着します。空港からは車でも約40分の距離です。また札幌からも1時間ほどなので、日帰りでも楽しめます。
新千歳空港へは羽田空港から約1時間35分、また成田・関空・中部・福岡など日本各地から容易にアクセスできるのも、うれしいポイントです。
【空港からのアクセス】
新千歳空港→JR快速エアポートで南千歳駅(約3分)→特急北斗で白老駅(約30分)
今回訪れた温泉宿「界 ポロト」と周辺観光スポット
今回宿泊した「界 ポロト」はポロト湖の湖畔に立ち、全室から湖が望める温泉宿です。
ポロトとは、アイヌ語で大きな湖の意味。冬は一面が氷に覆われる湖、羽を休める野鳥、雪を纏う自然林など、北海道らしい静かな風景が窓の外に広がります。
まずは「界 ポロト」に隣接するウポポイや、土地の味覚・白老牛を楽しめるスポットなど、滞在前後に訪れたい注目の観光スポットを紹介します。
「ウポポイ」で自然とともにあるアイヌ文化を知る
2020年にオープンしたウポポイ(民族共生象徴空間) は、北海道では初となる国立博物館・国立アイヌ民族博物館をはじめとする複数の施設があり、北海道の先住民族・アイヌ民族の歴史や文化が学べます。
約10万平米にも及ぶ広い敷地内には、グルメやショッピングが楽しめる無料エリアと、博物館や伝統芸能上演が行われるホール、体験プログラムを楽しめる有料エリアから成ります。
伝統的な集落(コタン)を再現したエリアには、チセと呼ばれる家屋を再現し、かつての生活の様子がうかがえます。
国立アイヌ民族博物館の基本展示室では、ことば・世界・くらし・歴史・しごと・交流の6つのテーマに沿った展示で、日本語とは異なる系統のアイヌ語、木彫りや刺繍に見られる独特の文様や、アイヌ民族の精神文化を学べます。
独自の生き方を尊重し、知らない文化を排除しないという、全人類が目指す共生の道へのヒントがアイヌ文化にはありそうです。
ぜひ鑑賞したいのが、体験交流ホールで行われるアイヌの伝統芸能。独特の節回しの歌や古式舞踊、口琴(ムックリ)の演奏などに引き込まれます。
地元の土産品や観光情報が揃う「ポロトミンタラ」
白老駅のすぐ近くにあるポロトミンタラは、ウポポイや周辺の情報発信拠点。町内のおいしいお店や虎杖浜(こじょうはま)の名産・たらこの直売店マップなど、情報収集に最適です。
また、ローカルグルメが楽しめるコーナーでは、白老の温泉水で淹れたコーヒーや、大人気のブーランジェリーニシオのパン(木曜~日曜の限定販売)などが味わえます。
町自慢の商品も豊富で、白老牛のハンバーグなどの加工品、たらこ、人気の餃子や菓子類、アイヌ文様刺繍をほどこした商品など、手に取りやすいものが多く、お土産品選びには事欠きません。
旅の最初と最後に立ち寄ってほしい、ミンタラ(広場)です。
豊かな環境で育つ新鮮たまごの里、「マザーズプラス」
白老町の自然豊かな農場で育つ元気な鶏のたまごや、たまごを使ったスイーツが購入できる、マザーズプラス (mother's+)。
亜麻仁を加えた飼料を与えた「エイビアリー平飼いたまご」や濃い黄身が特徴の「亜麻仁の恵み 赤たまご」など、新鮮な産みたてたまごを味わえます。
スイーツも豊富で、昔ながらの硬めのプリンや、カスタードクリームたっぷりのシュークリームの他、たまごロールやカステラも人気です。どれも、たまごの味わいが凝縮され、一口で幸せな気分にさせてくれます。
店舗の外観も、とてもおしゃれ! 鶏舎の形をモチーフにした縦長の設計で、2020年グッドデザイン賞を受賞しています。
「天野ファミリーファーム」で白老牛を堪能
天野ファミリーファームは白老牛指定販売店4号店の焼肉レストランで、白老牛のおいしさを存分に味わえます。白老牛は北海道が誇るブランド牛で、さらりとした脂の甘さとしっかりした肉の旨みが特徴です。
程よくサシが入った上質な白老牛は目にも鮮やかで、見ているだけでもおいしそう!
丁寧にカットした白老牛を、珪藻土の七輪と備長炭で焼いていただきます。
珪藻土は熱を外に逃がさないため、肉が均等にふんわりジューシーに焼き上がり、口の中でとろけるよう。「特上カルビセット」をはじめ、ステーキやホルモンの盛り合わせなど、メニューも豊富です。
長芋やトマト、ニラなど季節の野菜を使った自家製キムチも人気で、もう一つの名物となっています。
「界 ポロト」を象徴する暖炉のあるロビー
周辺観光を楽しんだ後は、いよいよ温泉宿「界 ポロト」へ!
アプローチを進み、館内に入ると、そこは白樺の柱がまるで白樺林のように立ち並ぶロビー。
中央に位置する暖炉は、アイヌの人々が火を囲み集う場を踏襲しており、施設がコタン(集落)で、その中心に“火”の神様(カムイ)がいる造りとなっています。
窓の外には、白く凍てつくポロト湖と、とんがり屋根の湯小屋が見えます(この建物は世界的な建築家・中村拓志さんが手掛けたもの)
暖炉の前に座り、ウェルカムドリンクとしてアイヌ民族の人々に日常的に飲まれていたと言われるアイヌの野草茶をいただきながら、しばしくつろぎましょう。
ポロト湖を望む北欧チックな「□の間」
「界 ポロト」の客室はすべてポロト湖に面し、ご当地部屋「□の間(しかくのま)」と呼ばれています。
アイヌの伝統的住居・チセから着想を得て設計され、テーブルはチセの中心にある炉をイメージ。アイヌ文様の壁紙やクッション、アート作品、白樺の柱など、日本ではないどこか北欧のような雰囲気が漂います。
客室は4タイプあり、今回滞在した特別室には、テラスと露天風呂が付いていました。さっそくテラスへ出ると……
その幻想的な風景に、寒さを忘れて、しばし見入ってしまいました。
世界的にも珍しいモール温泉で美肌に
客室風呂以外に、「界 ポロト」は2つの大浴場も備えています。とんがり湯小屋にある「△湯(さんかくのゆ)」と、ドーム型の「〇湯(まるのゆ)」です。
まずは、湖に浮かぶような「△湯」へ。源泉かけ流しの「あつ湯」と心身を鎮静させる「ぬる湯」2つの湯船でモール温泉の湯あみを楽しめます。
入浴して驚くのは、その質感。とろりどころではありません。体に濃いローションを塗っているよう。モール温泉は美肌の湯ともいわれ、フミン酸とフルボ酸、潤い成分のメタケイ酸を多く含む贅沢な温泉です。
とんがり屋根の湯小屋は、アイヌ文化の建築的特徴である丸太組みの三脚構造(ケトゥンニ)を基本構造としています。トドマツの丸太で組まれたなんとも不思議な空間です。湯上がり処でじっくり観察してくださいね。
開放的な「△湯」に対して、もう一方の「○湯」は洞窟の中にいるかのような空間が広がります。ドーム天井の丸い穴から光が差し込み、ちょっと神秘的な雰囲気が楽しめます。
毛蟹と帆立貝を豪快に味わう醍醐鍋
温泉でまったりしたら、すっかりお腹がペコペコに。お楽しみの夕食は、北海道の美食を味わう会席料理です!
ヒグマの置物と一緒に登場する先付は、ジャガイモのすり流しにイクラとウニをのせたもの。山の神であるヒグマに感謝し、食事を進めましょう。
八寸やお造りが盛られる器は、アイヌの人々が使っていた丸太の舟を象ったもの。脂ののった「キンキの酒蒸し」や「牛肉の陶板焼き」を味わいます。
そして、いよいよメインの「毛蟹と帆立貝の醍醐(だいご)鍋」です。
ブイヤベース風の濃厚な味わいのなかに毛蟹と帆立貝の旨みが凝縮され、箸がとまりません。
鍋の〆は雑炊。チーズを加えて旨みの層が厚くなりました。
食後のひとときは、ラウンジでオリジナルティーを満喫するのがおすすめ。私が選んだのはカモミールとカレンデュラ。本とハーブのペアリング体験を楽しみましょう。
口承文芸・ウポポを体験!土日限定の「手業のひととき」
また、土日の訪問なら20時から開催される館内アクティビティ「手業のひととき」への参加もおすすめ。
地域の文化を継承する職人や作家、生産者の方の希少な技を間近で見たり、一緒に行うことができるご当地文化体験です。
暖炉の前で、アイヌ文化の伝承者である髙橋志保子さんから、代々受け継がれている歌「ウポポ」を教わります。
アイヌの文化は伝承文芸という、直接耳で聞いて伝え継ぐもの。髙橋さんの歌に合わせて一緒に歌い、輪唱にも挑戦します。
暖炉を囲んでみんなで和になり、拍子に合わせてにぎやかに。さらに、ムックリの演奏も目の前で披露してくれます。話好きで元気いっぱいの髙橋さんと一緒に、楽しくアイヌの文化を体験できるプログラムです。
「手業のひととき」の後は「コタンの宵の集い」へ(※毎日PM8:30/9:30/10:30から開催。所要時間50分。到着後フロントにて要予約)。こちらはしっとりと、好みのウイスキーやジン、ワインなどを楽しみます。
アイヌの人々にとってお酒は、願いや祈りを捧げる大切な儀式に欠かせないもの。今、この時間に感謝しながらグラスを傾け、静かに夜が更けていきます。
朝食は「鮭とじゃがいものすり流し鍋」でほっこり
ぐっすり眠った翌日は、現代湯治体操で体を動かしてから、朝食へ。
メインは、味噌味でやさしい風合いの「鮭とじゃがいものすり流し鍋」。オハウという、山菜をベースに肉や魚を入れて煮たアイヌ民族の主食の鍋料理から着想を得たものといいます。
その他、焼き魚やイクラ醬油漬けなど、さまざまなおかずもあり、ご飯が進みます。
2日目は魔除けづくりやウポポイツアーに参加がおすすめ
チェックアウト前には、ご当地の魅力を楽しむご当地楽「イケマと花香の魔除けづくり」を体験します。
イケマはアイヌ語で大きな根の意味。根茎を儀式などに使い、破片を魔除けとして日常的に身に着けていたそう。イケマと3種類のハーブを袋で包み、お守りを作ります。旅の思い出とともに、安全を祈願しましょう。
さらに、土日限定ですが、チェックアウト後に楽しめるアクティビティも! それが、宿泊者限定・「界 ポロト」スタッフが案内してくれる「ウポポイ園内ツアー」です。
「界 ポロト」の施設内でも見られるアイヌ文化のモチーフを、ウポポイで解説を受けながら確認できるのです。なるほど、実際に両施設のモチーフを見比べてみると、より深くその文化を理解できます。
ツアーの最後には、記念フォトアルバムと、参加者一人一人に、その人にちなんだ「アイヌ語カード」がプレゼントされます。
今回私がいただいたカードは「パイカラ」。アイヌ語で春という意味で、ハルメクにぴったりのカードでした!
北海道の中でも、アイヌ文化が根付く、白老温泉。神秘的なポロト湖や、世界的にも珍しいモール温泉。自然とともに生きるアイヌの人々の想いを感じながら、心休まる静かな冬の旅もいいものです。
今回宿泊した温泉宿はこちら
界 ポロト
ポロト湖畔に佇む温泉宿で、アイヌ文化を尊重し、随所に精神性や伝統を取り入れている。全室からポロト湖を望み、世界的にも珍しいモール温泉の湯浴みができる。70歳以上限定『温泉めぐり 界の定期券』の対象施設の一つとして、シニア女性にも人気。
●住所:〒059-0902 北海道白老郡白老町若草町10-1018-94
取材協力:星野リゾート 文・写真:関屋淳子 編集:竹下沙弥香(ハルメク365編集部)