005:宇田川昌美さん(56歳)
50代”台湾推し”のパート勤務の主婦が語学サークルを主催!台湾と日本の架け橋に
50代”台湾推し”のパート勤務の主婦が語学サークルを主催!台湾と日本の架け橋に
更新日:2025年02月01日
公開日:2024年12月20日
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あなたの“リスタートのヒント”が、きっと見つかるはず。
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宇田川昌美さんのリスタート・ストーリー
パート勤務をしながら主婦として過ごしていた宇田川昌美さんが、人生初の「沼」を経験したのは50歳。家族で出掛けた旅行先の「台湾」だった。
そのあと何度も台湾に旅行し、日本で開催される台湾関連のイベントに参加。さらに現地でコミュニケーションを取りたいと語学を学び始めたのをきっかけに、54歳のとき、自身で台湾華語を学ぶ会「台湾華語茶會(たいわんかごちゃかい)」をスタート。
SNSやイベントを通して、台湾と日本の仲間をつくり、日本だけでなく台湾でもオフ会など交流の場を展開している。
長男の事故、家族の「生きる」意識が変わった

――台湾に魅せられたきっかけは?
50歳のとき、たまたまテレビCMで見た台湾へ、家族で旅行をしたんです。夫と息子とだったので、特に盛り上がったりはしなかったのですが、台湾の雰囲気がとても心に残りました。
子どもの頃から推し活などとは無縁で、40代までは主婦として母として家のことで精いっぱい。若い頃は行っていた海外旅行も、すっかり遠のいていました。
その反動でしょうか(笑)。一気に台湾に夢中になり、パート代をすべて旅行につぎ込み、初めての一人旅も経験。台湾にハマって7年、15回ほど訪れています。
うまく言えないけれど、街の雰囲気や食べ物、文化など、台湾のすべてが自分に合うんです。親切でおもてなし好きな台湾の国民性も好き。台湾の方は朝ごはんも外食が多いのですが、朝から出掛けて絶品スープや台湾茶を堪能して、ノスタルジックな路地裏を見つけて散歩したりすると幸せを感じます。
何度訪れても発見があって、さらに好きになれる、その奥深さも魅力です。
――語学サークルの運営を始めたきっかけは?
台湾の情報収集のために、SNSをよく活用していたんです。フォローしてDMでコメントしたり、交流もしていました。
SNSで知り合った方とは台湾で会うこともあったのですが、その中の一人の女性が台湾語の先生と知り、教えてくださいってお願いしたことがあって。
台湾旅行を重ねるうちにもっと現地の人と関わりたい、文化を理解したいと思うようになり、そのためには会話ができるようになりたかったんです。でも一人だと続かないな、どうせやるなら好きな人たちとみんなで楽しめたらなと思うようになりました。
――家族や周囲の理解や応援はありましたか?
私が47歳のとき、当時高校生の長男が事故に遭い、生死の境をさまよいました。
何とか一命をとりとめたものの、 その後数か月は寝たきり、認知障害のような状態が続き、本人も家族も地獄のような日々……。
今では息子も普通に暮らすことができていますが、あのときを境に、家族みんなが“いつ何があるかはわからない、今を悔いなく充実して生きていこう”――そういう意識に変わったような気がします。
家族は普段は私の活動に関心を示すことはありません。でも、あのとき共にした思いがあるから、自由にさせてくれる。結果、後押ししてくれているのではないかしら。夕食後にいい台湾茶を出しても何の反応もないと、ちょっとは気付いてよ、と思うことはありますが(笑)
コロナ禍でパート勤務が激減、どうする?
――どうやって語学サークルを始めたんですか?
自分でサークルやイベントをする前から、日本橋の「誠品生活」に併設された台湾茶カフェ「HAPPY LEMON」で開催していた台湾茶会に通うようになり、オーナーさんと親しくなっていきました。
そんな折、コロナ禍で、台湾に行きたくても行けない、帰りたくても帰れない人たちが日本にたくさんいることを知り、同じ気持ちの仲間と集えたら……と「こんなことできたらな」とオーナーさんに会場を提供していただけないか、と相談したんです。
ありがたいことに協力していただけて、そこから、台湾華語の先生が教えてくれることになって、SNSで繋がっている台湾仲間にお知らせをして……。一人ではできっこないですから、とにかくダメ元でいいから周囲に話をもちかけて、動きました。
初めてイベント参加者を募ったときはドキドキしましたが、6名が集まってホッとしたのを今でも覚えています。2年たった今、20〜60代という幅広い年齢の仲間がたくさんできました。
――ピンチをチャンスに変えた経験はありますか?
活動を始めた矢先、コロナ禍でパートの勤務時間が減ってしまったんです。
パート収入は減り、旅行もできない。でも時間だけはある。ならばとその空いた時間で、友人と企画や運営についてたっぷり話し合いました。おかげで活動の幅がグンと広がり、それが転機になったのかも、と今となっては思います。
――活動のお金はどうやって得ていますか?
旅行代は、自分でパートで働いたお金から捻出しています。
イベントの参加費は2500円。運営は、この収益でまかなえるように、とにかく損だけは出さないようにしています。
今の時代、例えばイベント告知にはチラシではなくSNSを使うなど、工夫次第でお金を使わない方法もある。そしてやはり人脈をフル活用する。なるべく元手をかけない、を心掛けています
――チャレンジをして得た最大の教訓は?
“そこそこ”をキープする勇気。
つい、最初から大成功したい!完璧にやりたい!と気負いがちですが、まあ、無理です。それに、それでは疲れてしまうし、イヤになってしまう。
私にとって一番大切なのは、成功することではなく「楽しむこと」。長く楽しみたいからこそ、成功や結果に固執しすぎず「そこそこ」をキープするのも必要なことだと思います。
素人がやるこのサークルも、月に一度の会だけで本格的に語学を習得するのは難しいという壁にぶつかり、ならばと朝食会やお寺参りなど生活文化を体験できるイベントに方向転換しました。
最近は、続けていくためには収益も必要と感じていて、「楽しみ続けるために稼ぐ」という新しいフェーズに入った気がしています。
長年培った“ママ友スキル”は役に立つ

――チャレンジをして得られたものは?
同じ“好き”を共有できる仲間たち。
趣味以上の人脈を得られたのは、本当にありがたいこと。一人より、人と分かち合う楽しさは倍以上だと感じます。
SNS仲間に新しいパート先を紹介してもらったり、他のイベントを手伝う中で自分の活動を見直せたり、新しい扉が自然と開いていく感じです。
――これまでの経験で役に立ったことは?
ママ友づくりで磨いた、対人スキル!
そもそも取り柄も、やりたいこともないタイプで、40代までに成せたことといえば結婚と子育てくらい。でも、育児を通して出会った人と行事やお茶会などをしながら友好関係を築くのは得意でした。
もちろん、揉め事や悩んだこともありますよ。でも何とかここまで乗り越えてやってきた、やってこれたというのが、自分の経験としてあります。それに私の場合、相手の反応が怖くて誘えない……なんてことはなくて。とにかく企画して誘って、たとえ断られても気にしない、決してめげない(笑)
気疲れしない、いい距離での付き合い方を会得できた、それが役に立っているかなと思います。
――失敗やミスから学んだことはありますか?
その場の空気を読んで曖昧にすると、取り返しがつかないことがあるということ。
趣味つながりで始まった関係だと、金銭的なことは言いづらいもの。でも、曖昧にしたせいで人間関係を悪化させたことがあって以来、事前にしっかり確認し合うようにしています。
長くいい関係を続けたいのであれば、友人であっても金銭のやり取りなどトラブルになりやすい事柄ほど遠慮せずはっきり伝えることが大切ですね。
――幅広い年代とうまく付き合うコツは?
20〜60代の幅広い年齢の方々と交流がありますが、“好き“という共通点があればすぐ仲良くなれます。ただ、世代によって感覚は違うので、そこらへんは臨機応変に。
理解の早い20代にはしつこくせず、60代には1から10まで丁寧に伝えています。年齢を重ねるとせっかちになって、勘違いすることが増えるみたい(笑)
――あなたの座右の銘は?
塵も積もれば山となる
主婦業も育児も、これまでコツコツと続けてきた経験が、ふとしたときに力になるもの。語学の勉強だけは、なかなか進みませんが……。
輝かなくてもいい、自分らしく生きていきたい
――最初の一歩を踏み出す自分に今、声をかけるとしたら?
「最初の1歩を踏み出せれば、2歩め、3歩めと一人でに進むから大丈夫」
私の最初の一歩は、SNSでメッセージを送ったのを機に仲良くなった台湾華語の先生との出会い。一緒に何度も台湾旅行を楽しみました。
そして、台湾茶カフェ「HAPPY LEMON」で開催された台湾イベントに参加したこと。そこでオーナーさんと仲良くなって、イベントの会場を提供してもらい、今の台湾華語の先生にも出会えました。
好きすぎて前のめりになって、気付いたら一歩踏み出していたような感じです。その後は台湾で現地の方との交流会も開いたりと、日本と台湾、両方で活動しています。
――自信をなくしたり悩んだときの特効薬は?
できるだけたくさんの人に相談してグチャグチャと深く悩むこと……が一番効きます(笑)。先日もイベント仲間に話を聞いてもらってスッキリしました。
話すうちに自分の思考が整理されるし、たくさん悩んだ方が、ふっと納得がいったり、ちょっとした解決策が見つかったりする気がします。
――がんばった自分へのご褒美は?
仲間たちと会うことが私にとって最大のご褒美。だから台湾華語茶會も、仕事や家事をがんばる自分へのご褒美としてつくったんです。今では参加者に、このイベントを楽しみにしているから毎日がんばれるんです、って言ってもらえるようになって、すごくうれしいです。
――憧れの、あるいは尊敬する女性は誰?
90歳でも輝いている草笛光子さん。老いることへの焦りや不安を感じたとき、草笛さんのインタビュー記事を読むと元気になります。
女性ではないですが、台湾世界遺産登録応援会の八田修一理事長も。70代ですが、信念があって活躍されている。私も自分軸をしっかりもって年齢を重ねていきたいですね。
――趣味やチャレンジは、あなたの人生にとってどんな意味がありますか?
自分が自分であり続けるために必要なもの。
チャレンジして輝くことは素敵だけれど、私は人生でいつも自分が輝いている必要はないんじゃないかなって思うんです。
私にとって、台湾の存在と今の活動は、自分が自分らしくあるために奮い立たせてくれるもの。「自分らしさ」を保ち続けるために必要なものです。
50代のリスタートに必要な3つの備え
私の財産はお金でもスキルでも知識でもなく、ママ友付き合いやパート先で磨いた「人付き合いスキル」。一人では限界があるけれど、人と交わることで、できることは何倍にもふくらみます。
1.いい意味での“あきらめ”力
幼稚園のママ友とクリスマス会など、昔からイベントを企画するのが好き。自分からアプローチするけれど、みんなが好意的でなくてもめげない、落ち込まない。世の中いろいろな考えの人がいるのだから、とサラッと受け止めるメンタルが大事。
2.“次”につながる人間関係
相手を嫌な気持ちにさせない、をいつも心掛けています。もう人生折り返しているのだし、マウントを取るなんて見苦しいことはしない。自己主張が強すぎる人は、結局は一人になってしまいます。次につながる関係は「楽しい思い出」があってこそ。
3.“自分ファースト”の精神
何かを一緒にするときは「なんだか楽しそう」と共感しあえるかが大切。そのためには、まずは自分が一番に楽しんでいないと伝わりません。うまくできなくてもそんなものと割り切れたり、いい加減で図々しくできるのは、年を重ねた大人女性の特権です(笑)
取材・文=時津由香 写真=日高奈々子 撮影協力=HAPPY LEMON 誠品生活日本橋店 企画・構成=長倉志乃(HALMEK up編集部)
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