介護の自己負担は1〜3割。払い戻しの制度もある
2023.10.202023年10月26日
【全4回】自分や夫の介護費用にどう備える?#1
介護費用のプランを考える前に知っておきたいこと
将来の介護費用が気になるハルメク世代は少なくないと思います。いくら準備すれば安心なのか悩ましいところですが、無理のないプランを立てるために、まずは介護費用準備の基本的な考え方と、要介護状態になるリスクがどの程度なのかについて知りましょう。
教えてくれた人は浅田里花(あさだ・りか)さん
ファイナンシャルプランナー(FP)。大手証券会社、独立系FP会社を経て1993年に独立。日本のFPの草分け的存在。生活設計塾クルーのメンバーとして資産設計、保障設計、リタイア後の生活設計等のコンサルティングを行う他、新聞、雑誌、ウェブ等への原稿執筆やセミナー講師として活躍。東洋大学社会学部非常勤講師も務める。
最悪の事態を想定せず、老後資金の中で柔軟にやりくりを
将来の介護費用としていくらぐらい準備しておいたらいいのか、悩んでいる50代60代のハルメク世代は少なくないでしょう。介護費用は要介護度などにより異なりますが、自分や夫がどうなるかは、そのときにならないとわかりません。
だからといって、いかなる場合にも対応できるように最悪の事態を想定して資金準備を考えると、行き詰まりかねないので要注意。目標額が多額になり、「それは無理」と思考停止して何もできなくなる恐れがあるからです。
幸い重い介護状態にならず、結果的に費用があまりかからなかったというケースも考えられます。なので介護費用に特化して資金を準備するより、老後資金として貯めたまとまったお金の中で介護費用をやりくりした方が柔軟な対応ができます。
何にでも使えるお金を準備しておくことが、介護費用の一番の対策だということです。
このあたりの詳しい資金準備の方法については、第3回と第4回でお伝えします。まず第1回と第2回では、介護費用の資金プランを考える前に知っておきたい、要介護状態になる可能性や公的介護保険の基本についてポイントをお話ししましょう。
「5人に1人が要介護状態になる」本当の内訳は
では要介護状態になる可能性から。よく「5人に1人が要介護状態になる」と言われますが、実際にはどうでしょうか。
上の図表は要介護状態になる可能性の割合を、年齢別に示したもの。総数とは、公的介護保険の要支援1から要介護5までの7段階の状態のいずれかになった人の割合です。
総数欄を見ると、70代までは要支援も含めて要介護状態になる人は10%未満です。80代以降になるとさすがに増えて、80〜84歳は18.6%、ここで約5人に1人という計算になります。85〜89歳は37.3%なので約3人に1人です。
ただし重い介護状態といわれる要介護3以上の割合を見ると、それほど多くないことがわかります。80〜84歳の場合、要介護3に該当するのは2.7%、要介護4は2.4%、要介護5は1.6%です。
可能性が低くても自分が該当しないとは限りませんが、心配し過ぎないことも一つの考え方。なるべく要介護状態になるのを遅らせることができるように、健康に留意した生活をすることも介護費用を減らす重要な対策でしょう。
次回は、介護費用を考える上で知っておきたい公的介護保険の基本や、知らないと損をする払い戻しの制度などについて取り上げましょう。
※この記事は、雑誌「ハルメク」2022年5月号を再編集しています。
■もっと知りたい■
第2回~~介護の自己負担は1〜3割。払い戻しの制度も
第3回~~介護費用の目安は1人600万円、どう準備すべき?
第4回~~将来の介護費用に備える、民間の介護保険の選び方は?