2023年09月09日

【全2回】火災保険を悪用した保険金詐欺に注意#1

火災保険で家の修理費が無料になるってうそ?本当?

豪雨や地震など自然災害が起きた後、被害地域に現れるかもしれないのが「火災保険で家の修理が無料でできる」と勧誘する悪質業者です。応じると、無料どころか高額な負担を強いられることも。騙されないために、まずは勧誘の手口とトラブル例を知りましょう。

教えてくれたのは清水香(しみず・かおり)さん

清水香さん

ファイナンシャルプランナー 学生時代より生損保代理店業務に携わり、FP業務を開始。2001年に独立し、相談業務、執筆、講演、TV出演など幅広く活躍。財務省の地震保険制度に関する委員を歴任。自由が丘産業能率短期大学兼任教員。日本災害復興学会会員。近著に『どんな災害でもお金とくらしを守る』(小学館刊)など。

自然災害の後に訪れる悪質業者にご注意を

住宅点検・修理をうたったトラブルのパターン

大きな自然災害が頻発し、台風、豪雨、竜巻、落雷、大雪、地震などにより、いつ住まいが被害に遭うかわかりません。

災害後のタイミングを狙って突然訪ねてくるかもしれないのが、「火災保険を使えば家の修理が無料でできます」と勧誘する業者です。「無料・タダ・自己負担なし」を強調した住宅修理の勧誘をされたら要注意、気を引き締めましょう。

確かに火災保険は補償対象になる事故や損害が生じれば保険金が受け取れ、家の修理にも活用できます。しかし、近年それを悪用したトラブルが多発しています。

「PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)にみる『保険金が使える』と勧誘する住宅修理サービスの年度別件数」を比較が可能な範囲で見ると、国民生活センターと全国の消費生活センターに寄せられた相談件数は、2018年度に2610件だったのが、2020年度には6560件と2倍超に増えています。

2021年度には5093件と前年より減少しましたが、被害を受けても相談をせずに泣き寝入りしているケースもあるでしょうから、実際の被害はもっと多いのかもしれません。また、相談者の多くは60歳以上でハルメク世代と重なるので、依然、注意が必要なことに変わりはないといえます。

勧誘は直接自宅を訪問してくる他、電話やチラシ、インターネットの広告などでも行われます。信用させるために「○×協会」「○×機構」などと、業界団体や公的機関のような名称が多いのも特徴です。被災地でなくても現れる場合があるので、誰もが気を付ける必要があります。

住宅点検・修理をうたったトラブルのパターン

住宅点検・修理をうたったトラブルのパターン

ではどのようなトラブルが起きているのでしょうか。

よくある契約パターンは、「住宅の無料点検と保険金の請求サポート」、それらに加えて「住宅修理工事」まで行うというものです。

よくあるトラブル例

  • 業者の住宅の無料点検に応じたら、保険金の3〜5割を手数料として請求された
  • 損害の原因が経年劣化だったため、損害保険会社から保険金が支払われなかった
  • 業者に解約を申し出ると、高額な違約金を請求された

いずれにしても無料ならばとうっかり契約してしまうと、上記のよくあるトラブル例に挙げたような事態に発展する恐れがあります。

保険金は修理費用として受け取るものですから、手数料として業者に3〜5割も引かれると修理費が大幅に不足してしまいます。

業者の見立てと異なり、住まいの損害の原因が経年劣化(老朽化)だった場合には、損保会社から保険金は支払われません。

また、「契約した後で考え直し業者に解約を申し出たところ、高額な違約金を請求された」というケースもあります。無料どころか重い負担になりかねないのです。

勧誘には絶対に応じてはいけない

勧誘には絶対応じてはいけない

トラブルを防ぐには勧誘には応じないこと。これが一番の対策です。とはいえ業者はあの手この手で契約を促すので、しっかり撃退するには火災保険についてある程度知っておくことが必要です。知識があれば、実際に住まいが損害を受けたときにも適切な行動がとれるはずです。

次回は、だまされないためにも火災保険について知っておきたい、5つのポイントについてお話しします。

取材・文=萬真知子
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年7月号を再編集しています。
 

萬真知子
萬真知子

早稲田大学第一文学部卒業後、1987年日経ホーム出版社(現、日経BP社)に入社。月刊誌「日経マネー」に配属され編集記者に。1990年に退社後、フリーのマネーライターとなり、雑誌、ウェブを中心にマネー情報記事を執筆。金融機関等の顧客向けウェブサイトにも執筆。「ハルメク」の「知っ得!マネー学」を連載中

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