人生100年時代!大人の恋愛事情#2
76歳と89歳、結婚の決断に時間は必要なかった
76歳と89歳、結婚の決断に時間は必要なかった
更新日:2025年09月04日
公開日:2024年07月21日
映画監督・作家 松井久子さん(77歳)のプロフィール

まつい・ひさこ
1946(昭和21)年、岐阜県生まれ。早稲田大学文学部演劇科卒業。98年映画「ユキエ」で監督デビュー。2002年「折り梅」公開、2年間で100万人を動員。10年日米合作映画「レオニー」を発表、13年に世界公開。著書に『疼くひと』『最後のひと』他。
※年齢は取材時。
恋愛小説から思想史に興味を持って

松井久子さんが初の小説『疼くひと』を刊行したのは2021年2月。70歳を目前にした女性が15歳年下の男性に引かれていく恋愛小説は大きな話題を呼びました。
そして出版社から2作目を期待されていた同年秋。友人から「通っている思想史の市民講座の先生が素晴らしいんだ」と聞き、直感的に興味を持ったという松井さん。先生こと思想史家・子安宣邦(こやす・のぶくに)さんの著書を読み始め、講座に参加することにします。
「思想史を勉強したい、というのが理由の半分。あとの半分は、“老いをどう幸せに生きるか”というテーマで2作目を書くヒントになるかもしれないと思ったんです。子安先生の奥様が 、17年に他界された著名なドイツ文学者・子安美知子(こやす・みちこ)さんだったと知り、奥様を見送られて、90歳になろうとする今どんな老いの時を迎えられているのか、話を聞いてみたい気持ちがありました」
エネルギッシュな語りに驚嘆!懇親会で意気投合

1回目の講座で子安さんのエネルギッシュな語りに驚嘆したという松井さん。2回目の講座後に開かれた懇親会で会話が弾み、帰り際、子安さんから「話をするのがすごく楽しいから、今度は我が家にいらっしゃい」と誘われます。
「先生のお宅に伺って、私は取材者のように興味のあることをどんどん聞いていきました。不躾な質問をしても先生は一生懸命答えてくれて、5分や10分、平気で黙って考えてから言葉を出すんですね。その誠実さ、真っすぐさに“こんな人、見たことがない”と衝撃を受けました」
「コロナ禍の正月」で2人の距離が近づいた
その後、メールでやりとりを重ね、22年の元日は、松井さんの一人暮らしのマンションで一緒に過ごすことに。「もっと話がしたかったし、海外にいる息子がコロナ禍で帰国できず、手作りのおせちを一緒に食べる相手がほしい気持ちもありました」
当日、子安さんを駅まで迎えに行き、ごく自然と腕を組んで歩いたそう。「電車を乗り継いで来てくれた先生をいたわるように手を取るのは自然な流れでした。同世代だったらもっと迷ったと思う。彼のお世話をしてあげたいという気持ちもあって急速に距離が縮まったという面はあるかもしれません。彼も自然にそれを受け止めてくれました」
それから二人で会うことが増え、子安さんの家族とも何度か食事をするようになります。「ずっと一緒に生きていこうと思うのに長い時間は必要ありませんでした。互いに人生経験を積んだ上で出会っているから、探り合うことも迷うこともなかった。出会って1年たたないうちに結婚していました」
結婚時、子安さん89歳、松井さん76歳
結婚時、子安さんは89歳、松井さんは76歳。年齢差は気にならなかったかと問うと、「全然」と笑います。
「順番でいけば彼が先に要介護になるかもしれませんが、それがマイナスとは思わない。むしろ支えたいです。30代で離婚後、一生懸命仕事をして、孤独とうまく付き合ってきたけれど、私が一番望んでいた幸せはこの人と一緒にいることなんだとようやくわかった気がします」
次回は、ポスチャーウォーキング考案者のKIMIKOさんの話をお伝えします。
取材・文=三橋桃子、五十嵐香奈(ともにハルメク編集部)、撮影=島崎信一
※この記事は、雑誌「ハルメク」2023年10月号を再編集しています。




