山本ふみこさんのエッセー講座 第9期#1
2024.10.312023年09月25日
青木奈緖さんが選んだエッセー作品の紹介とQ&A動画
青木奈緖さんのエッセー講座6期第5回参加者の作品
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。大切な思い出を形に残すべく取り組む参加者たちの作品から、青木さんが選んだ2つのエッセーをご紹介します。
青木奈緖さんが選んだ2つのエッセー
「青木奈緖さんのエッセー講座」参加者による家族のエッセーです。クリックすると、作品と青木さんの講評をお読みいただけます。
「義姉(あね)と義妹(いもうと)」西山聖子さん
兄と弟の兄弟に挟まれて育った私は……
「負うたZ世代に教えられ」西羅幸子さん
有難いことに、我が家は本好きな子供達に育った……
エッセーに関する質問・お悩みに動画で回答
エッセイストの青木奈緒さんを講師に、半年間でエッセーの書き方を学ぶ通信制エッセー講座。
このエッセー講座のテーマは「家族」。全国からご参加いただいた30名の皆さんが毎月1本、家族との大切な思い出をエッセーの形に残すべく取り組んでいます。
参加者ひとり一人がエッセーを書くうちに直面する悩みや疑問は、実は、書く人にとって共通する学びの宝庫です。ハルメクでは、月1回青木さんが参加者の質問に回答する動画を制作。現在の参加者が生き生きと学べるように、また、どなたでもご覧になって学びを生かせるように公開していきます。
第6期5回目となる今回は、「読者に伝わる文章とは何か」「『親切な文章』と『不親切な文章』」について、青木さん作成の例文を用いてお話を伺いました。
一文が長くなっていたら、読み返して「伝わる文章か」の確認を
青木さん: 今回は例文を用いて、やや上級者向きのアドバイスをしてみようと思います。
著者は「すべてを知って書いている」 ⇔ 読者は「何も知らずに読んでいる」
これは私が皆さんに口を酸っぱくして伝えてきた「読者の人に向けて書く」ということですね。
「読者に向けて書くのは難しい」とお手紙で度々お返事をいただいていたので、今回は皆さんに読者の目線に戻って体験してもらい、「読者に伝わる文章とは何か」「『親切な文章』と『不親切な文章』」について一緒に考えていきましょう。
まず、こちらの2つの例文を読んでみてください。
いかがでしょうか? ちょっとつっかえるような読みにくい感覚がありませんでしたか?
まず、例文1は前半に書かれている情景描写も成立しています。文章としては悪くありません。
しかし、読み進めていくと「小学生のころの私の話」ではなく「参観日に遅刻してきた母」の話になっています。最後の最後に突然現れた母に、「え?」と思いませんでしたか? 読んでみて文章の流れが途切れたような感覚があったのではないでしょうか?
この文章は、肝心な主語の「私」が抜けています。前日に準備をしていても、参観日当日に遅刻をしてくる母が「私は」嫌だった、という話なのに主語が抜けてしまったために、読みにくく分かりにくい文章になった例です。
この場合は、まず結論から書くといいでしょう。「参観日に遅刻してくる母が嫌だった」と結論を書いて、次にその理由を書けば短くまとまります。
例文2はどうでしょう? 例文1よりも更に読みにくく、読んでいて緊張感がありませんでしたか?
日本語は読み下していくので、合間合間に数字が入っていると最後に結論が分かるんだろうという予測のもと、入ってきた情報を結論に繋げるために蓄積していきます。そのため「3月」「喜寿」ときて、次に「1877年」となると、一体何の話か分からないですよね。しかし、この文章はここでは終わらず続いているから、読み下していかなければなりません。
結局のところ、「ヘルマン・ヘッセの墓参りに行く私」の話なのですが、最後まで何の話か、誰の話かも分かりにくいです。
まず「喜寿を迎えた私」に読点「、」が入っていないため、誰の話か分かりにくくなってしまいました。また、著者のヘッセへの思いが強いために情報が盛り込まれ、読者にとって不必要な情報も書いてしまっています。
一文に情報をまとめようとすると陥りがちで、傾向としては「こういう風にしたら一文できれいにまとめられるのでは?」と考える上級者に多い文章です。
適正な一文というのは平均で60~80字、長くて100字と言われています。
文章が長くなっていると感じたら、一度読み返して、分かりにくくなっていないか確認してみましょう。
動画では、さらに詳しいお話や、青木さんの朗読もお楽しみいただけます。朗読するのは、生まれたときからデジタルな環境が身近にある娘さんと「母」である筆者のやりとりを巧みな情景描写で描いた「負うたZ世代に教えられ」(西羅幸子さん作)です。
エッセイスト・青木奈緖さんのプロフィール
1963(昭和38)年、東京生まれ。文豪・幸田露伴を曽祖父に、作家・幸田文を祖母に、随筆家・青木玉を母に持ち、自身もエッセイストとして活躍。著書に『幸田家のきもの』(講談社刊)、『幸田家のことば』(小学館刊)他。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。講座の受講期間は半年間。
2023年3月からは、第6期がスタートしました(受講募集期間は終了しています)。5月からは、青木先生が選んだ作品と解説動画をハルメク365でお楽しみいただけます(毎月25日更新予定)。
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