京都の秋・瑠璃光院へ

2023年11月05日

京都に足を伸ばして秋の絶景を楽しむ

息をのむ紅葉のリフレクション!京都「瑠璃光院」へ

秋といえば紅葉。日本には圧巻の紅葉で有名な場所がいくつもあります。今回は京都の瑠璃光院をご紹介。案内してくれるのはバラ愛好家の奥野多佳子さん。瑠璃光院の他にも近くの紅葉スポットとおいしい立ち寄りも紹介します。

紅葉をどこで見ようか?

毎年秋の気配を感じると、今年はどこへ紅葉狩りに行こうかな……と思いを巡らします。関西でも紅葉の美しいスポットはたくさんありますが、中でも京都は見どころも多く、どこへ行っても美しい紅葉に出合えます。

京都には歴史ある木造建物が多く、そこには四季の移り変わりが計算されたお庭があるので、一年のどの時期でも美しい風景が眺められます。美術館も多いので2か月に一度は京都を訪れますが、日常とは違う空気感があるので真夏の暑い季節でも京都なら許せる気がするほどです(笑) 

瑠璃光院そばの高野川の紅葉
瑠璃光院そばの高野川の紅葉

でも、晩秋の京都は特別です。いろいろな紅葉の名所を訪れましたが、一度は見たいと思う場所があります。

その一つが、八瀬にある瑠璃光院でした。普段は非公開ですが、春・夏・秋の時期だけ特別公開されています。やっと訪れることができたので、朱に染まる京の秋、写真で楽しんでくださいね。

瑠璃光院とは…歴史と名前の由来

瑠璃光院

瑠璃光院の歴史を見ていくと、とても興味深いのです。歴史ある寺院と思っていましたが、岐阜県にある浄土真宗「光明寺」の支院で、もともとは「喜鶴亭(きかくてい)」と命名された明治時代の実業家 田中源太郎の別荘でした。

その後、大正末期に個人の別荘になり1万2000坪の敷地に現在の数寄屋造りの建物と日本庭園が造られました。建物を作ったのが伊勢神宮内茶室、ロックフェラーやジョンレノンの邸宅も手掛けた中村外二(なかむら・そとじ)、大工の神様といわれた京都を代表する数寄屋大工の棟梁です。

庭園は佐野藤右衛門(さの・とうえもん)、代々仁和寺の造園を担ってきた庭師で14代目が瑠璃光院の庭を作っています。とても有名な職人さんたちの手で作り上げられたのです。

その後、一日4組限定の高級料亭になりますが、廃業されたときに光明寺が購入、2005年にようやく瑠璃光院が誕生することになります。

瑠璃光院

瑠璃光院の名前の由来は、朝早く、庭の苔の朝露が青白く瑠璃色に光る様子から名付けられたそうです。

瑠璃光院は、行く前にまず予約!

瑠璃光院

瑠璃光院の秋の特別拝観は、紅葉の頃になると以前は朝から長蛇の列だったそうです。

今はホームページから事前予約制になっていて、私が予約した2年前(2022年)など予約開始当日は朝からなかなかネットが繋がらず、結局同行する4人すべてが予約できたのは夜の8時を過ぎてからでした。ほんと瑠璃光院を見る前に、すでに疲れてしまいました。

でも2023年は1人で4人分取れ、そして9時から18時までの間は20分ごとに区切られた予約表があるので、とても予約しやすくなりました。

さあ、瑠璃光院へ!絶景の数々に感動

瑠璃光院

※写真が数多くあります。Yahoo!等でお読みの方は「次へ」のマークをクリックしてご覧ください。

朝10時、瑠璃光院の門が開くと ご住職のご挨拶がありました。瑠璃光院の説明やお庭の見どころ、写経のことなど丁寧にお話しいただきました。

瑠璃(るり)の庭

瑠璃の庭


まず一番のハイライトが、書院2階から眺める「瑠璃の庭」です。

2階へ上がって目に飛び込んできたのは、黒い枠に切り取られた鮮やかな色彩! 上から眺めた幾本ものモミジのオレンジのグラデーションの美しさ! それがお座敷に並べられた塗り机に映る……そのリフレクションには息をのみます。

一本一本が大きなモミジ、それが競うように舞うように枝を伸ばし、伸び伸びと鮮やかに色づいています。赤、オレンジ、黄、緑……言葉で表現できない色の饗宴。美しい!

瑠璃の庭

以前に床もみじで有名な実相院へ行きましたが、そこは本当に床がピカピカに磨かれていて、黒光りする床に映るモミジの美しさは言葉に尽くせないほどでした。

でもここは床ではなく大きな塗り机に映り込んでいるのです。もう効果抜群!この机の手前にスマホを載せて撮ると、映り込む様子がきれいにぶれることなく撮れます。

左側の赤からだんだん黄色へと移り変わるさまや、黒く細い枝のコントラストの美しさは、偶然に出来た景色のようですが、実は職人さんによって計算され尽くしているのだそうです。……圧巻でした!

1階から瑠璃の庭

1階に下りて「瑠璃の庭」を眺めます。2階はいっぱいの人ですが、朝一番の入場なので1階のお座敷は空いていてゆったり座って見ることができました。

1階から瑠璃の庭

今度は下から眺める紅葉。瑠璃色に輝く浄土の世界を表した瑠璃の庭は、苔がびっしり一面に自生していて光の加減でいろんな色合いに見え、奥行き感があります。よく磨かれた廊下にもリフレクション……そこに座って眺めていると本当に落ち着きます。

1階から瑠璃の庭

何種類もの苔がうねるように這うように……その間をぬって流れるせせらぎの曲線がアクセントになって。見事ですね~。 

1階から瑠璃の庭

ふかふかの苔は絨毯のようですが、お手入れをされる庭師さんのご苦労を思うと……大変でしょうね。日本の美や伝統は 職人さんの技に支えられているのだと、いつも思います。

瑠璃光院の屏風

お座敷には六曲一隻の『南蛮図屏風』が展示されていました。海を渡ってやってきた南蛮人との交流を描いた風俗画で、鮮やかな色彩です。狩野派の絵師が江戸時代に描いたものだそうで、特別公開の際には寺宝の文化遺産も公開されています。

臥龍(がりょう)の庭

臥龍の庭

廊下に沿っていくと「臥龍の庭」があります。天に昇る龍を水と石で表現しているそうで、紅葉が水面に映りこんでいます。

臥龍の庭

ここでも苔の緑のグラデーションが美しく、華やかな紅葉と対比するように力強さを感じます。

赤モミジ、青モミジ

ご住職のお話にあった「赤モミジ、青モミジ」、さまざまな色合いのモミジが楽しめました。

八瀬の釜風呂

八瀬の釜ぶろ

建物内を見ると、釜風呂がありました。 料亭の時代には実際に使われていて、「八瀬の釜風呂」として売りにしていたそうです。

日本式蒸し風呂の原型で、これには伝説があって、壬申の乱で知られる大海人皇子が戦いで矢を背に受け、その傷を癒やすために入った釜風呂、といわれています。「矢」を「背」に受けたのでこの地が八瀬といわれるようになったとか。

八瀬の釜ぶろ

半円形の釜の中に10時間以上薪などを燃やして内部を熱し、暖かくなったら寝転んで温まるそうなので、サウナのようなものですね。手間のかかる贅沢なお風呂だったようです。

瑠璃光院での楽しみ方はもっとある!

瑠璃光院

紅葉のリフレクションを撮影する以外にも瑠璃光院での楽しみはいろいろあります。

お抹茶をいただいてゆったり

瑠璃光院のお茶室

うれしいことにお抹茶をいただけます。

普段は瑠璃の庭を眺めながら1階のお座敷でいただくそうですが、この日は混雑していたのでお茶室でいただきました。

網代天井、丸窓からは美しい苔庭、床の間のお軸は「無事是貴人(ぶじこれきにん)」。落ち着きますね。お抹茶は1500円でしたが、お茶室以外では1000円のようです(2023年時点)

瑠璃光院のお抹茶

お菓子は「八瀬氷室」。氷室だけに外側を氷に見立てて中の小豆が透けています。しゃりっとした食感の中に上品な甘さの小豆が絶妙で、おいしかったです。お土産でも販売されています。

心落ち着けて写経体験 

瑠璃光院の写経体験

階段を上がったところに写経部屋があって、左にある机が奥まで並んでいます。紅葉を見ながらの写経体験です。

瑠璃光院の写経体験

受付の際に写経の用紙やボールペンなどをいただけるので、好きなときに写経、そして願い事を書いて本堂に納めます。もちろん、自宅に持ち帰って写経しても大丈夫です。

御朱印をいただく

瑠璃光院の御朱印

寺院に行くといつも御朱印をいただいていますが、瑠璃光院では本堂に置いてあって、珍しいことに自分で日付を書き込むようになっています。

瑠璃光院2023年秋の特別拝観の概要

■特別拝観の期間
2024(令和6)年10月1日~12月15日、10~17時
この期間内で予約が必要なのは 
11月9日~12月1日までで、それ以外の日は予約なく拝観できます。
予約は10月21日10時からホームページで受付中

瑠璃光院のアクセス

■瑠璃光院へのアクセス…電車がおすすめ
瑠璃光院は市街地から離れた比叡山の麓にあって、近くにも駐車場はないので、京都駅から電車や地下鉄、バスを利用することになります。およそ1時間近くかかります。

■宿泊…近くのホテルがおすすめ
瑠璃光院を訪れるのは、できるなら平日、それでも混雑するので朝一番がおすすめです。
・「エクシブ八瀬離宮」
瑠璃光院に一番近いホテルで、歩いて10分の場所にあるので、私はこちらに宿泊しました。朝もゆっくりできました。

・「ザ・プリンス京都宝ヶ池」
 地下鉄終点の国際会館駅から徒歩3分にあって、瑠璃光院までバスで30分ほど。ホテルのレンタル自転車を使うと20分ほどで行けます。ホテル内の紅葉も大変美しいのでおすすめです。

瑠璃光院
京都府京都市左京区上高野東山55
拝観料は2000円。
他から比べると少しお高いですが、十分満足できました。
駐車場なし

瑠璃光院の近くの紅葉スポット

璃光院を見た後は 近くの紅葉狩りも……

蓮華寺

蓮華寺

瑠璃光院から歩いて15分ほどにある蓮華寺も紅葉の名所です。若狭街道沿いにある加賀前田藩ゆかりの天台宗のお寺です。こじんまりしていますが、山門をくぐると圧倒されるほどの紅葉が待ち受けています。

書院に上がると素晴らしいお庭が眺められます。高野川の水を引き込んだ池には鶴石、亀島が配され、苔むした石もしっとり美しい。いく本もの柱で区切られた景色はまるで額縁の絵を観ているようです。

大勢の参拝者でにぎわう瑠璃光院と違って、訪れる人も少なく静かに紅葉を楽しむことができます。京都市内の紅葉の名所の混雑を思うと噓のようですが、市内から遠いこともあってあまり紹介されていない穴場かなって思います。

決して派手なところがありませんが ゆったりした気持ちになれる落ち着いたお寺です。

蓮華寺
京都市左京区上高野八幡町1
拝観料 500円
無料駐車場5台ほどあります。京都バス「上橋」下車すぐ

三千院  

三千院

久しぶりに三千院に足を延ばしました。瑠璃光院からは車で15分ほどです(京都バスでも15分ほど)。

三千院の庭

「東洋の宝石」と言われるほど美しい庭園の三千院、京都大原にある天台宗のお寺です。

三千院には四季を楽しめる二つのお庭があって、一つは杉やヒノキなど大きな木立に囲まれた往生極楽院を巡る「有清園」。

三千院の庭

一面の苔の上に赤いモミジが映えて美しく、苔むしたわらべ地蔵を見つけることができます。

三千院の庭「聚碧園」

もう一つが、丸く刈り込まれたポコポコっとしたサツキが印象的なお庭の「聚碧園」。赤い毛氈の敷かれたお茶席でゆったり紅葉を楽しめます。

三千院に来ると、いつも時間がゆっくりと流れるような気がします。忙しい日常とかけ離れた空気感が心落ち着きます。秋も美しいですが、冬の三千院もまた違う風景に出合えて格別です。ちょっと寒いですが……。
三千院
京都府京都市左京区大原来迎院町540
拝観料 700円
駐車場あり
JR京都駅からバスで「大原」下車、徒歩10分

ちょっと甘いものでも…「あぶり餅」

今宮神社

京都市街地に下りてきて立ち寄ったのが、北区紫野にある今宮神社です。紅葉真っ盛りでしたが、立ち寄った理由は、その東門の参道に名物のあぶり餅のお店があるからです。

京都のあぶり餅

2軒が向かい合ってあります。左が「一和(いちわ)」さん、右が「かざりや」さん。どちらも創業1000年とか400年とか……。平安時代や江戸時代から続く、日本で最古の和菓子屋さんとしても知られています。あぶり餅だけのお店で一子相伝のお味です。 

京都のあぶり餅

今宮神社の近くまで来ると、いつも炭火でお餅を焼く香ばしい香りが辺り一面に漂っていて、とても通り過ごすことなどできない……吸い寄せられてしまいます(笑)

あぶり餅「かざりや」

どちらのお店もおいしいのですが、私はたいてい「かざりや」さんへ。

「かざりや」のあぶり餅

黄な粉をまぶしたひと口大のお餅を、竹串に挿して炭火で炙って焦げ目をつけ、特製の白味噌だれを絡めたものです。

お座敷に上がっていただきます。おいしい~。香ばしさと、白味噌だれの絶妙な甘さでほっこりしてしまいます。私が子どもの頃と味もサイズも変わらず、何百年も受け継がれた味が、今宮神社を訪れる人々に愛されているんだなって思います。

<かざりや>
京都市北区紫野今宮町96
定休日:水曜日
駐車場あり(40台)
京都市バス46番「今宮神社前」下車すぐ
あぶり餅は一人前11本 600円(お茶付き、税込み)

京都の秋の紅葉鑑賞(瑠璃光院)

京都の紅葉、その美しさは特別だと感じます。自然が作り出す美しい景色は、遥か昔から受け継がれた建物と相まって独特の佇まいを醸し出します。瑠璃光院もその一つ……心躍る体験でした。

<追記>初夏の青もみじも見たくて、今年は7月にふたたび瑠璃光院を訪れました。色が変わるとこんなにも雰囲気が変わるんだと感激! またお伝えしますね。

■もっと知りたい■

奥野多佳子
奥野多佳子

1952(昭和27)年、兵庫県生まれ、大阪府在住のバラ愛好家。82年にタペストリー制作を始め、2000年に陶芸、04年に庭づくりを始める。豊中市美術協会会員。兵庫県立美術館で解説ボランティアに参加。ブログ「Soleilの庭あそび…布あそび♪」は人気です。

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