「種種雑多な世界」水木うららさん
2024.11.302024年07月31日
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第8期第4回
「自由なカエルが羨ましい」熊本美千代さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。第8期4回目のテーマは「あれ?」。熊本美千代さんの作品「自由なカエルが羨ましい」と山本さんの講評です。
自由なカエルが羨ましい
小鳥たちのために夫が巣箱を木にかけました。ある日のことです。
雨がふり始めた午後、巣箱の中を覗いてみると小さなカエルが雨宿りをしていました。
「あれっ? そこは小鳥さんのお家だよ」
カエルはじっとこちらを見つめるだけです。雨が止むのを待っているようでした。
翌日、庭のシクラメンの植木鉢の隙間からひょっこりとカエルが顔を出しました。
「あれっ? どこでも住まいにするんだね」
カエルは満足そうにシクラメンの下にもぐります。その可愛さに声をかけてしまいました。
さらに別の日、メダカの水槽のふちでじっと動かないカエルを見つけました。まるで番人のように見えました。
「あれっ? メダカの卵を守っているのかな? まさか食べないよね」
声をかけても黙っています。小さなアマガエルです。
カエルは水槽のふちに座ってまるでメダカの守り神のように見えました。
庭のあちこちでカエルを見かけるたびに「あれっ?」と思うことが増えていきました。どんな場所でも自分の住処にしてしまうカエルの姿に……自由でいいなあ。
少し羨ましく思える私です。
私の家の周りは田んぼが広がっています。そろそろ始まります。にぎやかな合唱練習。やっと慣れて楽しめるようになった蛙の歌。
「ゲロゲロゲロゲロ、クワックワックワッ」
雨の日も晴れの日も、カエルは庭の中で自由に過ごしています。小さな発見が面白くカエルとの不思議な出会いを楽しんでいます。
山本ふみこさんからひとこと
どうか、ゆっくりこん作品を味わってくださいまし。
雨がふり始めた午後、巣箱の中を覗いてみると小さなカエルが雨宿りをしていました。
ここで、もうもう、わたしはつかまれました。
カエルを羨ましく思う生き方が、これからはわたしたちヒトを導くのではないでしょうか。
詩的で、たおやかな作品が生まれました。
おめでとうございます。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
現在、次回9期のご参加者を募集しています。(抽選制)
詳しくは雑誌「ハルメク」9月号、またはハルメク365イベント予約ページをご覧ください。
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