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- ご当地グルメ|兵庫・高砂「かき幸」の「牡蠣料理」
冬の味覚、牡蠣料理は、広島から大阪に牡蠣を運び、港や川に泊めて料理を出した「かき船」が発達させました。そんなかき船がルーツのお店が、兵庫県の高砂市にある「かき幸」。大正9年創業の名店で、粋人たちが船上で舌鼓を打った牡蠣を楽しめます。
創業100年、かき船がルーツの「かき幸」
サンマといえば目黒に限る、というのは落語のオチですが、実は、牡蠣といえばかつては大阪に限ると言ってもいいほど、大阪の人は牡蠣が大好きでした。日本一の漁獲量を誇る牡蠣の産地は広島なのですが、その牡蠣を最も食べていたのは大阪人だったのです。
1660年代、牡蠣養殖を考えついたと言われる小西屋五郎八が、晩秋になると安芸国、つまり今の広島県で獲れた牡蠣を上方に船で運び、翌年の1月か2月まで大阪湾の港で生牡蠣を売るようになりました。これを「かき船」と呼び、1810年代にはそのかき船で料理を出すようになったのです。当時すでに牡蠣飯、牡蠣のお吸い物、酢牡蠣、牡蠣におからをまぶした「からまぶし」など、今に受け継がれる料理の数々が供されていたのです。
そんなかき船で、大正9年に高砂の港にやってきて料理を出したのがこの「かき幸」。もうすぐ創業100年になろうという老舗なのです。
白味噌仕立て? 広島オリジナル土手鍋とは
「かき幸」の名物メニューは、ご存知牡蠣の土手鍋です。土鍋の縁に味噌を土手のように塗った鍋を思い起こすかもしれませんが、このお店の土手鍋は、秘伝の白味噌仕立ての鍋の地に、葱や水菜、そして主役の牡蠣を加えてさっと煮るというもの。じつは土手鍋というのはもともとかき船のルーツ広島の土手吉助という牡蠣の行商人が大阪で味噌仕立ての鍋をふるまったことが由来だというのです。
「かき幸」の初代店主・幸之助さんは土手吉助と同じ広島県安芸郡矢野町の出身。つまりはこのお店の土手鍋こそが「オリジナル土手鍋」というわけです。濃い味噌だれでぐつぐつ煮込むと牡蠣の身は縮んで小さく固くなってしまいます。けれど、この仕立て方なら、熱々だけど中はしっとりジューシーな、程よく火が通った絶妙のタイミングで牡蠣をいただくことができるのです。鍋の地も味が濃すぎないので、牡蠣本来の美味しさを楽しめます。
もちろん、土手鍋だけが美味しい牡蠣の食べ方ではありません。まずは牡蠣酢味噌和えや殻付きの焼牡蠣で、べっぴん牡蠣の素の美味しさを味わいましょう! 次にソースではなく、牡蠣本来の風味を味わうためにフランス・ゲランドの塩を添えたみんな大好き牡蠣フライ! パルミジャーノ風味で焼いてマスタードソースを添える牡蠣のグラチネ! 焙烙鍋に入れて眼の前で火を入れた、蓋を開けると牡蠣の香りが広がる牡蠣の松前蒸し! お米に牡蠣のだしが染み込んだ炊き込みご飯! 料理が目の前に出されるごとに、びっくりマークが頭の上に浮かんでしまうほどの美味しさ。まさに牡蠣料理づくしという贅沢な時間を過ごせるのです。
牡蛎のない季節は絶品の穴子料理を
昔から牡蠣はRのつく月(4月~9月)だけ食べられる、と言われていますが、今では日本全国で牡蠣の養殖が盛んになり、1年中食べることができます。しかし、「かき幸」の絶品牡蠣料理の数々は、実は10月から3月までしか味わうことができません。なぜなら広島の牡蠣、それも能美島周辺の牡蛎しか使わないからです。
広島は、日本の牡蠣養殖の発祥の地であり、「かき幸」のルーツでもあります。その広島の能美島周辺は「清浄海域」と呼ばれ生食用の牡蠣を生産できる特別な海。そんな極上の牡蠣だけを厳選して使うというこだわりのため、どうしても牡蠣料理を食べられる季節が限られてしまうのです。
では、牡蠣が獲れない季節はどうするのでしょう。昔、かき船は冬の時期だけしか営業しませんでした。けれど、心配はいりません。瀬戸内海は牡蠣と並んで穴子の産地でもあるのです。4月から9月にかけては、その穴子をメインにした料理を楽しむことができます。アナゴの天ぷらや、焼きアナゴを使った穴子丼は、かき幸の春から夏にかけての名物料理なのです。明石から広島にかけての焼き穴子は、串を打って、あっさりとしたたれを使って炭火で焼き上げた香ばしいもの。江戸前鮨の柔らかい煮アナゴとはまた違った美味しさがあります。
牡蠣とアナゴ、ふたりの主役を季節によって使い分ける名店に、ぜひ一度ど言わず、二度、三度と通われてはいかがでしょう。「牡蠣とアナゴは高砂に限る」と思うかもしれません。
「かき幸」までの行き方(交通アクセス)
■かき幸
住所:〒676-0049兵庫県高砂市高砂町田町466
電話:079-442-0830
営業:昼12:00~14:00
夜17:15~22:30
定休日:月曜
交通:山陽電鉄本線高砂駅から車で5分
JR加古川駅(南口)から車で20分
駐車場有
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