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- 加賀百万石の伝統文化を体験!山代温泉の旅:石川県
大人女性に人気の温泉&周辺エリアの四季折々の楽しみ方を紹介する連載企画。今回訪れたのは、加賀温泉郷の一つ、山代温泉です。九谷焼や山中塗などの伝統工芸にふれる、しっとり落ち着いた「界 加賀」の体験レポートを紹介します。
山代温泉(石川県)の特徴・アクセス方法をチェック
山代温泉は石川県の加賀市と小松市にある加賀温泉郷(粟津・片山津・山代・山中)の一つです。
約1300年の歴史があり、古総湯と呼ばれる共同浴場を中心に、旅館や商店が立ち並ぶ湯の曲輪(ゆのがわ)という町並みが残り、タオル片手に町歩きを楽しむ観光客や、マイ風呂桶を持った地元の方々が行き交います。
最寄り駅のJR加賀温泉駅へは、東京から北陸新幹線金沢駅経由北陸本線特急で。大阪・名古屋からは北陸本線特急で2時間20分で到着します。2024年3月には北陸新幹線が敦賀まで延長しますので、より便利になります。加賀温泉駅を起点に、加賀の観光スポットを周遊する「キャン・バス」があり、好きな目的地への移動もスムーズです。
【東京からのアクセス】
- 東京駅→北陸新幹線で金沢駅(約2時間25分)→北陸本線特急で加賀温泉駅(約25分)→加賀温泉駅からタクシー(約10分)
- 羽田空港→小松空港(約1時間)→キャン・バス小松空港線で加賀温泉駅(約30分)→加賀温泉駅からタクシー(約10分)
今回訪れた温泉宿「界 加賀」と周辺観光スポット
今回泊った「界 加賀」は温泉街の中心、古総湯のすぐ裏手。かつて多くの文化人を迎え入れてきた老舗旅館「白銀屋」の歴史を受け継ぐ落ち着いた温泉旅館です。
紅殻格子(べんがらごうし)が印象的なフロントなどがある伝統建築棟と茶室は、国の登録有形文化財です。加賀水引や加賀友禅、九谷焼や山中漆器など、加賀の伝統工芸にふれられる宿として大人女性に人気です。
山代温泉は与謝野晶子や泉鏡花、北大路魯山人ら、文化人に愛された温泉地。良質の温泉はもちろん、九谷焼の窯跡や工房なども点在し、文化の薫り漂います。
また、11月から解禁のズワイガニをはじめ、北陸の海の幸も楽しみのひとつ。山代温泉の楽しい・おいしいスポットをご紹介します。
さまざまな工芸体験で、旅の思い出づくり「ゆのくにの森」
『ゆのくにの森』は敷地内に自然と調和する17の古民家の館があり、紙すきや加賀友禅、金箔はり、蕎麦打ちなど50種類以上の伝統工芸体験やお食事などができます。
数々の体験も楽しみですが、写真映えのスポットも多く、100本以上の傘が広がるアンブレラスカイ(11月末まで開催)や、明治初期の古民家・伝統美術の館にはハート形の窓も! 金箔の館には、天井・壁・襖・欄間が純金箔、畳は金糸で装飾された「黄金の間」があり、こちらも必見です。
今回は、数ある体験の中から、友禅の型染体験をチョイス! 友禅とは京都を発祥とする染技法のひとつで、加賀に伝わる加賀友禅は、加賀五彩(赤、黄、緑、紫、紺青の5色)を基調に、色をぼかして染色するのが特徴です。加賀友禅といえば、婚礼に用いられる華やかな花嫁のれんも有名ですね。
体験は、ハンカチやランチョンマット、Tシャツなどに花柄模様の型紙を使い、好みの色で彩色していきます。型の外側を濃く、内側を薄く塗るのがコツです。
何色か色を重ね、最後にアイロンかけをしてもらい出来上がりです。所要は20分ほどと手軽なのも、うれしいですね。
巨大な窯跡が歴史を物語る「九谷焼窯跡展示館」
九谷焼窯跡展示館は、昭和15年から同40年までに使用された登り窯、国指定史跡で江戸時代後期の九谷磁器窯跡、工房・展示棟があります。まず登り窯を見て、焼成窯の仕組みを知ることから始まります。
九谷五彩で彩られる九谷焼の始まりは江戸時代前期。大聖寺藩の領内だった九谷村(現・加賀市山中温泉)で始まりました。このころに焼成された焼物が古九谷です。
古九谷は1700年代初頭には滅んだといわれます。約120年後再興され、文政9年(1826)に山代に窯が移され、吉田屋窯(再興九谷)と呼ばれ、現在の九谷焼へと続きます。
九谷焼は、伝統的には構造と温度の異なる3種類の窯で3回焼きます。施設に展示されている窯は小規模な本焼の登り窯ですが、一度に約1000個入るそうです。
次に見学するのが巨大な登り窯の遺跡です。発掘と調査の末、吉田屋窯の窯跡と判明し発掘された状態のまま2002年に公開。建築家の内藤廣氏による最新の技術で造られた覆屋でこの文化遺産が護られています。100年以上受け継がれた壮大な窯跡を現地で実感してください。
築200年ほどの古民家の工房・展示棟では、九谷焼の変遷や道具類がわかりやすく展示されるほか、ロクロや絵付け体験もできます。
豊かな北陸の海の幸に舌鼓「亀寿司」
山代温泉では、日本海の恵みを堪能することができます。温泉街に佇む「亀寿司」は創業約60年。先代である父の跡を継ぎ、東京で腕を磨いた市川修一さんが切り盛りしています。
能登や氷見、そして山代温泉よりほど近い橋立港は、四季を通じて新鮮な海産物が水揚げされることで知られています。
春から秋が旬のノドグロや北陸を代表する貝・バイガイ、冬の味覚の王者・ズワイガニなど、ここでしか味わえない旬の鮨が鮮やかな手さばきで一貫ずつ供されます。
モダンな店内で地元作家の器を楽しみながら、旅のひとときを過ごしてみてはいかがでしょう。お昼は限定4組、前日までの予約が必要です。
山代を愛した魯山人の足跡「魯山人寓居跡いろは草庵」
北大路魯山人といえば、美食家・陶芸家として知られていますが、若き魯山人は書と篆刻を学び、「福田大観」と名乗っていました。縁あって山代温泉に逗留し、旅館『吉野屋』の別荘を仕事場として与えられ、宿の看板などを手がけました。明治初期に建てられた別荘の母屋と土蔵を繋いで、2002年から公開されているのが『魯山人寓居跡いろは草庵』です。
館内の展示室で作品が鑑賞できるほか、中庭を望む席ではお茶もいただけます。
魯山人は山代の須田菁華の窯元に出入りを許され、陶芸の才能を開花させました。
ここは陶芸家としての第一歩を歩み出した地であり、なにかと他人と衝突していた魯山人が唯一心安らぐ地であったようです。
「界 加賀」で唯一無二の体験を!魯山人の作品にも注目
山代温泉の街並みを散策した後はいよいよ「界 加賀」へ。さらに伝統工芸と美食を満喫し、肌に滑らかな温泉も楽しみましょう!
「界加賀」での唯一無二の体験は、豪壮な建物・伝統建築棟からスタートします。紅殻格子が美しい玄関から中へ。フロントホールは太い大黒柱と大きな丸太梁が伝統工法で組み上げられています。見上げた先には加賀水引のオブジェがあり、上に向かってスマホをかざすと、こんな素敵な一枚が撮れますよ。
「界 加賀」の前身は、北大路魯山人が好んで逗留した「白銀屋」という宿。ギャラリーには魯山人の作品が展示され、庭を眺めるトラベルライブラリーには魯山人が酔った勢いで書いたとされる「いろは屏風」が飾られています。最後の3文字「ならん(む)」が書かれていないのも粋人ならでは。庭の奥には茶室も残されています。
客室は全48部屋のうち、18室に温泉露天風呂が付いています。
加賀友禅などの伝統工芸が随所に取り入れられ、九谷焼の茶器セットも用意されています。
しっとり落ち着く客室で、旅装を解きましょう。
日本初、温泉旅館の金継ぎ工房
2023年4月に誕生した金継ぎ工房。温泉旅館内の専用施設としては日本初となります。
陶磁器の破損部分を漆で接着し、金などの金属粉で装飾する金継ぎは、美しく修復することで良品を大切に使い続けるという、日本人の知恵。宿のスタッフが日々使用する器を守っていきたいという想いから生まれた工房です。
本格的な金継ぎは、実は1か月以上かかる作業。金継ぎ体験では、専門家から指導を受けたスタッフが金継ぎの行程の一つを、手ほどきしてくれます。
今回体験したのは、金継ぎの最終工程。金継ぎ部分に金粉を撒く作業です。金粉を筆に取り、軽くやさしく均等に上から落とします。そして余分な金粉を払い、終了。
私が金粉を撒いたこの器は、宿で使い続けられるそうです。感慨深いですね。
山中塗の木地師の工房で手業のひととき
今回は、もう一つ貴重な文化体験も楽しみました。2024年2月29日まで実施中の「山中塗の木地師があつらえた無垢の酒器で日本酒を味わう体験」です。
山中塗の木地師の工房で、ろくろを回して酒器を削り出す作業を見学し、漆器製品の販売などを手掛ける西本浩一さんから山中塗の特徴を伺います。
山中塗は山代温泉の隣、山中温泉地区で作られる漆器で、「塗りの輪島」「蒔絵の金沢」「木地の山中」と称される県内の三大漆器の一つ。
その特徴は、ろくろを回しながら、木材に刃をあてて削り出したり、装飾を施したりする挽物木地であること。木が育つ方向に器の形を取る縦木取りで、堅牢でありながら美しく薄く、精巧な仕上がりになることです。
現在、山中塗の木地師は30人ほど、貴重な現場での作業が目の前で展開します。
2種類の酒器の形から好みのものを選ぶと、熟練の木地師が様々な道具を使いながら、器に仕上げていきます。
時に大胆に、時に繊細に木を削ると、木の香りがふわりと広がります。使用するのはトチ。道具も自分の使いやすいように手作りするそうです。完成した器は、夜の夕食時に実際に試せるというお楽しみが待っています。
器と料理のマリアージュを愉しむ夕食
北大路魯山人は「器は料理の着物」と表現しました。宿では、若手九谷焼の作家に料理が引き立つ器の製作を依頼、旬の味覚と器の両方を味わうことができます。
八寸の器は九谷焼の正角の蓋物。料理のスタートに相応しい華やかさと軽やかさがあります。山中塗をはじめ、さまざまな形やデザインの器とともに、揚げ物や台の物へと続きます。そして、10月までの特別会席では、鮑鮑の若芽包み蒸し、ノドグロの土鍋ご飯が味わえます。
冬の名物はズワイガニ。ダイナミックな「活蟹のしめ縄蒸し」、いただいてみたいですね。
そして、手業のひとときで作っていただいた酒器と、形の異なる2つの酒器が用意されます。この3種類の器で日本酒の味わいの違いを実践してみます。盃形はすっきりと軽い飲み口、筒形は日本酒の香りの強さや深みが感じられます。
そしてオリジナルの器は、バランスの取れたいい塩梅。できたばかりの無垢の器の質感も経験したことがない口触りでした。酒器は、茶・朱・黒のいずれかの色で漆が施され、後日届きます。今から完成品が楽しみ。
ご当地楽は勇壮な加賀獅子舞
「界」ではそれぞれの地域の魅力を楽しむご当地楽があります。
「界 加賀」では、スタッフによる加賀獅子舞が毎晩披露されます。八方睨みという独特の風貌の獅子が歯を鳴らしながら迫力の演舞、そして棒振りの演者が現われて獅子と対決します。
振付・衣装・音楽はすべてオリジナル、勇壮で華麗、独創的な加賀獅子舞が繰り広げられます。
終演後は獅子との記念撮影も、ぜひ!
開湯1300年の湯を夜も朝も
約1300年前、一羽の烏に導かれ、僧・行基が発見したと伝わる山代温泉。とろりとした良質の湯が自慢です。大浴場には男女別の内湯と露天風呂があり、内湯には九谷焼のアートパネルが飾られ、伝統工芸にも浸ることができます。よく温まり、ぐっすり良い睡眠をとりましょう。
翌朝のおすすめは、古総湯での入浴です。宿の目の前に立つ共同浴場は6時から営業。古総湯は明治時代の総湯を復元、浴室の床や壁には九谷焼のタイルが使われ、ステンドグラスがレトロな趣を出しています。
宿と同じナトリウム・カルシウムー硫酸塩・塩化物泉の温泉が満ちています。宿泊客は古総湯の湯浴みが無料、宿泊客の目印は部屋にある風呂敷ですので、忘れずに持参しましょう。
2階には休憩室があり、涼やかな風が吹き抜けます。温泉情緒たっぷりです。
豊かな海の幸や心地いい温泉、そして加賀百万石の文化。滞在の中で、貴重な伝統の技を見て、触れて、体験できる、『界 加賀』は大人女性の旅先として絶好ではないでしょうか。知識欲も満たされる風雅な旅を楽しんでみてはいかがでしょう。
今回宿泊した温泉宿はこちら
界 加賀
山代温泉の中心部、国の登録有形文化財の伝統建築棟と8階建ての客室棟から成る。70歳以上限定『温泉めぐり 界の定期券』の対象施設の一つとして、70代以上のシニア女性にも人気。
●住所:〒922-0242 石川県加賀市山代温泉18-47
取材協力:星野リゾート 文・写真:関屋淳子 編集:竹下沙弥香(ハルメク365編集部)
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