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- 茶畑にある大きな扇風機は何のためにある?
お茶にまつわる素朴な疑問について解説する「お茶の基礎知識」。今回は「茶畑にある大きな扇風機のようなもの」の正体を紹介します。実はこれ、茶葉の大敵・霜を防いでくれる「防霜ファン」という設備。おいしいお茶を育てるのに、一役買っているとか!?
新茶シーズン到来!「冬の寒さ」で、おいしいお茶になる
新茶期の到来を告げる「新茶初取引」。鹿児島・静岡など全国各地の茶市場から、今年も新茶初取引のニュースが届いていますね。
お茶の価格は、摘み取る時期・茶葉の品質・需要と供給のバランスによって決まります。中でも重要なのが、茶葉の品質。
私たちが飲む煎茶や抹茶などのお茶を抽出する茶葉は、チャノキ(茶の木:ツバキ科ツバキ属の常緑樹)の新芽や葉から作られます。
チャノキは屋外で育ち、茶葉の品質や豊作・不作はその年の気温・雨量などの外的環境によって変化するため、同じ茶農家のお茶でも、年によって品質は変化します。
お茶の品質を決める大きな要因が「冬の寒さ」。チャノキがしっかり休眠して養分を蓄えるため、冬は気温が低く、春暖かいという寒暖差がお茶をおいしくするとされます。
2022年は2月・3月の気温が低く、暖かい春を迎えたため、品質の高い茶葉になると期待が集まっています。
新芽を守れ!春先の茶葉の「霜害」を防ぐために
一方で、チャノキの新芽は寒さに弱く、霜が苦手。強い霜に当たると凍結して枯れてしまうことがあるため、芽が出る直前の3~4月や、茶葉を収穫する4月中旬~5月初旬までの時期の「晩霜(ばんそう)」や「遅霜(おそじも)」による霜害(そうがい)には注意が必要です。
この時期に出る新芽が、1年で最も品質の高い茶葉「一番茶」になりますが、霜の影響でお茶の品質に影響が出てしまうこともあります。そこで、昔から霜害対策としてさまざまな取り組みが行われてきました。
例えば、スプリンクラーで水をまく「散水法」や、物を燃やして畑の温度を上げる対策などです。
茶畑にある扇風機の正体は「防霜(ぼうそう)ファン」
霜害対策の一つに、茶畑にある大きな“扇風機”こと「防霜ファン(防霜扇:ぼうそうせん)」があります。ウィンドマシーンとも呼ばれ、大きな送風機で風を起こすことで霜の発生を防ぐアイテムです。
地表の温度が低い季節でも、地上6~7m辺りには「逆転層」という温かい空気の層があります。防霜ファンで逆転層の空気を地表に吹き付けると、茶葉周辺の空気を温めて霜を防ぐことができるのです。
しかも、防霜ファンは低温になると自動的に稼働する仕組みになっています。春先に大活躍する巨大扇風機なんですね。
碾茶や玉露などの被覆栽培も霜対策から生まれた!
日光を遮断して育てる被覆栽培も、16世紀後半に新芽を晩霜による被害から守るために行われていたという説があります。
しかし、霜よけ被覆の有無によって茶の品質が明らかに異なること、良質とされる茶は、林に囲まれ、霧の発生しやすい比較的日照の少ない茶園で栽培されていたことなどから、いつしか被覆栽培は、テアニンが豊富で旨みの多い碾茶(てんちゃ:抹茶の原料)や玉露などを育てる技術となりました。
冬の寒さを乗り越え、春の大敵「霜」からもしっかり守られた、旨みたっぷりの新茶を味わえるのも、間もなくです。楽しみですね。
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