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- 【書評】『北斎さんぽ 江戸の名所を巡る』他3冊
雑誌「ハルメク」の編集部員がおすすめする新刊情報を毎月お届けします。今月は、日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎の作品を手掛かりに東京の各地を訪ね歩き、時空を超えて北斎になったような気分を味わえる散歩ブックなど3冊をご紹介します。
片山喜康著『北斎さんぽ 江戸の名所を巡る』
日本を代表する浮世絵師であり、90歳で亡くなる直前まで筆をとり続けた“画狂”として知られる葛飾北斎(かつしかほくさい)。
この本は、「冨嶽三十六景」「隅田川両岸景色図巻」「新板浮絵」の3作品を手掛かりに、日本橋、浅草、上野、品川など東京の各地を訪ね歩く散歩ブックです。北斎が描いた江戸の作品と、東京に今も残る名所の解説を見ながら街を歩けば、時空を超えて北斎になったような気分を味わえます。
また、この本では「北斎BLUE」の秘密、西洋の「ジャポニズム」流行に北斎が与えた影響、破天荒な人生の謎など、押さえておきたい基礎知識も解説されているので、北斎の入門書としても楽しめます。本を片手に、江戸に思いを馳せる旅に出掛けてみませんか?
瀬尾夏美著『二重のまち/交代地のうた』
東日本大震災から10年。津波の被災地は嵩上げ工事などが進み、少しずつ新しい町へと生まれ変わりつつあります。と同時に、歳月とともに震災の経験者が減っていく中で、津波の記憶、古い町にあった暮らしの記憶は人々にどう継承されていくのか。
本書は、陸前高田市でボランティア活動をしていた著者が、被災地の人々に話を聞いて書き起こした文章や、当時の記録をまとめた一冊です。
かつての営みを下地に、新しい町での暮らしを受け入れていく人々の言葉には、当事者でなくてはわかりえない思いがあります。たとえわからなくても、私たちには聞くこと、寄り添うこと、語り継ぐこと、想像することが大切なのだと気付かされます。
土井善晴著『くらしのための料理学』
料理研究家・土井善晴(どいよしはる)さんの新刊は、「料理」の“そもそも”を知って、要領よく力を抜いて、“ちゃんとできる”ところまでを目標にした、まさに料理入門にふさわしい一冊です。
土井さんは、「料理とはなにか」という問いに答えられるようになるまでに、料理研究家として四十数年の経験と時間が必要だったと言います。その蓄積から「伝統料理と進化する料理」「和・洋の暮らしにある日常と非日常」など、過去から現在に至る日本の食についての客観的な考察が書かれています。
純粋に「料理とはなにか」を理解すれば、心地よく生きていくための道筋が見えてくるのでは……レシピではない料理書、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
※この記事は2021年6月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
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