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- 「やかまし村」の新訳で知った、リンドグレーンの思い
ハルメク世代真っ盛り、コラムニストの矢部万紀子さんがドラマや本、今気になるものごとをつづります。今回は、新訳が出版されたリンドグレーンの『やかまし村』シリーズをピックアップ! 何歳で読んでも面白い理由は、現代に通じる世界観にあるんです。
大好きだった、リンドグレーンの『やかまし村』シリーズ
小学校1年生の冬から4年生の春まで、神奈川県の逗子市に住んでいました。家の近くに市立図書館があり、子ども向けの本棚にはスウェーデンの児童文学作家・リンドグレーンのコーナーがありました。
リンドグレーンといえば、『長くつ下のピッピ』が有名です。もちろん、読みました。でも、私が一番好きだったのは、「やかまし村」シリーズでした。繰り返し借りたので、今でも棚のどのあたりに並んでいたかを覚えています。
そのシリーズが新たな訳と装丁になり、出版されました。『やかまし村の子どもたち』と『やかまし村の春夏秋冬』が2019年末までにそろい、『やかまし村はいつもにぎやか』が2020年夏に出る予定です。
スウェーデンでの初版のイラストが使われています。リンドグレーンの親友だった女性が描いたそうです。これが、とってもおしゃれです。『やかまし村の子どもたち』の表紙では、6人の子どもが並んでいます。それぞれの服がすごく今どきで、そのまま私が着たくなりました。
なつかしくなって再読しました。まるっきり古くなっていないことに驚くと同時に、小学生だった私がこのシリーズにひかれた理由が、なんとなくわかりました。
やかまし村には、性別も年齢にも縛られない自由さがある
スウェーデンの田舎の「やかまし村」を舞台にしたこのシリーズは、リーサという7歳の女の子の視点でつづられています。リーサと兄2人(ラッセとボッセ)のいる中屋敷、女の子2人(ブリッタとアンナ)がいる北屋敷、一人っ子の男の子(ウッレ)がいる南屋敷。3軒に住む、6人の子どもたちのお話です。
男子3人、女子3人というやかまし村の構成から、リンドグレーンの描きたいことが見えてきます。男の子も女の子も関係ない。そういう視点を、子どもたちに持ってほしかったのだと思います。
男の子たちは「女の子となんか遊べないよ」と言ったりしますが、結局は一緒に遊びます。例えば、干し草小屋で寝る。これは、男の子たちが決めました。新年になるまで起きている。こちらは女の子たちが決めました。でも、結局は6人でそうするのです。
干し草小屋にはオープンサンドイッチ、これは最初に女の子が作り、男の子もまねします。大みそかは「リンゴとクルミとねずの実ジュース」、これはお母さんが持たせてくれます。登場する食べ物がどれもおいしそうで、興味津々だったことも思い出しました。
『長くつ下のピッピ』とは違い、描かれるのは小さな村での日常です。でもそれが好きでした。やかまし村は穏やかですが、自由な空気が流れているのです。
男の子も女の子も関係なく、みんなが「子ども」で、彼ら彼女らが率先してものごとを決めていきます。何をして遊ぼうかとか、どこへ行こうかとか、そんなことではありますが、子どもたちは実にサッパリして、キッパリしています。
親たちも、子どもを枠にはめません。男の子が先に許してもらった遊びを、リーサが後から「私もいい?」と聞きに行きます。いつも「いいわよ」が答え、「女の子だからダメ」は一度もありません。
ブリッタとアンナのおじいさんが出てきます。目がほとんど見えないけれど、すごく物知りで子どもたちはみんなおじいさんが大好き。おじいさんの口癖は「よーし、やるぞ!」。いい感じですよね。
私はNHKの朝ドラ(連続テレビ小説)が好きで、それに関する本も出しました。何が好きかというと、ヒロインがみな「何者かになりたい女子」なところです。「何者」になるか、最初は本人もわかっていません。そこがいいのです。
リーサは将来のことを、こう言います。
<あたしは、自分がなにになりたいのか、まだよくわかりません。たぶんお母さんです。だって、あたしはちっちゃな子が大好きだし……。>
「……」の先に、何が待っているのでしょうか。がんばれ、リーサ。そう言いたくなる本です。
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