50代からの女性のための人生相談・144

人生相談:最期は自宅で!66歳からできる準備は?

太田差惠子
回答者
介護・暮らしのジャーナリスト
太田差惠子

公開日:2023.07.27

読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は、66歳女性の「夫婦ともに最期は自宅で迎えたいと思っています。どうしたら実現できますか?」という相談に、介護・暮らしのジャーナリスト、太田差惠子さんが回答します。

66歳女性の「自宅で最期迎える方法」についての相談

私は66歳、夫は70代です。最近、介護施設で生活していた親を看取ったばかりです。

介護が終わった安心感からか、最近の私は病気ばかりして、夫の助けがなければ生活できない状況になっています。しかし夫も70代になり、だんだん無理がきかなくなっています。

私たち夫婦は施設に入りたくないと思っています。どちらかが弱って、それを助ける方も高齢であるとき、どのようにしたら自宅で最期を迎えることができるのでしょうか?

(66歳女性・秋の桜さん)

太田さんの回答:フレイル予防&サービスのフル活用を!

太田さんの回答:フレイル予防&サービスの利用で可能

秋の桜さんに限らず、多くのシニア世代が、「できれば最期まで自宅で過ごしたい」と望んでおられます。

人生の最期の迎え方に関する全国調査(2021, 日本財団)」という調査結果では、下記のような結果が出ています。

死期が迫っているとわかったときに、人生の最期を迎えたい場所はどこかと尋ねた回答です。67~81歳の回答を見ると、多い順に「自宅」58.8%、次いで「医療施設」33.9%。その理由は、「自分らしくいられる」「住み慣れているから」などがあげられています。

一方、絶対に避けたい場所は、「子の家」42.1%、「介護施設」34.4%となっています。

要介護になることを予防することが重要

要介護になることを予防することが重要

「最期まで自宅で過ごしたい」という希望を実現するために必要なことは、1日も長く自立した暮らしをできるよう健康面に留意することだと思います。

「フレイル」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。健康と要介護の中間に位置した状態のことです。放っておくと要介護につながる危険が高まります。

逆に、フレイルに早めに気付き適切な対策を行うことで、進行を防ぎ、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)を延ばすことにつながると言われています。

フレイルを予防するために必要なことは、栄養(食・口腔機能)、運動、社会参加の3つ。フレイル予防のポータルサイトを用意している自治体もあります。例えば、東京都の「介護予防・フレイル予防のポータル」では、フレイルのリスク度を確認できるチェックリストもあります。

気がかりなことがあれば、今日から少しずつでも生活習慣を変えていきたいものです。

利用できる在宅サービスをトコトン利用

利用できる在宅サービスをトコトン利用

健康に留意することによって、要介護になることをある程度防げても、思わぬ病気やけがにより、自立した生活が難しくなることもあるでしょう。

高齢世代の二人暮らしの場合、一方の具合が悪くなると、必然的に残るもう一方が介護者となります。けれども、秋の桜さんも心配されているように、老々介護は共倒れになる心配が……。

心身に気がかりなことが生じたら、なるべく早く、地元の地域包括支援センターに相談しましょう。適切なタイミングで、適切なサービスを入れることで、事態が悪い方向に向かうことを阻止できます。

地域には、介護保険のサービスだけでなく、自治体のサービスや民間サービスなど、さまざまなサービスがあります。サービスを上手に使いながら、要介護度の低いときはもちろん、重くなっても在宅で過ごしている方が大勢おられます。

ただ、自費サービスを利用するには、それなりにお金がかかります。寝たきりの親を在宅で介護している女性を取材したとき「お金さえあれば、介護は何とかなる」と苦しそうな表情でつぶやかれた姿が忘れられません。

お金がすべてとは言いませんが、お金で何とかなる部分はあります。極端な話、どこまでもお金を使えるなら24時間体制でホームヘルパーや看護師に来てもらうことだってできるわけです。

また、今から夫婦間で「施設には入居しない」と決めてしまうことはおすすめできません。

もしも重度の介護が必要になったときに、施設介護を選べず、夫婦だけで介護を抱え込むことになりかねないからです(既述の通り、24時間体制でホームヘルパーや看護師に来てもらえるほどの経済力があるなら話は別です)。

「できる限り在宅で暮らせるよう、健康に気を付けよう」と配偶者と話し合い、まずはフレイル予防に取り組み、健康寿命を延ばしたいものです。

回答者プロフィール:太田差惠子さん

回答者プロフィール:太田差惠子さん(介護・暮らしジャーナリスト)

おおた・さえこ 介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)。京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」 等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)など多数。最新刊は『子どもに迷惑をかけない・かけられない!60代からの介護・お金・暮らし』(翔泳社)。

【参考資料】
人生の最期の迎え方に関する全国調査(2021, 日本財団)


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