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- 墓・葬式よりデジタル遺品の整理!終活が変わってきた
雑誌「ハルメク」のシンクタンク・生きかた上手研究所の所長・梅津順江が、ミドル~シニア世代の女性のトレンドを読み解きます。今回は「終活」がテーマです。近年「終活」に対するイメージに変化が表れていることがわかってきました。
「終活」の由緒と最近の傾向
普段から私は、50歳以上の素敵な女性にお会いして(最近はオンラインで画面ごしも増えました)、誌面や商品開発の種になる話を伺ったり、アンケートを介して半歩先の未来を予見したりしています。読者との会話やデータで出てきた驚きや気付き・学びから、シニア世代の実態や意識、日常の困りごとや工夫からトレンドを汲み取ってお伝えしていきます。
早速ですが、みなさんは「終活」と聞くと何をイメージしますか? 「終活」という言葉が流行語大賞にノミネートされたのは2012年。その年3月のイミダスの時事用語辞典には、『自分自身の死に向けて葬儀や墓などの準備をする活動を、就活や婚活になぞらえた言葉』という説明があります。それから10年近くがたち、「終活」の意味が広義になっています。「お墓」「葬儀」という死後の準備だけでなく、「片付け」「終の住まい」「デジタル遺品」など生前整理まで終活の幅は多様で広域になりました。
またコロナ禍において、「終活」は多くのシニアが取り組んでいるテーマの一つでもあります。
アンケートで読み解く「終活」への認識の違いと変化
生きかた上手研究所では、定期的に「終活に関する意識調査」を行っています。
2018年11月に行った調査(60~74歳の男女720名、WEBアンケート)では、男性は「お墓の準備・用意」など死後の準備を優先させて実施していて、その割合は39.3%と最も高い結果でした。一方、女性は「家具や荷物」「衣類やアクセサリー」「アルバムや手紙などの思い出」を整理・処分する「片付け」を実施している割合が高く、男性に比べて10ポイント以上高かったのです。2年半前から、女性は「終活」を広義に捉えていたということになります。
生きかた上手研究所では、2021年3月、同年代の男女1008名に「終活に関する意識調査」をWEBにてアンケートしました。2018年調査と比較すると、この2年4か月の間で終活に対する認識や必要性がさらに変化していることが明らかになりました。
「お墓・葬儀」から「デジタル・情報整理」へ「終活」の意味が変化?
終活への認識や必要性はどのように変化しているのでしょうか。
「あなたの『終活』の認識を教えてください(選択肢の中から複数選択)」という質問に対して、「パソコン内やSNSなどのデータの整理・消去」を「終活」と見なす割合は1008名中251名(24.9%)、「インターネットやSNSなどのデジタル関係の登録・加入サービスの情報整理」は230名(22.8%)でした。
意外にも、これまで「終活」の王道とされていた(2018年調査でも多かった)「お墓の準備・用意」は、213名(21.1%)、同様に2018年調査で多かった「お葬式の準備」は208名(20.6%)で、「終活」として認識されている割合がぐっと減りました。
また、「生活面での利用サービスの情報整理(電気・ガス、生協、ジムなど)」は、前回の720名中124名(17.2%)から今回1008名中189名(18.8%)と割合が増えています。
この2年間で、「デジタル遺品」「情報の生前整理」が終活の一部としてすっかり定着したといえるのではないでしょうか。
「情報まわりの整理」の終活を必要と考える人も増えている
「あなたの今後の生活や自分の死後のことを考えて『必要』だと思うこと(複数選択による回答)」も聞いています。ちなみに、すでに終活を始めている人を含めた「必要だと思う」人数と割合になります。
「お墓の準備・用意」を「必要だと思う」は1008名中207名(20.5%)、「お葬式の準備」は144名(14.3%)で、いずれも2年前の調査比で低下しています。前回調査は「お墓の準備・用意」は720名中162名(22.5%)、「お葬式の準備」は114名(15.8%)でした。
一方、「生活面での利用サービスの情報整理」は1008名中182名(18.1%)、「インターネットやSNSなどデジタル関連の登録・加入サービスの情報整理」は201名(19.9%)、「パソコン内やSNSなどのデータの整理・消去」は237名(23.5%)です。「情報整理」の項目ほぼすべてにおいて必要と考える人の割合は、前回調査よりも0.4%~3%と増加している結果となりました。
デジタルまわりの終活ビジネスが急速に求められていくことを暗示しているようです。
なぜシニアは「デジタル終活」を必要だと感じているのか?
さて、デジタル終活に対して、どんなマインドが働いているのでしょうか。
「子どもはネットのパスワードが面倒だと思うので、自分で処理したい」(66歳・女性)
「物品とデジタルデータは最終的に子供が処分できるよう準備しておく予定。私個人の付き合いなどは子どもに引き継ぐ必要はないので」(62歳・女性)
フリーコメントを読むと、コロナ禍でデジタル化が進む社会情勢に、「遺された家族に迷惑をかけたくない」というマインドが加わり、より強い欲求となっていることがわかります。
モノやカネに関する終活ビジネスはありますが、情報に関する終活ビジネスはこれからの領域です。デジタル遺品処理や情報整理に関する終活は、「しておきたい」「しておくべき」という強いニーズがある割に、「何から手をつけていいのか、わからない」「どういう方法が正しいのか、わからない」というのが現状です。デジタル終活がシニアマーケットの一つの分野となっていくのはそう遠くはないと見ています。
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