熱いおもてなしに感動!

四国バースデイきっぷで観光列車・伊予灘ものがたりに

公開日:2020.02.15

更新日:2022.04.28

大の鉄道好きマンガ家・文筆家のYASCORN(やすこーん)さんが、気軽に行ける女性一人旅をご紹介。今回は、「四国バースデイきっぷ」をお得に使いこなして、人気の観光列車「伊予灘ものがたり」に乗ってきました。※2020年2月取材当時の内容です

JR四国バースデイきっぷは、観光列車にも乗れる!?

2020年を迎え、みなさまいかがお過ごしでしょうか。年が明けて1月は、私の誕生日でした。たまには自分を労おうと、今回は誕生日を祝う旅に行ってきました。行き先は四国。
まさに誕生日にぴったりの「JR四国バースデイきっぷ」というきっぷがあるのです。

この区間が乗り放題となる(JR四国ツアーより転載)
この区間が乗り放題となる(JR四国ツアーより転載)

「JR四国バースデイきっぷ」とは、誕生月の連続3日間、JR四国全線と土佐くろしお鉄道全線の特急列車が乗り降り自由になるきっぷ。乗車券・指定券・特急券・グリーン券が含まれる「グリーン車用」と普通車自由席用があり、連れがいる場合、同行程で3人までこのきっぷが買えます。

今回は、特急列車が乗り放題になる「グリーン車用」を購入。なんとこのグリーン車用きっぷだけで、四国の観光列車「伊予灘ものがたり」や「四国まんなか千年ものがたり」にも乗れちゃいます。

バースデイきっぷ
バースデイきっぷ

きっぷはJR四国のホームページで乗車日の1か月前から申し込みが可能です。

「伊予灘ものがたり」は、2015年の日経新聞発表「お薦めの観光列車ランキング」で1位を取った大変人気の列車。乗ると決めたら、乗車日から1か月前の朝10時に発売となる指定券を手配しておきましょう。

ホームページでバースデイきっぷを申し込む際に、伊予灘ものがたりの指定席の希望も書いて送りましょう。食事券の購入希望も、このとき一緒に書いておきます。

今回取ったきっぷ
今回取ったきっぷ

以降は、JR四国の方とメールでのやりとりとなります。それからバースデイきっぷを買う際には、誕生日が確認できる公的証明書のコピーか画像を送らなければなりません。
チケットが手配できたら、ゆうパックで四国から発送されます(別途送料がかかります)。

ちょっと手間がかかりますが、取れたときの喜びはひとしお。今回は、希望した行程のきっぷがすべて取れました! さっそく愛媛県の松山へ向けて出発です。

LCCで松山駅へ。伊予灘ものがたりに乗り込みます

(左)松山駅にある駅そばの名物「じゃこ天そば」(右)市内電車と松山駅
(左)松山駅にある駅そばの名物「じゃこ天そば」(右)市内電車と松山駅

バースデイきっぷを目一杯使うために、使い始める前日に飛行機(LCC)で現地入り。翌朝の伊予灘ものがたりの第1便は朝8時台に出発なので、前乗りしないと間に合わないのです。

翌朝8時、JR松山駅ホームで待機している伊予灘ものがたり
翌朝8時、JR松山駅ホームで待機している伊予灘ものがたり

伊予灘ものがたりは土日を中心に、1日に2往復、4便運行されます。

1便の「大洲編」は松山〜伊予大洲、2便の「双海編」は伊予大洲〜松山、3便の「八幡浜編」は松山〜八幡浜、4便の「道後編」は八幡浜〜松山、といった具合に、予讃線の松山—八幡浜間を行ったり来たりしています。

1号車「茜の章」車内
1号車「茜の章」車内
2号車「黄金の章」車内
2号車「黄金の章」車内

私は4便のうち、1便の「大洲編」を除く3つに乗車しました。「おや、1便に乗り遅れた?」と思われた方、そうではありません。後ほどご説明しますね。

1、2便とルートがかぶるので、3便の「八幡浜編」松山〜八幡浜間からご紹介します。私の席は3便ともカウンターの1人席。海側なので、1人の時間を満喫するのにぴったりです。

乗車時はアテンダントさんがお出迎え
乗車時はアテンダントさんがお出迎え

乗車駅ホームではアテンダントさんが出入り口にマットを敷き、お客様をお出迎え。ちょっとしたセレブ気分です。駅員さんたちも横断幕を持って、お見送りのスタンバイ。

かわいらしいアテンダントさんたち
かわいらしいアテンダントさんたち

大勢に見送られながら松山駅を出発した伊予灘ものがたりは、海の方へと向かいます。伊予市を過ぎ、伊予大洲までの海沿いの予讃線はさらに「愛ある伊予灘線」と公式で名付けられていて、大好きな路線です。出発直後、車掌さんがきっぷ拝見、アテンダントさんが車内販売にきました。

アテンダントさんは6名、みんな女性で、大変かわいらしい方ばかり。そして接客態度が極めて丁寧で感激しました。まるで一流レストランに訪れたかのようです。

一面の菜の花畑
一面の菜の花畑

海が見えてきました。あいにくの曇りですが、雨が降らずによかったです。水平線が広がってきた頃、「みなさま、下をご覧ください」とのアナウンス。窓から下を覗き込むと、海沿いの土手に一面の菜の花畑! 暖冬の影響で、通常より1か月も早い開花だそう。この日も1月なのに、冬とは思えないくらい暖かい日でした。

こちらは4便(最後)で訪れた際の下灘駅
こちらは4便(最後)で訪れた際の下灘駅

列車は下灘駅に到着。下灘駅は海が目の前に広がる風景が有名な駅なので、全便がしばらく停車します。みんな降りて記念写真を撮ったり、海を眺めたり。通常は無人駅ですが、伊予灘ものがたりが来る時間に合わせて写真を撮りに来る方もいて、賑わっています。ここから見る海に沈む夕日が見事なのですが、今日は望めそうにありません。こちらでの夕日は、以前ご紹介した「絶景と温泉・讃岐〜伊予旅」をぜひご覧ください。

(左)3便の「夕日セット」(ロゼワインとキッシュ)(右)海に沈む夕日をイメージしたワイン
(左)3便の「夕日セット」(ロゼワインとキッシュ)(右)海に沈む夕日をイメージしたワイン

夕日の代わりに「夕日セット」を注文してみました。この3便めでは、食事の予約はしていません。しっかりした食事は事前予約が必要ですが、予約なしでもケーキセットやアルコール、おつまみなどが、その場で購入できます。よく乗っている路線でも、列車や環境が異なると、景色も違って見えてくるのが不思議です。

2便「双海編」での食事。この日の1食め
2便「双海編」での食事。この日の1食め

実は、この1つ前に乗った2便「双海編」(伊予大洲—松山)を食事付きにしていました。

これが大変豪華で、目も舌も大満足! 重箱を開くと、丁寧な造りのおかずがずらり。地産地消をテーマに、地元内子町の食材がふんだんに使われたお料理が並びます。お品書きも添えられているので、一つ一つ見ながらゆっくりと堪能。せっかくなので、地ビールもいただきました。伊予灘ものがたりのマークの入ったグラスはお土産でも売っています。

テーブルにある手描きの地図
テーブルにある手描きの地図

ゆっくり堪能……と書きましたが、伊予灘ものがたりは駅で降りたり景色を見たり、写真を撮ったりと結構忙しいのです。食べかけのまま駅で降り、再び席に戻ると、お弁当が乾燥しないようラップがかけられていました。アテンダントさんの気遣いがうれしいですね。

テーブルにはアテンダントさんの手描きだという地図もあります。いろいろな見所がわかりやすく描かれていて、車窓と見比べたりするのも楽しいです。

線路のトリックを使って、うまく移動します

五郎駅では地元住民の方々がお出迎え
五郎駅では地元住民の方々がお出迎え

列車は伊予大洲駅の一つ手前、五郎駅を通過する際、ゆっくりと走行します。こちらで名物のお見送りがあるのです。地元のみなさんが、それぞれ手作りの横断幕や、たぬきのうちわ、駅を装飾して出迎えてくれました。今は無人駅ですが、駅長がいた頃に野生のたぬきを餌付けしていて「たぬき駅長のいる駅」といわれていたそう。

「たぬき駅長」に扮した井上さんと窓越しにハイタッチ
「たぬき駅長」に扮した井上さんと窓越しにハイタッチ

たぬき駅長さんが私を見つけて、笑顔でハイタッチしてくれました。私とたぬき駅長さんとは知り合い……いえ、つい先ほど知り合いになりました。実は私、4便のうち、1便の伊予灘ものがたりをこの駅で、たぬき駅長さんらと共に見送っていたのです。

五郎駅ホームにて。伊予灘ものがたりを待つみなさん
五郎駅ホームにて。伊予灘ものがたりを待つみなさん

伊予灘ものがたりの一般の方のお見送りの熱心さは、噂で聞いていました。そしてぜひそれを体験してみたいと思ったのです。そこで朝から特急で先回りして五郎駅に行き、1便を見送っていたのでした。その特急券も、もちろんグリーン車用きっぷでまかなえます。

1便めの伊予灘ものがたりが松山駅を出発したのは8時25分。そして私が見送るために松山から列車に乗ったのが9時3分。おや?先に到着しないとならないのに、むしろ私の出発の方が遅いのはなぜでしょう? 単線の路線なので、追い越しはできないはずです。

伊予大洲駅にある路線図
伊予大洲駅にある路線図

実はトリックは路線図にあります。予讃線は向井原から先は海沿いを走る伊予長浜経由と、内陸側を走る内子経由に分かれます。私が乗ったのは特急で、特急は全て内陸側の路線を走るのです。伊予大洲へは9時41分着、そして9時46分発の海沿い側の松山方面各駅停車に乗り換え1駅戻り、無事、五郎駅へと先回りできたのでした。

ちなみに伊予灘ものがたりが五郎駅を通過するのは10時20分前後です。

お見送りは不思議とテンションが上がる
お見送りは不思議とテンションが上がる

ところで、こちらのたぬき駅長の正体は、駅近くで理容店を経営している井上さん。井上さん中心に、ご近所や遠くから車で駆けつける方々が、朝から伊予灘ものがたりを待っています。週末は、ほぼこれに費やしているとか。列車はこの駅では決して停まりません。大雪で列車がたいそう遅れた日も、ずっとホームで列車を待ち続けていたそう。「もてなしたい」という気持ちだけでここまでしてくれるのかと、とても感激しました。

かわいい猫駅長もいます!伊予上灘駅の熱烈なお見送り

松山行きは2号車「黄金の章」が先頭になる
松山行きは2号車「黄金の章」が先頭になる

さて、私は今行った列車の折り返し、伊予大洲駅10時55分発の2便に乗らなくてはなりません。急いでタクシーに乗り、15分ほどで伊予大洲駅に到着。無事に間に合いました。

(左)土手の向こうにお城が見える(右)大洲城からのお見送り
(左)土手の向こうにお城が見える(右)大洲城からのお見送り

伊予大洲駅では下車する方もいました。駅を出ると「お城をご覧ください」とのアナウンス。見ると近くの土手と、遠くの大洲城の左下で、大勢の方が旗を振ってくれていました。たまたま観光に訪れた方たちが、お見送りに参加しているようです。

(左)4便のアフタヌーンティーセット(右)2便の食後に出たコーヒー
(左)2便の食後に出たコーヒー(右)4便のアフタヌーンティーセット

終点、八幡浜駅から折り返す4便「道後編」で、再び松山駅まで乗車します。こちらでは事前予約したアフタヌーンティーセットを堪能しました。サンドウィッチや季節のケーキ、スコーンなどが地元で作られる砥部焼という陶磁器で提供されます。カップやティーポットも砥部焼です。これらは手作りなので、デザインが一つ一つ違っています。

2便、4便で出会える犬駅長と猫「福」駅長
2便、4便で出合える犬駅長と猫「福」駅長

途中の景色やおもてなしは行きと同様、伊予上灘駅ではかわいい駅長たちがお出迎えしてくれました。犬駅長のマロンと、猫「福」駅長のカンナとトラです。マロンとカンナはお客さんに抱っこされたりして愛想を振りまいていましたが、トラはずっと寝ています。

薄目を開けてチラリと見るトラ福駅長
薄目を開けてチラリと見るトラ福駅長

じーっと見ていると、なんとトラはたぬき寝入りをしていました! 人だけでなく、犬、猫、たぬき? といろいろな動物のお見送りも楽しいです。

お見送りしてくれたみなさん
お見送りしてくれたみなさん

すべて紹介しきれませんが、ガソリンスタンドの方が着ぐるみを着てお見送りしてくれたり、線路沿いの家に住むご夫婦が、飼っている犬たち4匹と勢ぞろいでお見送りしてくれたり。始発終点駅では清掃員の方たちが並んでお見送り。お見送りも見所というのは本当でした。公式パンフレットにも地元の方々のお見送り写真が載っているくらいです。

伊予灘ものがたりでいただいた手書きのバースデーカード
いただいた手書きのバースデーカード

そして最後、降りる間際にアテンダントさんから「お誕生日おめでとうございます」とバースデーカードをプレゼントしていただきました。うれしい……こういうサービスが、リピートにつながっていくのですね。熱いおもてなし、確かに受け取りました。

1日めのルートはこちら!
1日めのルートはこちら!

ハイシーズンは指定券がなかなか取れませんが、ぜひまた季節を変えて乗ってみたいです。

☆本記事に記載されている写真や本文の無断使用・ 無断転載を禁じます。また掲載情報は取材時点のものであり、最新の情報は施設等へお問い合わせください。

 

※2020年2月取材当時の内容です
 

 

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YASCORN

駅弁・駅そばが好きな鉄道好き漫画家&文筆家。温泉ソムリエ。児童誌から鉄道誌まで幅広く活動中。著書に「おんな鉄道ひとり旅」(小学館・プチコミック増刊で連載中)、「メシ鉄!!!」電子書籍1〜3巻(集英社)他。「鉄道漫遊記」を東洋経済オンラインで連載中。HP: yascorn.com

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