新しくなった特急踊り子号で、伊豆の温泉巡りへ!
2020.04.152022年05月02日
「南伊豆フリー乗車券」を使いこなす伊豆旅(後半)
青い特急「サフィール踊り子」で優雅に伊豆を食べる旅
大の鉄道好きマンガ家・文筆家のYASCORN(やすこーん)さんが、気軽に行ける女性一人旅をご紹介。お得な「南伊豆フリー乗車券」を使って伊豆半島をお得に巡る旅をお届けします。※2020年4月取材当時の内容です
豊富な湯量でぜいたくな、金谷旅館の千人風呂
宿泊した金谷旅館の千人風呂は、大正4年に建てられました。長さ約15m、幅約5mの浴槽は総檜風呂として日本最大。男性用とされていますが、女性も入れる混浴です。バスタオル着用可なので、ひと安心。早起きして、朝風呂をいただきます。
初めての混浴に、ドキドキしながら入っていったら、湯気でほぼ見えません。人もいないようでした。気温が低いと、お湯との温度差で湯気が多く出るようです。夏は湯気が少ないのかもしれませんね。お湯がやわらかく、ぬるめなのでずっと入っていられます。飲泉もできるようです。湯口からドバドバと豊富な湯量が流れ続ける自家源泉、なんともぜいたくです。
千人風呂は、女性更衣室から直接行けます。女性更衣室にある鍵を持ち、2カ所のドアを開けて千人風呂に入れるようになっているのです。ドアは女性側からしか開閉できません。閉まると自動で鍵がかかるので、帰って来るときは、持っている鍵で外から開けて入るようになっていました。
次は、伊豆急下田駅で下車。展望台に登ります
さて、南伊豆フリー乗車券を使って蓮台寺から一駅、終点の伊豆急下田駅に向かいます。伊豆急下田駅の改札口は、入口専用と出口専用に別れています。出口はまるで関所のような造り。駅員さんの立つ改札自体は黒船のデザインになっています。
駅前には「開国の湯」という無料の足湯があり、黒船のオブジェも。ここ下田は、かつて黒船が来航した街。あちらこちらに黒船モチーフのものがあり、歴史を感じる展示物なども多いです。
駅の待合室は、横浜〜伊豆急下田間を走る観光列車「ザ ロイヤルエクスプレス」をデザインした水戸岡鋭治さんが同じイメージで作られています。「ザ ロイヤルエクスプレス」は東急が催行し、JR東日本と伊豆急行が運行する観光列車。食事や観光がセットになったプランなどがあり、ワンランク上の鉄道旅を味わえます。こちらも一度は乗ってみたいものです。
駅から歩いてすぐの下田ロープウェイも同様に、水戸岡さんがデザインしたもの。青い空に、さらに濃い青の車体が映えます。車内は天然木を使用していて、高級感があります。
ロープウェイは一気に寝姿山山頂駅へ。寝姿山というのは、下田市内から見ると、女性が仰向けに横たわって見えるからだそう。山頂は自然公園になっていて、遊歩道沿いにたくさんのお花が咲いていました。遊歩道は、30分ほどで一巡りできます。
少し登ると展望台に到着。伊豆の島々が見渡せる、すばらしい景色です。それにしても本当によいお天気! ここで景色を眺めながら朝ごはんを食べることにします。実は伊豆急下田駅の待合室横の売店で、駅弁を買っていました。
選んだのは「金目鯛の塩焼き弁当」。ついついお酒に合うお弁当を選んでしまいます。やはり伊豆に来てキンメ電車に乗ったからには、金目鯛が食べ鯛、いや、食べたいですよね。この鯛、身が厚くて脂が乗っていて、本当においしいです。海苔が載ったご飯も、磯の風味がとてもよい感じ。日本酒が飲みたくなりますが、朝なのでビールにしました。
伊豆急下田駅から、今度はバスで海の洞窟「龍宮窟」へ
再びロープウェイに乗り、伊豆急下田駅まで戻ります。ここから発着する東海バスは、上記の路線であれば、南伊豆フリー乗車券が使えます。ずらりと並んだバス停の前にバスが発車直前に入ってきますので、整理券を取って乗り、下車時にフリー乗車券を提示します。龍宮窟まで往復する便は、とても少ないのでちゃんと計画を立てて行きましょう。田牛行きに乗車して、約20分で龍宮窟バス停に到着です。
バス停の目の前は透明で遠浅の海と砂浜が広がっていました。夏は海水浴客で賑わうようです。龍宮窟入口ヘはバス停から歩いて3分ほど。周りにはお店などが全くなく、観光地化された感じがありません。けっこう急な階段で降りていくと、龍宮窟はすぐでした。
龍宮窟は、波の浸食によってできた洞窟。天井の一部が崩れて、直径50メートルの天窓が開いています。そこから光が差し込んで、なんとも神々しいです。よくドラマのロケ地としても使われています。
龍宮窟は上から見下ろすこともできます。入口裏の駐車場から遊歩道を上がっていくと、ちょうど真上へ。見下ろすと、ハートの形になっているのがわかりますでしょうか。先ほど下から見上げたら、上にいた人と目が合いましたが、今度は上から下にいる人たちと目が合いました。
バスを途中下車して、下田をてくてく散歩します
龍宮窟をゆったり回っても、1時間ほどで折り返すバスに余裕で間に合いました。バス停から近く、手軽に自然を楽しめるコースとしておすすめです。さて、バスで再び駅方面に戻りつつ、途中下車。
かつてペリーが来航した時に歩いたと言われる川沿いの「ペリーロード」を散策したり、街中にある銭湯・昭和湯で汗を流したりしました。
街中にある日新堂は大正11年に開業した菓子店。かつて三島由紀夫さんが、こちらのマドレーヌをかなりひいきにしていたとか。1つ買っておやつに食べつつ、あちらこちらにある、なまこ壁の建物を眺めながら駅まで歩いて戻りました。
今回の旅の目玉!特急「サフィール踊り子号」に乗車します
さて、本日のメインともいえる、特急「サフィール踊り子」にいよいよ乗車です。サフィール踊り子は、平日は東京〜伊豆急下田間を1日1往復のみ。帰りの上り列車は伊豆急下田駅を14時12分に発車するので、あまりのんびりできません。しかも13時29分には下り列車が入線します。私は写真を撮るため、それまでに待ち構えていました。
サフィール踊り子は全車両グリーン席。運賃と特急料金以外に、グリーン券またはプレミアムグリーン券が必要です。運賃は南伊豆フリー乗車券が使えるので、特急券・グリーン券のみあらかじめ買っておきました。
ここで注意したいのが、きっぷの発券。人気列車なので、事前に「えきねっと」で予約しておいたのですが、発券は基本、JR東日本の駅でしかできません。伊豆急下田駅では受け取れませんので、あらかじめ東京駅などで発券しておきましょう。
私は通常のグリーン車、海側2列シートの窓際を予約しました。1人席もありますが、山側なので、景色は断然2列シートの方がよいのです。どの車両も天窓があり、ガラスも大きく明るいです。未来っぽさもあって、かなり私好みの空間でワクワクします。
さらにワクワクなのが、この列車にはカフェテリアが付いていること!列車に乗りながらご飯を食べられるのを、本当に楽しみにしていました。こちらもあらかじめ「サフィールpay」というサイトで予約しておいた方がいいです。空いていれば、当日でも予約可。料金は事前にカード決済でも、当日カードや現金払いでも大丈夫です。
ただしカフェテリアで食べられるものは、ヌードルとそのセットのみ。20分間、4回の入れ替え制なのでゆったりとしてはいられません。ヌードルはミシュラン二つ星を獲得した「傅(でん)」の料理人、長谷川在佑さん監修。昆布とかつおだしの醤油ベースのスープにちぢれ麺、半熟卵に、かわいいかまぼこ。やさしく深い味わいで、もっと食べたくなりました。ミネラルウォーターは、飲泉もできる奥下田の温泉「観音温泉」の温泉水です。
ちなみに私が案内されたのはカウンター席。海を目の前にヌードルを食べるって、とてもテンション上がります。うれしそうに食べていたら、アテンダントさんに「あの、やすこーんさんですよね?」と話し掛けられました。なんと以前、私のイベントに来てくださった方だそう! 驚きの出会いです。旅はこういうことがあるから楽しいですね。
興奮冷めやらぬまま席に戻り、回ってきた車内販売で富士山パンとコーヒーを買いました。富士山パンはホワイトチョコに金粉が掛かっていて、ぐり茶のパン生地に、ほうじ茶餡と凝っています。こちらもなかなかおいしかったです。
座席はすべてコンセントが付いていて、リクライニングもばっちり。足元もオットマン風に持ち上げることもできます。広い空を見ながら横たわっていたら、あまりの開放感と快適さに眠くなってきましたが、もったいないのでしっかり目を開けていました。東京駅までは約2時間半とあっという間。もっと長く乗っていたい列車でした。
南伊豆フリー乗車券をフルに活用して、計画を立てましょう。なかなか旅や外出ができない時ではありますが、旅の計画を立てるだけなら家でできます。私のコラムを参考に、ぜひ机上旅行してみてください。
※現在、カフェテリアおよび車内販売の営業は利用できません。(4/9〜5/31までの予定)
☆本記事に記載されている写真や本文の無断使用・ 無断転載を禁じます。また掲載情報は取材時点のものであり、最新の情報は施設等へお問い合わせください。
※この記事は2020年4月取材当時の内容です
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