難聴は認知症の最大リスク!?50代で始めたい耳ケア

公開日:2024年03月28日

聞き間違いは耳の老化のサイン?耳と脳の関係とは

難聴は認知症の最大リスク!?50代で始めたい耳ケア

今野裕之さん(ブレインケアクリニック名誉院長)
監修者
今野裕之
監修者 今野裕之 ブレインケアクリニック名誉院長

耳の聞こえは年齢とともに低下し、音や言葉が正確に聞き取れなくなっていきます。「年のせい」と流してしまいがちですが、実は難聴は認知症の最大リスクの一つ。認知症診療医の今野先生に、耳と脳の関係や正しい耳ケアについて教えてもらいます。

50代から増える加齢性難聴

50代から増える加齢性難聴

難聴は一般的に50代から増え始め、80歳以上では70~80%の人に症状がみられるようになります。

難聴の原因はさまざまで、動脈硬化や糖尿病など、神経を阻害する疾患によって起こるものもあります。ただ、50歳以上で特に多いのは、加齢以外に特別な原因のない「加齢性難聴」です。

耳の構造

音は空気の振動で外耳から中耳を通り、内耳にある「蝸牛(かぎゅう)」という渦巻き状の器官に伝わります。蝸牛には細かい毛のある有毛細胞があり、この有毛細胞が音の振動を電気信号に変換して脳に送ることで、私たちは音を聞き取っています。

しかし、有毛細胞は加齢とともに壊れてなくなっていきます。そうすると音の情報がうまく脳に伝えられなくなり、聞こえが悪くなります。

加齢性難聴では高い周波数の音が聞き取りにくくなることが多いため、そのような音を含むカ行、サ行、タ行、ハ行の聞き分けが難しくなったり、女性や子どもの高い声が聞き取りづらくなります。

難聴は認知症の最大のリスク

加齢性難聴は、自覚しにくい難聴と言われます。

聞き取りづらい音があっても会話の文脈から内容を理解できたり、家族など周囲の人がゆっくり大きな声で話してくれたりするので、耳の不具合に気づきにくいのです。

しかし、ケアをしないままでいると、加齢性難聴は徐々に進行していきます。難聴の程度が進むと、生活やコミュニケーションが不便になるだけでなく、認知症のリスクも上がります。

老化予防・認知症予防を主としたブレインケアクリニックの今野先生によると、難聴が認知症におよぼす影響は、さまざまな機関から報告されているのだとか。

「ランセットという世界的な医学雑誌は、高血圧や肥満、糖尿病など改善が可能な12個の認知症リスク要因の中で、難聴が最大のリスクであると発表しています。

また、難聴が重くなるほど認知症リスクが上がるとも言われていて、軽度の難聴では2倍、中等度の難聴では3倍、重度の難聴では5倍、認知症リスクが上がるという研究発表もあります。また別の研究でも、難聴の高齢者は難聴のない人と比較して認知症を発症するリスクが高く、認知機能の低下が早いと報告されています」(今野先生)

難聴が認知症につながるメカニズムはまだ十分に解明されていないものの、難聴によって聴覚からの刺激が減り、脳が活性化しにくくなること、また、コミュニケーションが取りづらくなって社会的孤立につながることが関連すると考えられています。

とはいえ、耳の不調は毎日のちょっとした工夫で遠ざけることができます。

人とずっと会話を楽しめる耳と脳であるために、早めの耳ケアを心掛けましょう。

耳の不調を遠ざける3つのケア

今野先生がおすすめする耳ケアのポイントは、「生活習慣病の予防」「騒音を避ける」「食事の工夫」の大きく3つです。

■耳ケア1:有酸素運動で生活習慣病を予防
動脈硬化や高血圧などの生活習慣病があると、内耳や脳の血流が悪化し、聴力の低下につながります。

ウォーキングや水泳など、定期的な有酸素運動を心掛け、水分を十分にとって血液の循環を良くしましょう。喫煙や過度な飲酒など、生活習慣病につながる習慣があるなら早めに対策を。

■耳ケア2:騒音を避ける
騒音は酸化ストレスを増加させるほか、音による振動で有毛細胞を傷つけるため、難聴を起こしやすくさせます。大きな音で長時間音楽を聴いたりすることは避けましょう。

自宅近くで工事が続いているなど騒音から逃れるのが難しい場合は、耳栓を活用しましょう。

■耳ケア3:魚介類、緑黄色野菜、きのこを食べる

神経の働きを助け、末梢神経の修復に役立つビタミンB12、抗酸化作用があるβカロチン、ビタミンC、オメガ3脂肪酸、ストレスの緩和などに役立つマグネシウム、カルシウムの吸収を促進し、免疫機能を調整するビタミンDなどの栄養素は、聴力低下のリスクを減らせる可能性が示されています。

  • ビタミンB12……神経の働きを助け、末梢神経の修復に役立つ
  • βカロチン、ビタミンC、オメガ3脂肪酸……抗酸化作用がある
  • マグネシウム……ストレスの緩和などに役立つ
  • ビタミンD……カルシウムの吸収を促進し、免疫機能を調整する

そこで取り入れたいのが魚介類や緑黄色野菜、きのこなどの食べ物。魚介類はオメガ3脂肪酸、ビタミンB12、ビタミンDが、緑黄色野菜はβカロチンやビタミンCが豊富です。そしてきのこは、マグネシウム、ビタミンDを含む食材。季節や好みに合わせて、耳にいいとされる食べ物を上手に取り入れましょう。

今野先生は、耳ケアの重要性についてこう語ります。

「耳の聞こえが良くなると、認知機能が改善する可能性があると複数の研究から示されています。そして耳の健康は、日々の生活の見直しで保っていくことができます。耳の健康は脳の健康と心得て、早いうちから耳のケアを心掛けてほしいですね」

耳の聞こえの良し悪しは、生活の質だけでなく、脳の健康にも影響します。難聴の程度は高齢になるほど進んでいきますから、「まだ早い」と思い込まず、早めのケアで耳と脳の健康を守っていきましょう。

HALMEK up編集部
HALMEK up編集部

「今日も明日も、楽しみになる」大人女性がそんな毎日を過ごせるように、役立つ情報を記事・動画・イベントでお届けします。

みんなの コメント
  1. 将来、聞こえの悪さや違和感をおぼえたら、不調を放置せず・躊躇なく、補聴器を使用しようと思いました。

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