2021年03月01日

素朴な疑問

嚥下が困難なシニアが食べやすい調理法とは?

 

嚥下が困難なシニアが食べやすい調理法とは?
嚥下が困難なシニアが食べやすい調理法とは?

こんにちは! 好奇心も食欲も旺盛な50代主婦、ハルメク子です。

 

離れて暮らす母から電話があって、「最近、食べ物が飲み込みにくいのよね……」と嘆いていました。飲み込みにくくなるって、どういうことかしら? 電話では「でも、どこも悪くないから、心配しないで」と、母は言っていたけれど、食べづらいと食が細くなってしまうのではないかととても心配だわ。早速調べてみました。

 

なぜ飲み込みにくくなるのか?

なぜ飲み込みにくくなるのか?

高齢になると、加齢に伴って筋力が衰えていきますが、手足の筋力だけでなく、食べること、飲み込むことに必要な、口の中の筋力も衰えてしまいます。それに伴い、以下のような問題が生じます。

 

  • 食べ物を口の中で飲み込みやすい状態にできない
  • 食べ物を舌で口から喉へ送り込めない
  • 飲み込むときに、喉仏を持ち上げる筋力が弱く、気道を閉じるのに必要な分たけ、喉仏を持ち上げられず、食べ物や飲み物が気道に入りやすくなってしまう

 

飲み込むことを「嚥下(えんげ)」と呼び、こうした状態は「嚥下障害」と呼ばれます。老化以外に、脳や神経の病気、口腔内の炎症などによって、嚥下障害は生じます。

 

このように口の中の動きが衰えてしまうことによって、以下のような症状が現れます。

  • 食べるとむせる
  • 形があるものを噛んで飲み込むことができない
  • 食事に時間がかかる
  • 食事中や食後にせき込む
  • 食べ物が口からこぼれやすくなる
  • 食べると疲れる
  • 食後に痰が出る
  • 食事の後に声がかすれる
  • 飲み込みにくい食べ物があって食べなくなる

 

こうした食べにくさによって、食事量の減少、体重減少、脱水を起こしてしまう、飲み込んだものが気管に入って誤嚥してしまう、最悪の場合には、飲み込んだもので窒息してしまうというケースもあります。飲み込みにくさを単に老化現象の一つとして様子見してしまうことにはリスクがあります。
 

食事がとりにくいシニアが食べやすくするには?

食事がとりにくいシニアが食べやすくするには?

食事が飲み込みにくくなっているシニアの食事のポイントは、以下の3つ。

  • 硬さ(その人が嚙み切れる硬さにする)
  • 凝集性(とろみをつけて口の中でまとまりやすくする)
  • 付着性(とろみをつけて喉に流れ落ちる速度を遅らせる)

 

軟らかめの料理にしたり、噛み切りやすい大きさに細かくしたり、料理をミキサーにかけたりして、さらにとろみをつけるとよいようです。
 

一方、以下のような食べ物は不適切です。

  • 硬いもの、噛みきりにくいもの
  • サラサラしたもの
  • ボロボロしたもの
  • パサパサしたもの

 

とろみというと、片栗粉をイメージしますが、ドラッグストアなどで、いろいろな種類のとろみ剤が販売されています。市販のとろみ剤には、ダマになりにくい、ベタつきが少なくまとまりやすい、短時間でも粘度が出る、などの特徴があります。薬局で商品を選ぶ際に、使い勝手などを相談してみるのもいいですね。

 

食事がとりにくいシニアの食事の注意点

誤嚥や窒息を避けるためにも、食事時には以下の点に気を付けましょう。

  • いすに深く腰をかけ、正しい姿勢で食べる
  • テレビを見ながらなどの「ながら食べ」はやめる
  • 少量ずつ口に入れて、よく噛む
  • 口の中のものを飲み込んでから、次のものを口に入れる

 

また、硬いものはダメだからと、すべての料理をミキサーにかけたりすると、それは安全な料理になるかもしれませんが、食べる人の食欲が湧くような料理かどうかはわかりません。食べやすさ、飲み込みやすさが大事だとしても、やっぱり「おいしさ」が最優先のはず。

 

味つけや、見た目、料理の温度も、大切な点。家族や仲間と楽しく食事をするという雰囲気も、一つの要素になりえます。そして、食後の歯磨きも忘れずに。口腔内の衛生環境を整えることも大事です。

 

シニアの方は唾液も気にかけてみてください。唾液は1日に1~1.5Lも分泌されており、歯の保護、抗菌作用、粘膜の保護補修作用、消化作用を担っていますが、加齢とともにさまざまな原因で唾液腺の働きが衰えて唾液量が減ってきます。

 

そうなると食事を飲み込みにくくなったり、口腔内で微生物の繁殖から感染症のリスクが増大します。最近では還元型コエンザイムQ10を摂取することで高齢者の唾液分泌を増加させることが明らかになっています。
 

【監修】

 

 

 

 


斎藤一郎(さいとう・いちろう) 鶴見大学歯学部教授 
東京医科歯科大学難治疾患研究所などを経て、2002年より現職。口腔乾燥症(ドライマウス)の研究に長年従事し、鶴見大学歯学部附属病院でドライマウス外来を担当。2008年より4年間附属病院病院長。日本抗加齢医学会理事。2020年度日本病理学賞(宿題報告)受賞。著書に『ドライマウス』『口からはじめる不老の科学』など。

 

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母の様子を見に行って、栄養士さんに相談してみようかしら。
母の様子を見に行って、栄養士さんに相談してみようかしら。

 

イラスト:飛田冬子

 


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