在宅ホスピス医・内藤いづみのいのちのはなし(2)

医師・内藤いづみ |人は必ず死にその命は紡がれる

公開日:2019.10.04

更新日:2023.01.30

前回は、限られた時間を過ごす人、それを見送る人へのメッセージをくださった内藤いづみさん。3回連続の2回目は、在宅ホスピス医としての内藤さんの原点について。

看取りの瞬間は、お産と似ている

私は3人の子どもの母です。去年、末娘が大学生になり、家を出ました。この頃ようやく、子どものいない、夫と二人きりの静かすぎる生活に慣れてきたところです。

ちょっと変に聞こえるかもしれませんが、子育てとホスピスケアは似ているなあと思うのです。何人育てても、何人を看取っても「慣れる」ということは決してない。その都度真剣勝負で、「こうすればいい」というマニュアルは一切ありません。

そして、産声をあげるときと息を引き取るときの状況も実はよく似ています。長野県松本市で開かれた講演会でのことでした。このとき一本のDVDを会場のみなさんにお見せしました。一人のおばあちゃんが息を引き取る瞬間の映像です。

おばあちゃんは呼吸の間隔が3秒、4秒と長くなり、口は大きく開いたまま。意識はもうありません。いびきのような、ガラガラと響く音を立てています。家族や親戚がおばあちゃんのベッドをぐるりと囲み「おばあちゃん、がんばれー」「ありがとう、ありがとう」と声をかけながら、涙をいっぱい浮かべておばあちゃんの顔や頭、体をさすっています。

上映後、会場にいた妊婦さんが私のところへ来て、「先生、看取りの瞬間って、お産のときと似ていますね」と言いました。「みんなで体をさすって、『もうちょっとだ』『がんばれ』って声をかける。あれは出産のときと同じですよ」と。

確かにその通り。面白いなあと思います。生と死は、コインの表裏のようなもの。以前、作家の遠藤周作先生からいただいた『チベット死者の書』を思い出しました。これは、死の瞬間から次の生を得て誕生するまでに魂がたどる四十九日の旅を描写した経典で、臨終を迎えた人の枕元で僧が読む習慣がチベットにはあるのだそうです。...

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