自分の選択をよかったと思えるために

小泉今日子#2 母の尊厳を守り、自宅で看取れた幸せ

公開日:2023.07.04

更新日:2024.09.12

2023年に上演された舞台「ピエタ」で、プロデューサーを務めると同時に、主人公を演じた小泉今日子さん。舞台にかける熱い思いを伺った第1回に続いて、女性としての生き方、そして2022年、自宅で母を看取った経験について語っていただきました。

※この記事は、2023年5月の取材をもとにしています。

生きにくい時代を過ごした母が娘に託した願い

今回の上演舞台「ピエタ」は、18世紀のヴェネツィアで孤児院に捨てられた過去を持つ主人公の他、貴族の娘、高級娼婦など立場や生き方がまるで違う女性たちが登場します。男性優位な社会の中で、彼女たちが互いに理解し合い、手を取り合って生きていく姿に、小泉さんは深く共鳴したと語ります。

「『ピエタ』もそうですし、昔の戯曲を演じたりすると、女性として生きることがいかに大変だったのかをあらためて感じます。それは母の生き方を見ても思いますね」

小泉さんの母親は、戦時中に子ども時代を過ごし、まだ戦後の貧しさが色濃く残っている頃に青春期を迎えました。

「本当はやりたいこともあっただろうけど、家が大変だったみたいで、母は置屋をやっていた大叔母の養女となり、10代の若さで芸者をしていたんです。父と出会って結婚し、長女を産んだのが19歳。きっと、その生き方しか選べなかったんだろうなと思います。

茨木のり子さんの詩に『わたしが一番きれいだったとき わたしはとてもふしあわせ』という一節がありますが、母もそんな思いで生きていたのかもしれません」

だからこそ、娘たちには自分の思うように生きてほしいと願っていた気がする、と小泉さんは言います。

「私がこういう仕事を始めた...

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