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- 登山家・田部井淳子さんに学んだ「人生を登る、登る」
「ハルメク」でエッセイ講座を担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、女性初のエベレスト登頂に成功した登山家「田部井淳子」さん。人生の苦楽を山本さんに教えたという、田部井さんへの想いについてです。
好きな先輩「田部井淳子(たべい・じゅんこ)」さん
1939-2016年 登山家
小学生の頃の山登りがきっかけとなり、大学を卒業後、社会人の山岳会に加入。69年に「女子登攀クラブ」を設立。75年、女性初のエベレスト登頂に成功。92年、女性で世界初の7大陸最高峰登頂者となる。
ひと目で魅入られた憧れの人の訃報
2016年10月20日、登山家の田部井淳子さんが亡くなりました。訃報に接し、気がつくとわたしは「タベイサン、タベイサン」と唱えながら、自宅の居間をぐるぐると歩きまわっていました。
田部井淳子さんの姿を初めて見たのは35年前。勤めていた出版社の座談会にみえたのをひと目見るなり、魅入られました。
当時、すでに世界最高峰エベレスト(8848m)の登頂を女性として初めて成し遂げていた田部井淳子さんでしたが、まるで英雄然とはしていない……。仲間をつくって山登りをつづけていたら、エベレストが受け入れてくれた、という佇まいだったのです。
それからしばらくして、離婚して母子家庭を営むようになったわたしは、田部井さんの「山はおしえてくれる」ということばを思いだしました。娘たち(小学生)とともに山に身を置いてみたいとつよく希(ねが)うようになっていたのです。
人生も山も、登る、登る、登る
3人でめざしたのは南アルプスの仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ/3033m)山頂。3人とも歩くことが好きで、登山経験もありましたが、3000mを超える山は初めてでした。
悪天候がつづきやっと晴れたその日、宿は超満員で、ひとがたがい違いに寝ることになりました。顔の横に知らないひとの足がある、そんな経験は初めてでした。
あくる日は二女が高山病になりかかり、気を明るく、しっかり持つことの大切さを心身に叩きこまれました。
人生も山登りと同じで、びっくりするような事件も、愉快なこともごちゃ混ぜでやってくるのね。山はいろんなことをおしえてくれました。
近年わたしたちは、もっぱら東京の多摩の低山を歩いていますが、田部井淳子さんの活動には注目していました。
国内外の数々の高峰の登頂。ヒマラヤをはじめとする山岳の環境保護活動。複数のがんや脳腫瘍を患いながらの、精力的な登山。
記憶にあたらしいのは、東日本大震災で被災した高校生たちとの富士登山活動です。
2016年7月、病を押して富士山の元祖7合目(3010m)まで登り、山頂をめざす高校生を見送ったのが最後の登山になりました。
人生を、つねに登る覚悟、登るよろこびで生き抜いた田部井淳子さん、いつかまた会う日まで、さようなら。
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2017年2月号を再編集し、掲載しています。
>>「田部井淳子」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
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