50代女性の仕事事情特集(5)

50代からの職探しは、自身のスキルと体力に相談を

公開日:2019.10.04

ハルメクの元編集長・矢部万紀子さんが、50代でリタイアし、まったく経験のない仕事に体当たり。退職後、憧れていたパン屋でアルバイトを始めた矢部さん。あまりにも多い仕事量と難易度の高さに疲れ果ててしまい……。

アルバイト4日目にして休みを取る

アルバイト4日目にして休みを取る

第1回 ハルメク元編集長が直面!50代女性のアルバイト事情」を読む
 

4日のアルバイトを終え、実家の家事手伝いをし、くたびれて眠った翌朝、日曜日でした。めまいで目が覚めたのです。グルグルに天井が回っていました。経験したことのない激しいめまいでした。

疲れているから、もうちょっと寝たら治るのではと思い、また目をつぶりました。ウツラウツラとして、再び目を覚ました時もグルグルは続いていました。

夫から「会社を辞めて時間が経っていないのに、無理をするからだ」と言われました。そうかもしれないなあ、と思いました。その日は寝ながら、「次の木曜にバイトに行けるかなあ」とばかり考えていました。

翌日の月曜日、前日ほどではないけれどまだめまいがしたので、近所の内科に行きました。「疲労とストレスでしょう」と言われ、薬を処方されました。

その日のうちにだいぶよくなりましたが、気持ちは晴れません。ベーグルをちゃんとひっくり返せる日は来るだろうか、仮にそういう日が来るとしても、また疲れてめまいがするのじゃないだろうか。辞めたほうがよいかも、という気持ちが湧いたのです。その一方で、たった4日で辞めるなんて無責任だとも思いました。

悩んだ末に出した結論は……

悩んだ末に出した結論は……

悩みに悩み、いったん「今週のアルバイトが終わった時点で、続けるかどうか決めよう」と結論を出しました。勤務の途中で具合が悪くなる可能性も少しあるなと思ったので、出勤日の前日に店主にめまいの件を報告するメールをしました。

「慣れない作業で体がびっくりしたのですね。途中で具合が悪くなるとよくないので、明日は休んでください」と優しいメールをいただきました。だけど私の中で、このメールを見た瞬間、なぜか「やはり辞めよう」という気持ちになったのです。

翌日、「申し訳ないのですが、続ける自信が持てなくなりました」とメールをしました。迷惑をかけたから、4日間のアルバイト代は辞退します、と付け足しました。

これが、我がアルバイト体験です。店主が「残念だけど仕方がない、あなたの作ったパンは温かみが感じられた」と返信をくれました。その優しさに押され、こういうメールを再度、送りました。

「私の作った作業マニュアルがあります。次にアルバイトに来る方のお役に立つかもしれないので、ご迷惑でなかったら送ります」

店主は歓迎してくれました。「Kでのお仕事」というタイトルをつけた Wordファイルをメールしたら、すぐに「わかりやすく、楽しい説明ですね。誰でもパンが焼ける気持ちになる、よい文章でした」と返信をもらい、ホッとしたことを覚えています。

50代女子は、じっくり焦らず

50代女子は、じっくり焦らず

それからしばらくして、今回のアルバイト体験を同世代の友人に話しました。迷惑をかけてしまったという気持ちを少しでも軽くするため、冗談めかしてベーグルの話などをしたのです。するとその友人は、自分の友人(やはり同年代)の話をしてくれました。

その人もパン屋さんでアルバイトをしたのだそうです。ただし、焼く方でなくレジだったそうです。レジ3台の大きなパン屋さんだったそうです。

パンにはバーコードが付けられません。パンを見て、自分で値段を打ち込む必要があります。その作業を友人の友人はゆっくりしかできません。隣で、女子高校生がレジも見ないで、バンバン打っていたそうです。女子高生のレジは次々進み、友人の友人のレジは進みません。申し訳ないような気持ちになり、その人も早々にアルバイトを辞めたという話でした。

私のアルバイトの前任者も高校生でした。そのことを伝えると、私の友人は言いました。

「高校生のレベルにいきなりなるなんて、私たちの年代じゃ、無理に決まってる。だから、時間をかけてゆっくり追いつくしかない。雇った方だって、それもわかっていると思うよ」。その後、こう言ってくれました。

「でもね、わかるよ、追いつく前にくたびれちゃうんだよね。とにかく長いこと働いてたんだから、ゆっくりすることだよ」

 同世代女子の優しさに、私は「うん、うん」とうなずいたのでした。

シニアライフアドバイザー・松本すみ子さんのお仕事アドバイス

松本すみこ

前回「元編集長が、パン屋のアルバイトを始めてみたら」では、仕事を変えようと思ったら、まずは自分の人生の棚卸をしてみてくださいとお伝えしました。

年を重ねてからの職場では、即戦力、つまり、経験値・即戦力が求められることがほとんどです。年を重ねた人に0から教えるのは、雇う側からするとコストがかかってしまいます。働き始めた日からできる仕事はなにか、自分のどのスキルを生かせるかを考えることが大切です。技術だけでなく、人当たりの良さとか臨機応変に動けるところとか、若者や男性よりも優れたところを評価し、大人の女性を探しているところもあります。

基本は「求められている」のです。あせらずにじっくり探しながら、キャリアコンサルタントに相談したり、足りない部分は自分のスキルアップのために、人材会社の教育サービスを利用したりするのもおすすめです。

 



■50代からの仕事特集

  1. 50代こそ「自分再発見」で、「仕事再スタート」を
  2. 50代女性が働く上で、本当に必要なスキルとは
  3. ハルメク元編集長が直面!50代女性のアルバイト事情
  4. 元編集長が、パン屋のアルバイトを始めてみたら

矢部 万紀子

1961年生まれ。83年朝日新聞社に入社。「アエラ」、経済部、「週刊朝日」などで記者をし書籍編集部長。2011年から「いきいき(現ハルメク)」編集長をつとめ、17年からフリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』(幻冬舎新書)

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