保証人に求められる役割・身元引受人・保証人の違い

老人ホームの入居は保証人が必要?いない場合の対処法

坂本 愛(ハルメク 介護と住まいの相談室 )
監修者
社会福祉士/ハルメク 介護と住まいの相談室 相談員
坂本 愛

公開日:2023.12.30

老人ホーム入居時は、原則として身元保証人・引受人が必要です。頼める人がおらず、保証人がいない状況は保証人不要の老人ホームを探す、保証会社を利用するなどの対処法が存在します。保証人に求められる役割、いない場合の対処法を解説します。

老人ホームの入居には保証人が必要?

老人ホームに入居する際には、原則として保証人が必要となります。運営会社によっては保証人と身元引受人を分けて、入居時に両方が求められるケースもあります。

保証人が必要となる理由は複数あります。まず一般的な賃貸と同様に、入居者が費用の支払いが困難になった場合に、代わりに支払いを行うことです。加えて、緊急の連絡先となること、入院の付き添いや治療の判断をすること、入居者が亡くなった際の身柄の引き取りなど、入居者の生活全般に関わる重要な役割を担います。

保証人の役割はどれも重要なため、入居において保証人が求められることがほとんどです。保証人が不要な老人ホームもありますが、数は極めて少なく、選択肢はかなり限られます。

保証人は老人ホーム側の運営を行う上で不可欠な存在です。保証人には子どもや親族などがなる場合が多くありますが、保証人を頼める人がいない方は、保証会社を利用します。

保証人に求められる具体的な役割

保証人に求められる具体的な役割

老人ホームで保証人に求められる主な役割は、費用の未払いが発生した時の保証、介護や医療の方針決定・手続き、緊急時の連絡窓口、入居者が亡くなった後の対応の4つです。これらの役割は、入居者の安定した生活を支える重要な要素となります。

費用の未払いが発生したときの保証

入居者が老人ホームの費用を支払えなくなった際に、その費用を保証人が負担することになります。例えば、月額利用料の支払いが遅れたり、施設内の備品修理により費用が発生した場合、入居者が支払いを行えない場合は保証人に支払い義務が発生します。

また、入居者に現金以外で支払いに充てられる資産があり、本人が売却などの手続きを行えない場合、「成年後見制度」に基づく法的手続きを通じて対応することもあります。

介護や医療の方針決定、手続き

老人ホームでの生活や、通院・入院時の医療の方針決定を保証人に求められるときがあります。本人が意思を示せない状態(認知症や、病気や怪我で意思を表明できないとき)に、どのくらいの医療を行うのか、介護は何をどのくらい実施するのか、などの意志決定と手続きを行います。主なケースは以下の通りです。

  • 怪我や病気による入院時の治療方針の決定
  • ケアプランの判断

緊急時の連絡窓口

老人ホームで保証人が担う重要な役割の一つに、緊急時の連絡窓口があります。入居者の容態が急変し、お看取りが近い時や、トラブルが発生したときなどに、保証人に緊急連絡がきます。この緊急連絡は、入居者の安全と迅速な対応を確保するために不可欠なものです。

例えば、入居者が救急搬送される場合、保証人が病院に駆けつけるまでの間は老人ホームのスタッフが入居者の側に付き添うことがあります。保証人は、このような緊急時に迅速に駆けつけ、入居者のサポートを行う責任を負います。

入居者が亡くなった後の対応

老人ホームで入居者が亡くなった後に、保証人は遺体の引き取りや私物の整理、退去手続き、費用の最終精算などを行う必要があります。亡くなった入居者の遺品の整理や遺体の葬儀等の手配は、保証人にとって精神的にも負担が大きい行為ですが、これらは避けて通れない責務です。

入居者が亡くなる以外のケースで老人ホームを退去する場合にも、保証人が立ち会うことがあります。退去の際には、部屋の状態確認や備品のチェック、最終的な費用精算など、多くの手続きが必要となり、それを短期間で行うことが求められます。

保証人がいない場合の対処法

保証人がいない場合の対処法

老人ホームへの入居を検討する際に、保証人を頼める人がいない方がいらっしゃいます。このような場合には、以下のような対処法が考えられます。

  1. 保証人不要の老人ホームを探す
  2. 保証会社を利用する
  3. 成年後見人制度を利用する

各対処法を順番に解説していきます。

対処法1.保証人不要の老人ホームを探す

保証人不要の老人ホームも一部あるため、保証人がいなくても入居できるケースがあります。2023年3月に全国有料老人ホーム協会が公表した「高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究 報告書」によると、身元引受人を必要とする老人ホームは、調査対象のうち、サービス付高齢者向け住宅(特定ではない)は95.4%、特定施設は83.5%、住宅型有料老人ホームは88.5%の割合です。

ほとんどの老人ホームでは保証人が必要なことを示していますが、少数ではありますが保証人が不要なホームも存在します。

根気よく探せば、保証人不要の老人ホームを見つけることは可能です。選択肢は多くなく、その中から選ぶことには注意が必要です。

対処法2.保証会社を利用する

保証人を頼める人がいない場合、ほとんどの方は保証会社を利用します。保証会社とは、保証人・身元引受人の役割を代行してくれる会社のことで、主に民間企業やNPO法人が運営しています。保証会社の主なサービス内容は以下の通りです。

  • 月額利用料の支払い保証
  • 緊急連絡の窓口機能
  • 入居者が亡くなった際の対応

弁護士や司法書士など法律の専門家と提携し、本来入居者の家族が行うべきサポートをカバーしているところもあります。

ただし、保証会社を利用する場合は別途費用が発生します。家賃保証、緊急時対応、死後事務委任など多くのことを依頼すると、預託金(必要になったときのため、契約時に預けておくお金)を含め100万円以上の費用がかかります。予算に制限があれば、対応内容を制限することもあります。

対処法3.成年後見制度を利用する

成年後見制度は、入居者本人が物事を判断したり、手続きをできなくなったときに、「成年後見人」を選定し、本人の代理としてものごとを判断し、手続きをとるための制度です。

老人ホームの中には、成年後見人が各種の手続きを行うことを条件に、保証人が立てられなくても入居が認められることがあります。

成年後見人は保証会社とは異なり「身元保証人」にはなれないため、厳密には保証人ではありません。ただし、資産の状況を知り、本人の代理として判断・手続きができるなど、保証人に求められることが多くできます。

成年後見人の利用にも費用がかかります。また、家庭裁判所への申し立てや公証人立ち会いでの契約締結が必要になるなどの手続きが必要になります。成年後見人を依頼したいときは、まずは自治体の地域包括センターに相談してみましょう。

保証人がいないなら、保証会社を利用しよう

老人ホームに入居する際、多くの施設では保証人が求められます。しかし、保証人を立てることが難しい場合も少なくありません。そんな場合は、保証会社の利用が有効です。

一般的に保証会社を利用する際は別途費用が必要になりますが、保証人がいない状況でも老人ホームへの入居が可能となります。老人ホームを選ぶ際は、保証会社の利用条件や費用を事前に確認し、ご自分の状況に合った選択をすることが大切です。


ハルメク 介護と住まいの相談室」では保証会社もご紹介しています。預託金の保全を行い、長期で運営している、業界内の情報にも詳しい方をご紹介します。

記事監修:坂本愛さんのプロフィール

坂本愛さん

さかもと・めぐみ 社会福祉士。急性期病院のメディカルソーシャルワーカーとして受診相談や退院支援業務を経験。退院後に必要なケアをもとに、ご自宅での療養生活のアドバイスや、介護施設の紹介を実施。雑誌『ハルメク』の記事執筆にも携わる。

ハルメク365編集部

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