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一括払いのメリット・デメリット&シミュレーションも
50代の個人年金保険は一括払いもアリ?徹底解説
CFP®認定者、日本証券アナリスト協会認定アナリスト 「家計の見直し相談センター」所属
小川 貴行
公開日:2024.04.10
更新日:2024.04.26
「個人年金保険は50代からでも間に合う?」「一括払いってどうなの?」「メリットデメリットは?」などの疑問について詳しく解説!公的年金に上乗せできる私的年金の一つである個人年金保険。うまく活用して効率的に老後の資産形成を始めましょう。
個人年金保険とは?
個人年金保険とは、老後の生活に備えるための私的年金のことです。
60歳や65歳など一定の年齢になるまでお金を積み立てていき、受取開始時期になると積立金を元にした年金を受け取ることができます。
日本の年金の制度は、以下のように3階建てです。
- 【3階】個人年金保険、個人型確定拠出年金(私的年金):任意で加入
- 【2階】厚生年金(公的年金):会社員・公務員が加入
- 【1階】国民年金(公的年金):日本に住む20歳以上〜60歳未満の全ての人が加入
1階部分の国民年金は義務であり、日本に住む20歳以上〜60歳未満の全ての人が加入しなければなりません。
2階部分の厚生年金は、会社員や公務員が加入するもの。国民年金と同じく厚生年金も国の制度のため「公的年金」と呼ばれます。
3階部分は私的年金と呼ばれ、個人年金保険や個人型確定拠出年金(通称iDeCo)などが該当します。
公的年金とは異なり私的年金の加入は任意ですが、「公的年金や企業年金では老後資金が足りなくなってしまうかもしれない」「十分な老後資金を確保したい」という場合は、自分の年金を自分で準備しておくことが大切です。
- 受取方法:「確定年金」か「終身年金」か
- 運用方法:「定額個人年金保険」か「変額個人年金保険」か
- 運用タイプ:「円建て」か「外貨建て」か「変額」か
- 保険料の払込み方法:「分割払い」か「一括払い」か
- 保証期間:「保証期間アリ」か「保証期間ナシ」か
個人年金保険には、受取方法や運用方法など、上記のようにさまざまなタイプがあります。
それぞれメリット・デメリットがあるため、加入時には特徴を比較して慎重に検討しましょう。
個人年金保険・iDeCo・NISAどれがいい?
老後のための資産を形成する方法としては、個人年金保険の他にも個人型確定拠出年金(iDeCo)やNISAなどがあります。
これら3つはそれぞれ、収益性や流動性、安定性、節税効果などに違いがあるため、その内容を理解した上で、自分の資産形成にはどれが向いているかを判断するといいでしょう。
50代から個人年金保険に加入するメリット
ここからは、50代から個人年金保険に加入するメリットを紹介します。
一括払い(一時払い・全期前納)ができるものも
個人年金保険は一般的に、月払いや年払いなどの分割払いよりも一括払い(一時払い・全期前納)で支払うと支払保険料を安く抑えられ、解約返戻率を上げることができる分お得になります。
50代の場合、大学生の子どもの学費にお金がかかることもあり家計の状況は家庭ごとに異なりますが、貯蓄に余裕があれば、一括払いを検討するといいでしょう。
個人年金保険料控除がある
個人年金保険に加入している場合、個人年金保険料控除として通常の生命保険料控除とは別に、所得税や住民税が軽減される制度があります。
年末調整や確定申告によって、払い込んだ保険料に応じて控除が受けられます。
ただし、個人年金保険料控除は保険料払込期間が10年以上であったり、受取開始が60歳以上、受取期間が10年以上であることなどの適用条件があります。必ず事前に確認しておきましょう。
健康状態に不安があっても加入しやすい
個人年金保険は、健康状態に不安があっても比較的加入しやすいこともメリットです。
50代になると、男女ともに生活習慣病やがんなどの病気のリスクが高まります。体調の変化や健康に不安を感じる場面も増えてくるでしょう。
保険の中には健康状態によっては加入できないものもありますが、個人年金は健康状態などの告知や医師の診査が不要な場合が多く、健康に不安がある人や持病のある人も比較的加入しやすいメリットがあります。
ただし、個人年金保険の種類によっても違いがあるため、事前の確認が必要です。
貯蓄が苦手な人でも貯めやすい
50代は、住宅ローンの返済や子どもの教育費、時期的に多くなりがちな冠婚葬祭費などによって支出が多くなる年代です。
そのため、なかなか貯蓄ができないという人もいるでしょう。しかし、個人年金保険に加入すれば「保険料」として自動的に貯蓄できるという利点もあります。
「貯金は苦手だけど、老後資金は確保したい」という人は検討してみてもいいかもしれません。
50代から個人年金保険に加入するデメリット
ここからは、50代から個人年金保険に加入するデメリットを解説します。
年金の受け取り時期が遅くなる
50代から個人年金保険に加入する場合、年金の受け取り時期が遅くなる点がデメリットです。払込期間が最低10〜15年必要となることが多く、定年退職のタイミングで受け取れないケースも。
商品によっても異なるため、個人年金保険について検討する際は「いつまで保険料を支払い続けるのか」「いつから年金を受け取れるのか」もシミュレーションしてしっかり確認しておきましょう。
大きく増やすことは難しい
現在は低金利で予定利率(保険会社が契約者に約束する運用利率のこと)が低いため、返戻率も低め。そのため、個人年金保険で年金額を大きく増やすことは難しいです。
さらに50代から加入する場合、運用期間が少なくなるため、20代や30代から加入するよりも返戻率が低くなる傾向にあります。
簡単にお金を引き出すことができない
老後までの期間に、病気やケガの治療費や働けない間の生活費、子どもの教育費、など突然お金が必要になるかもしれません。
しかし、個人年金保険は途中解約すると、解約返戻金が払込保険料を下回って元本割れしてしまうことがほとんどです。
個人年金保険は基本的に、途中で引き出さないことを前提に積み立てていく商品であることを踏まえておく必要があります。
何かあったときに備えて別途、生活防衛資金(いざというときに使えるお金)を用意しておくといいでしょう。生活スタイルによって異なりますが、一般的に、生活防衛資金は月の生活費の3〜6か月分程度は用意しておくのが望ましいとされています。
50代からの個人年金保険は一括払いもアリ?
個人年金保険は、払込方法を月払い・半年払い・年払い・一括払いなどから選択可能ですが、50代から個人年金保険に加入する場合、条件が許せば一括払いも検討してみましょう。
ここからは、その理由について解説します。
返戻率が高くなる
個人年金保険の保険料を一括で支払うと、返戻率(払い込み総額に対して将来的に受け取れる金額のこと)が上がるため、将来的に受け取れる年金額が多くなります。
契約者が支払った保険料は保険会社が運用していますが、少額よりもまとまった額を長期で運用した方が効率良く利益を上げられます。このため、一括払いをすると返戻率が高くなるのです。
分割に比べて支払い総額が安くなる
個人年金保険料の一括払いは、分割支払いに比べて支払い総額が安くなることもメリットです。
これは、一括払いの方が保険会社側のコストを抑えられるため。一括払いの場合、分割払いの際の支払いのたびに発生する銀行への手数料、事務作業による人的コストなどがかかります。
一括払いではまとまった金額を用意する必要があるため、子どもの学費など家計の大きな支出に支障がないかどうかを確認しましょう。支障がない場合は、トータルで見れば総額が安く可能性がある一括払いを検討しても良いでしょう。
50代からの個人年金保険│2種類の一括払い方法
個人年金保険を一括払いする場合、「一時払い」と「全期前納」という2つの方法があります。
一時払い
一時払いとは、契約時に期間分の個人年金保険料を全額まとめて支払う方法です。「一括払い」と聞いて多くの人が想像するのが、この一時払いでしょう。
一時払いは、他の払込方法と比べて最も保険料が安くなることが特徴です。また、返戻率も高くなります。
ただし、被保険者の死亡時や解約時に支払った保険料は返還されません。また、一度に全額まとめて支払うことになるため、生命保険料控除は加入した年のみとなる点に注意しましょう。
全期前納
全期前納は、「今後支払う予定の保険料をまとめて保険料に預ける」という形で全額支払う仕組みです。
保険会社は預かった保険料を、月払・半年払・年払など、期日が来るとそのたびに預けておいたお金が払い込まれるようになっています。
一時払いに比べると保険料は高くなるものの、「預ける」という形であるため被保険者の死亡時や解約時には、払い込んでいない分のお金が戻ってきます。
また、全期前納の場合、保険料払込期間中は毎年控除を受けられます。
50代からの個人年金保険選びのポイント・注意点
ここからは、50代からの個人年金保険選びのポイント・注意点について解説します。
返戻率が高い商品を選ぶ
個人年金保険に加入する際は、返戻率が高い商品を選ぶことがポイントです。
返戻率とは、払い込んだ保険料の総額に対して、将来的にどのくらい受け取れるかという割合のこと。例えば、100万円を支払って105万円を受け取ると、返戻率は105%になります。
満期保険金が同じ額の場合、返戻率が高いほど安く積み立てられることになるため、必ずチェックしておきたい点です。
50代から加入する場合、選べる商品の選択肢は若い世代に比べて少なくなるものの、その中から返戻率が高いものを探してみましょう。
年齢が上がるにつれて返戻率は下がる傾向にあるため、個人年金保険への加入を考えているなら早めがおすすめです。
受取方法にも注意する
個人年金保険の年金の受け取り方法には主に、「確定年金」「保証期間付終身年金」「有期年金」「夫婦年金」があります。
「確定年金」とは、契約時に決めた5年・10年・15年など一定期間の間で年金を受け取れる方法です。
受け取り期間や金額がはっきりしており、被保険者の生死にかかわらず年金を受け取ることができます。とにかく元本割れは避けて保険料の元を取りたいという場合や、公的年金の支給開始までの生活資金準備などの目的には、確定型がおすすめです。しかし、受取期間が過ぎると年金が途切れてしまうため、長生きした場合に対応できないリスクがデメリットになるでしょう。
「保証期間付終身年金」は、契約時に決めた年齢から死亡するまで年金を受け取れる方法で、生きている間は一生涯受け取ることができるため、長生きするほどお得といえるでしょう。保証期間中に被保険者が死亡した場合は、残りの保証期間に対応する一時金または年金を受け取れます。
「有期年金」は、契約時に決めた10年や15年など一定期間中に被保険者が生存している限り年金を受け取れる方法です。保証期間が付いている場合は保証期間中は被保険者の生死に関係なく定めた期間年金を受け取れますが、保証期間がないタイプの場合は受取期間中に被保険者が死亡した場合、原則残りの年金は受け取れないため、元本割れになる可能性に注意が必要です。
「夫婦年金」夫婦のいずれかが生存している限り年金を受け取れる方法です。多くは保証期間が付いており、保証期間中に夫婦共に死亡した場合は残りの保証期間に対応する年金または一時金を受け取れます。
さまざまな点を考慮して、自分に合ったものを選んでみてください。
家計の大きな支出に注意
個人年金保険は途中で解約すると元本割れを起こす可能性が高いため、途中で解約することはできるだけ避けたいところです。そのため、家計の支出リスクについて考えておくことが大切です。
家計で考えられるリスクには「住宅ローンの支払い」「子どもの学費」などがあります。
子どもが独立している場合や、住宅ローン完済の目処がついている場合は、変額個人年金保険や外貨建てといったリスクを取った運用もできるでしょう。
反対に、まだ大きな支払いが残っている場合は、無理のない金額で検討しましょう。
50代の個人年金保険のシミュレーション
個人年金に加入する際に気になるのが「いくら受け取れるのか?」という点です。
個人年金保険を選ぶときは、事前にシミュレーションを行って将来の受取額の目安を確認してみましょう。
各保険会社によって設定可能な条件が異なるため、気になる保険会社のホームページにアクセスして、シミュレーションを行ってみてください。
例えば、明治安田生命の「年金かけはし」のシミュレーションの場合は、以下のようになります。(※2024年2月現在)
【条件】
- 性別:女性
- 契約年齢:50歳
- 据置期間:あり
- 月掛保険料(口座振替料率):2万円
【シミュレーション結果】
- 年金開始年齢:75歳
- 払込保険料累計額:480万円
- 保険料払込期間:20年
- 据置期間:5年
- 基本年金年額:約49.8万円
- 一括受取額:約490万円
- 年金受取累計額:約498万円
- 受取率:103.7%
なお、シミュレーションはあくまで目安であり、実際にはこのシミュレーションと異なる可能性があります。加入を検討する場合は保険会社に詳しく内容を確認する必要があります。
自分に合った個人年金年金で老後のための資産形成を
個人年金保険は年金額を大きく増やせるわけではありませんが、貯蓄が苦手な人でもコツコツ積み立てられるメリットがあります。
一括払いにすれば返戻率を高められるため、将来的に受け取れる年金額をアップできます。ただし、思わぬ家計の大きな支出などにより中途解約すると元本割れしてしまう可能性があるため、無理のないように検討することが大切です。
他の途中で引き出しやすい方法と合わせて個人年金保険で積立を行うことで、老後のための資産形成ができ、将来のゆとりある暮らしにつなげましょう。
50代であっても個人年金保険に加入できますが、年齢が上がるほど商品の選択肢は少なくなるため、加入を考えているのであれば、早めに検討してみましょう。
■教えてくれた人
小川 貴行(おがわ たかゆき)
CFP®認定者、日本証券アナリスト協会認定アナリスト
愛知県出身。関西学院大学商学部を卒業後、証券会社・生命保険会社を経て現在は家計の見直し相談センターで家計・資産運用・保障のコンサルティング、講演などに従事。
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