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- 私の仕事は、結婚式の披露宴の司会でした(4)
専業主婦が憧れていたブライダル司会者へ道を切り開く。20年間、現役のブライダル司会者として仕事をし続けてきた過去や、これからのことを語ります。努力の甲斐あってついに司会の依頼が……! けれど緊張で眠れない、食べれない!?
ついに、念願の司会者になれる時が……
プロとして、披露宴の司会の依頼が来た時は、飛び上がるほど嬉しかったです。ついにプロ司会者になれるのですから。
3年前、本屋で偶然見た「ブライダル司会者になりませんか?」の文字に目を奪われ、入学したブライダル司会者スク-ル。そして何百件と電話をかけまくり、やっと所属できたプロダクション。でも喜んだのはつかの間、そこは悪徳プロダクション。
長い年月と100万円という大金をつぎ込み、また、女性としてセクハラまがいの怖い思いに立ち向かいながら、必至にがんばってきたのは、プロとしてデビューするためです。
夢にまでみた待ちに待った、念願のプロデビューの時がきたのです。
一生で特別な日は、上手い人に担当してもらいたい
結婚式場、ホテル、会館、レストラン、ゲストハウス、何処も結婚式当日の3か月前から細かい打ち合わせにはいります。会場のプランナーさんがお客様の希望を伺い、プロダクションにまず依頼が来ます。そして希望に近い司会者をプロダクションの社長が選び、私達司会者に依頼が来ます。
この流れは25年たった今でも、大幅な違いはありません。例えば、女性司会者で友達のように話せる同世代希望とあれば、若手、新人にも出番が生まれます。しかし女性でベテラン希望や、アドリブが上手い人、盛り上げられる人、こんなリクエストの場合、なかなか新人には回ってきません。
もちろん初めはみんな新人ですが、司会の世界は、新人には本当に厳しいです。
でも良く考えれば当然のことです。結婚式は一生の中で特別な日。上手い人に担当してもらいたいと思うのは当たり前だと思います。私がお客さんだったらそう考えます。また、親の立場でしたら、絶対上手な方にしてくださいと言うことでしょう。
緊張で眠れない、食べれない。デビュー当日までの私
当時は今と違い携帯電話はなく、ご家庭の電話に連絡をしていました。大体はお母様が出ます。まずここで「他の人に代えてください」。こんなこともあります。電話をかけたその時から、結婚式の当日お開きなるまで、約3か月、1つもミスがあってはならないのです。やりがいはありますが、本当に神経を使う仕事でもあります。
電話や打ち合わせでお話したこと、当日のこと。正直、緊張しすぎてほとんど覚えていないのですが、いろいろ心配で私が毎日のようにお客様のご自宅にお電話していたことは覚えています。お嫁さんのお母様に「いろいろ気にかけてくださりありがとう」。とお電話をかけるたびに、言っていただいたのは覚えているのですが、ベテランとなった今考えると、「大丈夫かしら?」と思われていたに違いないと思います。
結婚式当日の数日前から眠れなくなっていきました。よく口から心臓が飛び出しそう、と表現しますが、心臓のドキッ、ドッキーという音も聞こえました。そんな心境ですから、他のことはまったく手につかなかった気がします。お嫁さんより司会者の私の方が緊張していたと思います。
埼玉県の岩槻の結婚式専門会館。私のデビュー戦の会場は、自宅から3時間近くかかる遠い場所でした。電車の遅延が起こった場合も考え、かなりの余裕を持って家をでました。前の晩は結局寝たような、寝られなかったような……でした。
長い夜を過ごし、食事も喉を通らず出発の時間を迎えました。電車の中では原稿を繰り返し読み、はたから見たらかなり危ない人だったと思います。
余談ですが、自分で司会者を育てるようになり新人のプロデビューの生徒たちを見ると、挙動不審、目もうつろ、顔色が悪い。本当に危ない人になっています。途中、職務質問に合わないか心配なくらいです。なので当時の私も絶対危ない人だったに間違いありません。
会場についてからもほとんど記憶がないのですが、ただ覚えているのは自分一人では何もできなかっただろうということです。スタッフのみなさんに指示をもらいながら動いてはいましたが、自分では今何をしたら良いのか次に何をするべきか、まったくわかっていなかったと思います。
何とかお開きまで進めたのは、スタッフのみなさんのお陰でした。レッスンと実際はまったく違いました。
デビューしてプロの端くれとしてスタ-トラインに立ちましたが、まだまだひよこにもなれていない、タマゴにひびが入ったくらいだということを、ただただ実感させられたような気がしました。
「100本やってプロと言える」
大先輩に「30本司会をするまでは、ただひたすら黙ってやらせていただく。ギャラにも文句を言ってはいけない。100本やってやっとプロと言える」。研修中にそんな言葉をいただいたことがありました。その時は「そんなものかな!?」と思ったくらいでしたが、この日、その言葉の意味が少しわかったような気がしました。
夢にまでみたプロ司会者デビューは、うれしさと喜びがもちろん一番でしたが、実際にやってみてプロという現実の重みを、ひしひしと実感した一日でもありました。
それから25年後の2018年3月、披露宴の司会引退となる日を迎えます。
次回はとある披露宴でのエピソードを交え、そのお話をしたいと思います。
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