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- 私の仕事は、結婚式の披露宴の司会でした(引退編)
専業主婦が憧れていたブライダル司会者へ道を切り開く。20年間、現役のブライダル司会者として仕事をし続けてきた過去や、これからのことを語ります。2018年3月、ついに司会者を引退。その背景にあった本音とは……。
引退を次第に考えるようになったのは……
右も左もわからないウエディングの世界に入って30年、プロ司会者としてデビューして25年、2018年3月に引退した現在は、ブライダル事務所の代表として活動しています。
2,500組の披露宴の司会をやらせていただき「今年の3月に引退を決めた理由は?」と聞かれると、1番の大きな理由は「体力とともに気力が追いつかなくなった」ということでしょうか?
お子さまの結婚式は、ご家族にとっても一大事、結婚するお二人だけではなく、両家にとっても大切なこと。その晴れの日のお手伝いをさせていただくこの仕事は、やりがいは本当に大きいですが、それと同時に気力が伴われなければできません。新郎新婦はもちろん、両家の間に入って上手くまとめて行くことは、本当に難しいことでもあります。
住んでいる土地によってやり方が違います。また、ご家庭によって考え方も違います。
生まれて育った環境が違う人たちが家族になるのですから、簡単に進まないことも正直たくさんあり、それを何とか折り合いをつけ、両家のみなさまに嫌な思いをさせないで進めることは、時には私の心が折れてしまうことも。が、そんなことは言ってはいられません。当日無事に成功させなければならないのです。
ベテラン格になり、ブライダル雑誌やメディアの取材をお受けするようになると、直接ご指名をいただけることも多くなってきました。本当にありがたいことです。ただそうなりますと、司会だけではなく結婚式のスタ-トからお手伝いをさせていただくことも多くなり、プラスアルファが増え、さらにやりがいを感じながらも一組の結婚式が終わると、精根尽きることが多くなりました。
でも、翌日に次のお客様の結婚式がまっていることも多々あります。体力よりも気持ちの回復が追いつかなくなりました。
これは 私のプロとしての見栄だとおもいますが、お仕事があるうちに身をひきたかった、こんな気持ちもありました。いや、正直一番の本音はこれかもしれません。
辛いお手伝いも……
幸せのお裾分けで、嬉しい涙も流させて頂きました。でも辛いお手伝いもたくさんありました。
新郎のお父様がガンで余命宣告を受け、お父様がご存命の間に何とか結婚式を見せてあげたい。こんな切実なお客様でした。近々で新郎新婦のご希望、そしてご家族のご希望になるべく添える会場をみつけることから、私は大至急スタ-トさせました。ご家族だけでなく私も祈るような思いで、毎日準備を進めていきました。
父の息子を想う気持ちに凄いパワーをもたらしました。お父様は当日を迎えることができたのです。ホテルの部屋で休みながらも、式、披露宴共に何回も車いすで来てくださいました。力を振り絞り、顔面蒼白ながらも笑顔で列席のみなさまの席をまわっていらっしゃいました。
そして披露宴のクライマックスを迎えました。「両家代表の挨拶を新郎の父としてしたい」。お父様の強い強いご希望でした。しぼりだす声に、親として父としての強さを感じました。列席者のみなさまには自分がいなくなったあと、若い息子夫婦の力になってほしいこと、新婦のご両親・ご親戚のみなさんには、自分のわがままで今日を迎えたお詫び、そして 自分の親族には自分がいなくなった後のお願いと、すべてが親として父として、心に響くものばかりでした。
誰しもが涙がとまりませんでした。
そして、お父様の挨拶のあと、泣きながら新郎が叫んだのです。「父さん、1分1秒でも長生きしてくれ!」と。
あの場所にいた誰しも、このまま時が止ることを願ったことと思います。
数日後、お父様は天国へ旅立たれました。
新郎は結婚式を間に合わせてくれたこと、お父様に気持ちを伝えらえたことを私に感謝してくださいました。きっと天国に召されたお父様も、愛する息子の正直な気持ちはどんなにうれしかったことでしょう。
私も子を持つ親の一人として、常に「自分だったらどうだろうか?」そんなことを考えながら仕事に取り組んできました。ですから一つのご家族の想いの重みを受け止め、終わったら切りかえて次にすぐ進む気力が、ともなわなくなったのです。
このような気持ちから、2018年の3月に引退をさせていただきました。
「ハルメク」との出会い
引退し現場を離れ時間に余裕ができると、新聞の広告欄にも目が届くようになりました。その新聞の広告欄で「ハルメク」という雑誌に出合いました。そしてこのハルトモ倶楽部に参加させていただくことになったのです。
司会仲間、お客様、会場様から「イルカさん、ハルトモの記事読んだよ」と嬉しいご連絡もたくさんいただいております。
そして、このハルトモ倶楽部で、原稿を書かせていただくことで、今改めて仕事人生の30年を振り返り、幸せをかみしめています。
折角の機会です。披露宴の数々も思い出してみたいと思います。どうぞお楽しみに。
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