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- 51歳、手探りの介護、それでも手放さなかったもの
50代からのセカンドライフに着物生活を選んだ私。しかし介護のため、洋服生活に戻ってしまいました。
闇の中のドライブ
50代からのセカンドライフに着物生活を楽しもうとしていたけれど、介護のため、洋服生活に……。
日増しに性格が別人になっていくような父。昭和1ケタ男の本領発揮でしょうか。私はといえば、ウーマンリブが声高に叫ばれる時代に育った世代。もっとも性格的な事の方が大きいのでしょうが、ぶつかること限りなし。
ある夜、先輩の車で、愚痴ってしまいました。彼女も末っ子で、実家の両親の介護を担うことになったそうです。「母は病院、父は実家。1年間実家で暮らしながら、両親の面倒をみた」そうです。
「苦労したけど、でも、世話できてよかったと思うよ」その言葉、介護を終えた人は同様に口にされますが、当時の私は闇の中。とても希望の光には思えず、永遠に闇の中をドライブしているようでした。
だからこその気晴らしは必要
実家からいつ呼び出しがあるかわからぬ中、気晴らしにやったのが、チクチク着物生活。幸い、備後絣の古い反物をいただいたので、水通ししてアイロンかけて、のれんにしたり、座蒲団にしたりと楽しんだのです。
まったくの初心者だったけれど、浴衣を縫ってみようと思い、これまたネット検索で、仕立てたりしました。着物生地との触れ合いや、針をひとつずつ刺し抜く動作は無心になれたのです。
ずっと後になってからですが、「介護してたって、自分の人生! 好きなことやっちゃる、って思った」と力強い言葉を聞きました。
その人は最後まで親を在宅介護された経験者なのですが、自分の好きな事は絶対手放さなかったそうです。
私はといえば、着物を着続ける根性も体力も気力もありませんでしたが、着物の近い場所にいることがせめてもの慰めでした。
老々介護の末の地獄
父との接触の中、メンタルがやられた私は、ついに積極的介護をリタイアしてしまい、年老いた母にそのほとんどを担わせてしまいました。
しかしそれはすぐに破綻しました。夫婦の関係は最悪になり、母が体を壊し入院しなければならなくなったのです。
1月の小雪舞う寒い日に、不安そうな表情をする父をなかばだますように施設に入ってもらったのですが、翌日には「家に帰る!」と大騒ぎ。母は、父に会うことを拒み、両人の板ばさみになった私。
施設と病院を行ったり来たりの日々に、心は冷え込み、終始イライラして、疲れ果てるだけの毎日でした。10年近く経った今は、後悔と懐かしさの混ざり合った感情で穏やかに受け止めることができます。
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