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リアルタイムで手塚治虫を読み、東映動画を見て育ち、累計鑑賞映画本数は1500本以上。「漫画・映画・アニメは私にとって酸素のようなもの」と語るK・やすなさんが溢れる漫画愛をつづります。今回は、モノクロだからこそ楽しめる閲覧注意な漫画について。
漫画は、黒と白だからこそ自由に描ける
最近のテレビドラマは、医療ものにしろ刑事ものにしろ、リアルな場面が多くなりましたね。漫画が原作のものも多いので、ちょっとのぞいてみると予想以上に描写の生々しさがすごくてびっくりです。今回は、そんな閲覧注意の漫画のお話です。
そのまま実写化したら、お茶の間ではとても放送できないような、相当過激な描写のある作品でも、発行されています。
それは、使われている色が基本的に白と黒のみという、不自由とも思える形を取っているからだと私は思います。
アメリカン・コミックスのように、どのページも彩色されている状態を想像してみてください。良くも悪くもモノクロは、過激な描写に対してのフィルターの役目を果たしています。だから、漫画のジャンルも対象年齢もどんどん広がっていったのだと思います。
金田一君もコナン君も未成年が遭遇するにしては、エグい事件ばっかりですよ。
モノクロだから、私が読めた作品
私は過激な作品をわざわざ探して読んでいるわけではありません。表紙やタイトルを見て、危なそうな作品は避けます。でも乱読をしているうちに、歴史ものが好きなので、どうしても出会ってしまうのです。
『イノサン』や『バガボンド』は、そんななかの作品です。前者はフランス革命時の処刑人、後者は宮本武蔵が主人公ですから、流れ出る血の色は彼らの生きざまと共にあります。
どちらも、作者の画力は素晴らしくて、精緻さ・美しさ・リアルさなどに圧倒されました。しかし、オールカラーだったら私はページをめくり続けられたでしょうか。作者の意図とは反するかもしれませんが、現実の色を想像しないようにして、生と死についての壮絶な物語を読み進めることを選びました。
それでも『バガボンド』の26・ 27巻で登場するシーン、主人公である宮本武蔵が敵対する吉岡一門を70人斬りするエピソードはキツかったです。
表現の自由は難しい問題
いくら自由といっても、私自身は、人間の尊厳を踏みにじるような描写や、嫌悪感しか持てないような描写は見たくありません。
しかし人によって感じ方に差があるので、どこまでの表現が許されるのか線引きするのはとても難しい問題です。
無制限に漫画が発行されているわけではなく、有害図書指定や発売禁止、自主回収などの規制はあります。でも、これは読まれた後からの話。
映画にもR指定などの目安があるように、漫画にもちょっと目印でも付けておいてほしいかなと思います。カレーのルーか、コーヒーのように〇〇度☆☆〇〇度☆☆☆とか……というのは、半分冗談ですが。
逆に「こわいもの見たさ」というのも、人の楽しみの形のひとつではありますけれど、ほどほどに。説教くさくなりますが、心が育っていく途中の子どもたちが読んでいるものにも目を配ってあげたいですね。
本日の作品
過激な描写が多いので好みが分かれる作品です。ご覧になる際はくれぐれもご注意ください⚠☆☆☆☆☆です。
『イノサン』坂本眞一 (2013年~2015年 全9巻/集英社刊)
続編あり『イノサンRouge』2015年~
『バガボンド』井上雄彦(1998年~37巻~/講談社刊)
文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞他受賞
次回予告
「本当は哀しい手塚漫画ー子供時代の私とアトムたち」をお届けします。
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